軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊魔法というもの ㊲

「そっかぁ・・・。そうだろうな」

「テツ?」

レイクスさんに心配そうな視線を向けられたテツさんが肩を竦める。

「ん? ああ。俺も腹を括るべきなんだろうと思ってなぁ」

「・・・どういうこと?」

腹を括る? 文脈から行くと自重の件?

背もたれから上体を起こしたテツさんが表情を引き締め直す。

「気付いているとは思うが、俺とレイクスは協力関係でな」

「・・・ヒト族として森の外へ安全に出られるテツさんが、ヒト族から狙われているエルフ族の代理人として活動していることだよね?」

私が立てていた推測を口にするとテツさんは深く頷いて認める。

「そういうこった。そして、レイクスが俺の代わりに魔法道具を開発してくれている」

交換条件の合意で協力関係が成り立っていると。

テツさんとレイクスさんの顔を見比べて、納得顔でお母様も頷く。

「互いに補い合っているわけか」

「・・・日本へ帰るための手段と、安定して暮らせる居場所を、テツさんとレイクスさんで用意し合ってるんだね」

互いの持っているものを出し合っての物々交換バーターってことだ。

それぞれが絶対に譲れないものを求めていて、相手にしか頼めない強固な取引関係ってことなのだろう。

出会って間もないテツさんは命懸けでエルフ族の集落を守ったことで信頼を得たみたいだし、エルフ族はエルフ族でケイナちゃんを預けることでテツさんへの信頼を示したのかも。

そこまで互いに深く踏み込み合っているのだから、そりゃあ仲良く見えるわけだ。

「俺がレイクスに依頼したのは携帯電話と自動車の制作だ」

「・・・おお! ケータイとクルマ!」

テツさんがバラした取引内容に引き込まれる。

どっちも私が欲しかったものじゃん!

それ、私も欲しい!

取引にウォーレス家も混ぜてよ!

「“けーたい”・・・?」

「何だ? それは」

レイクスさんとお母様が同時に首を傾げる。

お母様は分かるけど、何でレイクスさんも?

まあ良いや。

事の重大さを分かって貰うために、先ずはお母様から理解を深めて貰おう。

「・・・遠くの人と話せる通信手段と大量に早く遠くまで運べる運搬手段だよ」

「遠くとは、どのぐらいの距離だ?」

思考が軍事と直結するお母様らしい疑問だね。

「・・・少なくとも数十から数百キロメテル、かな? 耐久力や燃費や整備性によっては数千、もしかすると数万キロメテル―――、で良いんですよね?」

「あ~。その前に、“けーたい”って何?」

同意を求めると、レイクスさんは携帯電話というものが何か分からなかったっぽい。

どう説明したものかと悩み掛けたところへ、製作依頼者であるテツさんが私に代わって説明してくれる。

「無線とか電話とかって説明をしただろ。無線や電話の一種が携帯電話だ」

「ふぅん? そうなんだね」

テツさんの説明―――、追加説明にレイクスさんがイマイチ分かって居なさそうな返事をする。

携帯電話って、無線機であり電話機でもあるからね。

電話機って本来は有線だし、同じ通信機器でも通信方式に無線と有線の違いが有る。

きっと現物を見たことがないレイクスさんは、どっち? と判断に迷ったのだろう。

「・・・要するに、無線の電話です」

「相の子かな? まあ、目指すところは、そうだね。クルマについては使う術式の構想を練っている段階だよ」

「ふむ・・・」

私の補足説明にレイクスさんが答えて、お母様が思案顔になる。

お母様のことだから理解してくれているとは思うんだけど、もう一押しかな。

「・・・どっちの魔法道具も、実現すれば戦場の在り方が変わるよ」

タイムリーな報告と上意下達を実現する通信手段と大量輸送手段は、こっちの世界では実現されていないものだ。

だって、遠距離通信は狼煙がまだ現役だし、野戦では笛の符丁で状況や命令を知らせるのが普通なんだよ。

移動や運搬は頻繁に馬を休ませる必要が有る。

テツさんが製作を依頼した2つの必要性は私も大いに認めるところだよ。

思案顔だったお母様がいきなり斬り込む。

「私たちも一枚噛ませろ。私たちが提供するものは安全と資金だ」

「有り難いんだが、そりゃあダメだ」

「何?」

即答したテツさんにお母様がピクリと眇める。

色々と検討した上での申し出を、すげなく断られれば気分を害するよね。

「・・・まあまあ。お母様。―――テツさん。ダメな理由を聞いても?」

貴族というものは上から目線なものだし、さらにお母様は高級軍人だもの。

お母様もグダグダと回りくどいのは嫌いな人だけど、もうちょっと言い方に気遣いは出来ないかな。

テツさんのことだから分かっていてやってる可能性も有るけど、ストレートすぎるよ。

態度を硬化させたお母様を宥めつつ訊いてみれば、テツさんはテツさんで真剣な表情だ。