軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊魔法というもの ㊴

「そっか。余計なことを訊いちまったな」

スッパリと断った私にテツさんの表情が崩れてバツの悪そうな顔になる。

そんな顔をするなら止めときゃ良いのにね。

私が子供に見えるから黙っていられなかったんだろうなぁ。

「・・・良いよ。ありがとう」

「フレイアさんもルナリアの嬢ちゃんも済まねえ。無神経なことを言っちまって悪かった」

テツさんが席から立ち上がって深々と頭を下げる。

謝罪しながらもホッとしているように見えるのは、子供が手元に居なくなる親の気持ちも分かっているから訊くのを迷ったんだろうしね。

ちゃんと素直にゴメンナサイできるのは良いことだよ。

「ああ~。もう良い、もう良い」

「仕方ないわね! フィオレを連れて行かないなら良いわよ!」

お母様がパタパタと手を振り、ストンと椅子に腰を下ろし直したルナリアが反り返る。

何とかお母様もルナリアも矛を収めてくれたけど、これは良くないな。

異世界人になった私のことなんかで余所見してどうすんの。

「・・・でも、テツさんはテツさんのすべきことに集中すべきじゃないかな」

「そうだな」

おっと。元気が無くなったね。

椅子に座り直したテツさんが、さっきまでの覇気が抜け落ちたように背もたれへ体を預けている。

これって、気を張って強気な姿勢を崩さずに居たけど、実は凹んでた?

仕方ないな。目の前で凹まれるのも気になるし。

「・・・ね。テツさんの娘さんって、何て名前?」

「陽菜だ。見た目の歳はケイナと同じぐらいだな」

「見た目の・・・」

テツさんの答えにケイナちゃんが複雑そうな表情で呟いている。

エルフ族って長命だと聞いてるけど、見た目通りの歳じゃないんだろうか?

テツさんがエルフ族の代理人として活動しているのも、娘さん―――、ヒナちゃんとケイナちゃんを重ねて見てしまったことが理由の1つなのかも?

まあ良いや。

「・・・ヒナちゃんか。小学生だよね? 何年生?」

「3年生だ」

ふぅん。ナンナちゃんと同じ歳?

いや。ナンナちゃんは年初でもう10歳になったね。

んん? 今3年生ってことは、4月で4年生だし、今年10歳になるのか。

やっぱりナンナちゃんと同じ歳じゃない?

私が小学生だった時期なんてもう20年以上も昔のことだし、何年生で何歳なのかなんて正確には覚えていないな。

「・・・きゅ、9歳かな? まだまだお父さんが必要な歳だよね。奥さんは?」

「数年前に病気でな」

えっ!? 父子家庭!?

寂しそうにテツさんが苦笑する。

ちょっと待って!

「・・・じゃあ、ヒナちゃん1人なの!? すぐに帰ってあげないと!」

「社長やダチが何とかしてくれていると思うんだがなぁ」

天井を見上げながらテツさんは希望的観測を口にする。

小学校へ入る前には1人で生き抜く覚悟を決めて食料確保に挑戦し始めていた私と違って、ちゃんとした親がいる小学3年生なんて保護者に依存しないと生きられないでしょ!

今でも思うけど、私が餓死せずに生き延びられたのなんて奇跡に近いんだよ!?

「・・・私はその人たちを知らないけど、不確実性が有るでしょ? 信じられる人たちだとしても、ヒナちゃんにとってお父さんの代わりにはならないもの。ルナリアも私も、お父様とお母様が戦争に行っている間、帰ってくると信じていても凄く怖かったし寂しかったよ」

「ああ。分かってる。だからと言って、今すぐにケイナたちを放っぽり出して日本へ帰るわけにも行かねえ」

首を振ってテツさんは言い切る。

エルフ族の居場所を作ってからじゃないと帰れないと。

好感は持てるけど、難儀な人だな。

「・・・だったら、自重してる場合じゃないよね? 使えるものは何だって使う必要が有るんじゃないの?」

「その通りだな」

気迫が戻って来た目でテツさんは頷く。

あれ? でもちょっと待って。

テツさんの代わりを私たちが果たせば、レイクスさんの魔法道具が完成するのを待つ必要はないんじゃ?

「・・・仮に、だけど。エルフ族のことは私たちが責任を持って安全に暮らせる環境を作るとして、テツさんはドラゴンのところへ行くのを優先するというのは?」

「聞いた話じゃ、あのトカゲ野郎はこっちの世界で一番強い生物だそうじゃねえか。実際、くっそデカかったしな」

これって、悔しさ? 一度はドラゴンと接触したというテツさんの答えになっていない答えには、苛立ちのようなものが感じられる。

捕まえに行きたいけど行けない、って意味だろうか?

「・・・どのぐらいの大きさだったの?」

「目測だが、頭から尻尾の先までで50メートルは有ったぞ」

うはぁ。さすが最強ファンタジー生物。

「・・・体長50メートル・・・」

「空を飛びやがるしな。逃げられると2度と追いつけねえ可能性が有るから、一発勝負で失敗できねえ」

トンボの親玉と較べても2倍の大きさかぁ。

そんなのと対決して私に勝ち目が有るのかと言えば、“獰猛くん”を動員しても勝てる気がしない。

それ以前に、飛ばれると“獰猛くん”では手も足も出ない。

だって、巨大スライムでもお母様に“白焔”を撃って貰って、ようやく勝てたんだよ?

半分の大きさしかないトンボの親玉にだって、飛べない状況のハンデ戦で、ようやく勝てたんだし。

そこで気付いた。

ははぁ。もしかして、テツさんも・・・?