軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊魔法というもの ㊼

「それなり、というのは、何か目安が有るのか?」

「魔素量によるってことは、もちろん、個体差が有るってことになるんだけど、ショージョーの素材で成功したってことは、ショージョーよりも棲息域が北に有るイエーティやベヒモスの素材なら問題なく作れるんじゃないかな」

ふぅん? 魔素量―――、体内保有魔力量か。

今までの経験と情報の蓄積上、強い魔獣の魔石は“強い”というか、魔力の内包量が多いことが分かっている。

私は魔石をバッテリーだと捉えていたけど、強い魔獣の魔石は単純に長持ちする。

内包量が多いということは、刻印魔法で一度に取り出す魔力量を増やすことが出来るんじゃないかな。

電池と同じ理屈なら、回路を太くすれば許容量を増やせる可能性が有るはずだ。

だって、回路を流れるものが電気なのか魔力なのかの違いでしょ?

そしてまた、刻印魔法で一度に大量の魔力を取り出せる回路を作れるというのなら、作って欲しいものが有る。

「その程度の魔獣で良いなら、俺たちが適当に獲ってきてやるぞ」

「任せてください。テツさんと私は今後も討伐依頼を請けることになるでしょうから」

レイクスさんの答えにテツさんとケイナちゃんが素材の調達を請け負う。

「負担を掛けるけど頼むよ」

テツさんたちの申し出に、レイクスさんは複雑そうな表情で笑った。

可愛い妹を凶暴な魔獣の棲み家へ送り出すのだものね。必要なこととは言え、そりゃあ複雑な心境だろう。

うーん? レティアへ持ち帰る手配をしちゃったけど、テツさんの熊はテツさんが持って帰るよね?

魔法道具の素材に使えるのなら、私が獲ったシカも渡しちゃって良いんじゃないの?

魔法道具の量産は戦力増強に直結するから私も欲しいし。

「・・・お母様。今日獲ったバイコーンの素材をレイクスさんに渡しちゃって良い?」

「お前が個人的に獲った獲物だ。好きにすれば良い」

訊いてみれば、私の本音に気付いているので有ろうお母様はクスッと笑って快諾してくれた。

「・・・ありがと。―――、レイクスさん。テツさんが獲ったイエーティを持って帰るでしょ? 私が獲ったバイコーンも持って帰って良いよ」

素材の進呈を申し出れば、目を丸くしたレイクスさんは記憶を探るように宙へ視線を飛ばした後、首を傾げた。

「有り難いんだけど、血抜きしていなかったっけ?」

「・・・あっ。そっか」

素材に使う血を棄てちゃってたじゃん。

しまったな。先に聞いていれば領主館へ帰ってきてから血抜きしたのに。

「ゴメンね。骨と血と魔石をまとめて使うから、魔法道具の素材は別で調達するよ」

「・・・ああ。うん」

トドメを刺して血抜き作業で抜いた血を、棄てずに保管しておいてレイクスさんに引き渡す必要が有るのか。

テツさんたちが獲った獲物なら、空間ごと時間経過から切り離して保存しておけるマジックバッグが有る?

さすがの私も、会ったばかりでマジックバッグを頂戴とは言いにくいな。

もっと親交を深めて外堀を埋めてからじゃないと、魔法道具目当てだと誤解されそう。

あれ? でも、ちょっと待って欲しい。

それなら採掘場で獲れるバンダースナッチやシカの一部を引き渡せば、北部の森まで出掛けずに済んで早くない?

基本的に血は棄てちゃってるし、骨も肥料に回しているから、骨の一部を魔法道具に回すことも可能なはず。

素材として使えるものなのか訊いてみるかな。

「・・・バンダースナッチとバイコーンの素材なら安定的に手に入るけど、それじゃダメなのかな?」

「バンダースナッチの素材ではまだ試していないけど、小さな個体では厳しいかもね」

私の提案に思案顔になったレイクスさんが首を傾げる。

個体の大きさかぁ・・・。

「・・・小さな? あっ。体内保有魔力量が少ないから?」

「そういうこと。魔素量が多い魔獣の素材は強い魔素に耐えるんだよ。素材そのものの耐久性が高いのさ。バイコーンの場合、今日の大きさぐらいなら大丈夫だと思うよ」

ほうほう。素材の耐久力ね。

私はお肉としか見ていなかったし、そういった観点で獲物を見たことって無かったな。

だとすれば、素材の鮮度とか脂の乗りも関係したりするのかな?

魚市場の魚みたいだね。

今日のシカは明らかに大きかったものなぁ。

そもそも、採掘場のシカは“亜種”だとエゼリアさんたちが言っていた気がする。

今日のシカが一般的なシカだったわけだ。

「・・・あのサイズかぁ。じゃあ、採掘場のバイコーンだと厳しいかな?」

「僕はまだ実物を見ていないから、まだ何とも言えないね」

それも、そっか。可否判断は現物を見て貰って彼で良い。

死霊無線の“呪物”には使えなくても、もっと性能が低くて良い他の魔法道具になら使えるかも知れないし。

「・・・じゃあ、一応、確認して貰おうかな」

「そうするよ。近くで観察もしたいしね」

ああ。それも有ったね。

シカの無限増殖の謎を解明できれば、他の魔獣にも応用できるかもだし。

熊以外の魔獣も無限に獲れるようになれば、王国はもっと豊かになる。

熊? あんな害しか無いケダモノは滅びれば良いんだよ。

ていうか、いつの日か私が滅ぼすし。

合意が成立したことを確かめて、お母様がまとめに掛かる。