軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊魔法というもの ㊷

「命ある生物の中に闇属性の魔素を持つ種は、ほとんどいないからね。死霊化するときに闇属性へ魔素の性質が変わる理由を説明できなかったんだろう。そうでもなければ生き霊が肉体を失った後もそのまま存在し続けられるはずがない、という考え方だよ」

「・・・生き霊って実在するんですね」

ははぁ。“属性”ね。

私が引っ掛かりを覚えた部分については解決されたよ。

でも、それ以前に、“生き霊”なんてものが、そうそう発生するものなのか? って疑問が残るから聞い訊いてみたんだけど、レイクスさんは目を笑わせる。

「限界が有る肉体は枷に過ぎず、肉体を棄てれば限界を超越して高次元の生命に成り得る、って思想がヒト族の魔法術式研究者たちの間で流行った時期が有ったみたいでね。馬鹿馬鹿しい話だけど、事実、その頃には肉体と魂を分離する研究が盛んに行われたらしくて、 不死王(リッチ) が生まれた事例も有ったそうだよ」

“ 解脱(げだつ) ”かな?

頭の中で流れるインド音楽とバックダンサーの踊りが延長戦に入ったけど、死霊系の魔物と化して輪廻の輪から外れるという意味では解脱に成功しているとも言えるね。

「限界が有る肉体は枷」って思想は地球の宗教にも多く存在したはず。

私は宗教家じゃないけど、“死への恐れ”から“永遠の命”を目指そうとした〇〇大王とか〇〇皇帝の例は、地球の歴史上、数多く有った。

世界各地に残る神話にも不死を求めるエピソードはたくさん出てくるしね。

その探究の手段が生き霊っていうのは斜め上だけど、一応の説得力は有るんだろうか。

レイクスさんによる解説にお母様も補足を入れてくれる。

「対魔族大戦以前の時代だな。魂の研究が行われていたという記述は私も魔法史の文献で見た記憶が有る」

「肉体と魂が離れちゃったら、それって“死んだ”ってことじゃないの?」

とてもシンプルな感想をルナリアが表明した。

微笑ましそうに目を細めたレイクスさんがピッと人差し指を立てる。

「体に戻ることも出来たらしいよ? どうやったのかは知らないけど」

「・・・何で高次元の生命になんてなろうと考えたんでしょうか?」

動機が分かんないな。

エルフ族とか長命の種族に較べてヒト族の寿命が短いことが悔しかったとか、そんなの?

ご飯も食べられない幽霊になることに意味が有ると思えないのは、私の理解が浅いんだろうか。

“高次元の生命”って定義もよく分かんないし。

「肉体を持たず、大きな力を持つ、寿命という枷に縛られない意識だけの存在。何か思い当たるものはない?」

「・・・意識だけの―――、あっ。精霊?」

魔力―――、魔素が見えるレイクスさんは、精霊を“意志を持った魔素の塊”と言っていたはず。

「正解。推測に過ぎないけど、彼らは精霊になりたかったんじゃないかと僕は考えてる」

「・・・無茶苦茶だけど魔法使いだものね。やりそう」

マッドサイエンティストと呼ばれる倫理観が破綻した研究者は目立つけど、多かれ少なかれ研究者って似た部分は有ると思う。

そして、魔法を使うために試行錯誤する魔法使い―――、魔法術師というものは研究者でも有るんだよ。

自身が精霊になりたいと考えているなら、究極的には自分自身を 実験台(モルモット) にすることになる。

その結果が生き霊か。

すごく納得した。

納得はしたけど、生き霊ってレイス以外にはならないんだろうか?

違いが気になってくるな。

「・・・レイス以外の分類って、他の死霊と何がどう違うんですか?」

「 亡霊(レイス) の特徴は“言葉を話す”個体が居ることかな。レイス以外は意味の有る言葉を話すことは無いと言われているね。 悪霊(レヴァナント) と 怨霊(ドラウグル) の違いは、どんな死に方で死霊化したかで分類する向きは有るけど、“何に執着しているか”じゃないかなあ」

実に軽い感じでレイクスさんは答える。

横文字ばかりで私には個別の名前を覚えるのも億劫なんだけどなぁ。

要点は最後の部分だけかな。

「・・・執着?」

「僕の専門分野じゃないけど、レヴァナントは“生命”、ドラウグルは“遺品”に執着するんじゃないかと言うのが僕の解釈だね」

ほーん? 地縛霊だって場所に執着してるのかも知れないから、レイクスさんの見解も間違っていないのかもね。

「・・・レイスは何に執着するんですか?」

「レヴァナントとの分類が曖昧だと感じていたんだけど、今回の件で“肉体”じゃないかと仮説は立ったよ」

レイクスさんの言う「今回」っていうのは、「魔法道具に取り憑いた」って件だろうね。

「・・・“肉体”? それで魔法道具に?」

「そうじゃないかなあ」

“肉体”って“肉の体”じゃなくても良いんだ?

記憶を探るようにテツさんが天井へ視線を飛ばす。

「あ~。そういや、体がどうとか言ってやがったな」

「ほう? そうなのか」

テツさんの実体験を聞いたお母様は興味深そうにしている。

お母様も研究者だものね。

「・・・体ねぇ」

レイスが取り憑いた魔法道具って、「ショージョーの骨と血と何やかんやを混ぜた」ってテツさんが言ってたね。

お肉は無いけど生物の肉体を構成する物質の一部が含まれては居るのか。

レイスの“肉体”判定がガバガバだな。