軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊魔法というもの ㉖

「待ってくれ。自分に付いている精霊を見ることが出来るのか?」

「コツを掴めば見えますよ。精霊は自分が気に入った人間にしか憑かないのです。何を気に入って憑くのかはよく分からないのですが、多くは体内の魔素が多い人間を気に入るようです」

精霊が気に入る・・・?

取り憑くとか?

なんか、幽霊みたいなイメージだな。

あっ。ずっとケイナちゃんは“つく”って言ってたけど、“付く”じゃなく“憑く”ってこと?

神秘方面(スピリチュアル) だと思ってたのに、 怪奇方面(オカルト) だった!?

これは根本的な部分から訊いておくべきだな。

「・・・精霊ってどういうものなの?」

「何なのでしょうね? 兄様は魔素の塊だと仰っていましたけど」

ほほう?

本質を問う私の質問に、首を傾げたケイナちゃんがレイクスさんに視線を向ける。

そう言えば、レイクスさんは魔力の手が見えてたよね。

レイクスさんが持っている“少しばかり特別”なものが、“魔力が見える目”だってことは推測できる。

“兄様ほどではない”というケイナちゃんも精霊に限っては見えるわけだ。

そして、その“精霊に限って”はケイナちゃんだけが持つ特殊技能ではなく、“コツを掴めば”誰にだって出来るって解釈で良いのかな?

ん? “誰にだって”?

いいや。違うな。

このパターンは前にも有ったよね。

確か、ルナリアが初めて魔法を見せてくれたときに、ルナリアは“体内に魔力が有れば”と前置きした。

それは前提条件だ。

さっき、ケイナちゃんは私たちを見て“憑いてる”と言った。

精霊を見るための前提条件が“憑いてる”ことなのだろうと推察できるよね。

ケイナちゃんの問う視線を受け止めたレイクスさんは、事実を事実のままに告げるようにコクリと頷いて返した。

「そうだよ。意志は有るけど、在り方は単なる魔素の塊だね」

「それは、魔力―――、魔素が意志を持ったもの、と考えれば良いのだろうか?」

落ち着いた声で問い返しているけど、新たな知見に触れたお母様の目はキラッキラに輝いていて、ぜんぜん落ち着いていない。

レイクスさんも確信がないのか首を傾げる。

「そんな感じだね。意志―――、いや。自我と言った方が正しいのかも」

「へぇ~。魔力なのに生きてるんだ?」

ルナリアが率直な感想を口に出す。

魔力生物―――、いや。魔法生命体的な?

魔力が万能物質的な何かだとするなら、おかしくはないのか?

人間をはじめとした生物だって分解してみれば単なる有機化合物の塊だし、有機化合物が生命に成り得るのなら、全く性質が違うものに変化する魔力が生命に成り得てもおかしくはない気がする。

その辺りの考察は、目に見えず触れることも出来ず、感じ取ることも出来ない現状では机上の空論にしかならない。

理解を深めるために私たちがすべきことは何か?

私たちよりも深い知見を持つ先駆者に訊くしかないよね。

「・・・どうすれば見えるの? ―――あ、いや。そうじゃないな。精霊魔法って、どうすれば使えるようになるの?」

「存在を感じ取るのが最初でしょうか。自分の意志とは関係なく魔素が騒ぐことは有りませんか?」

ケイナちゃんの問いに思い当たるものが有る。

ははぁ。ざわざわするアレのことだよね?

指摘されてみれば、意志―――、というか、“気持ち”のようなものを感じることも有る。

今までも、私の中に精霊が居るんじゃないかと推測はされてきたけど、有識者の口からアレが精霊だと言われれば実感が湧いてくる。

イマイチ信憑性に欠ける家庭医学での病名の推測から、総合病院での精密診断で病名を告げられたときのような納得感の変化だ。

「・・・有る。ご祈祷の祝詞のときも大騒ぎして大変だったよ」

「私は子供の頃に、一時期、魔力の制御に困ったことが有ったな」

「わたし、感じたこと無いんだけど」

実感が有る私に続いて、お母様は記憶を探って視線を宙へ飛ばし、ルナリアは難しく眉根を寄せた。

不満そうなルナリアを諭すようにケイナちゃんが柔らかな笑みを投げ掛ける。

「ルナリア様―――、ルナリアに憑いているのは土の子のようですから、大人しいのですよ。ああ。風の子も憑いていますね。フレイア様には、6属性の子が憑いていますよ。フィオレにも6属性の、―――あら? 他にも変わった子が憑いていますね」

私の胸に目を凝らしたケイナちゃんが、目を丸くして首を傾げる。

「・・・変わった子?」

「これは・・・、植物? 何かの木から生まれた子かも知れませんね」

「・・・木!?」

私に憑いてる木の精霊と聞いてドキッと胸が跳ねた。

脳裏に思い浮かぶのは、あの木だ。

きっと、あの松の大木だと確信する。

根拠? そんなもの必要無いよ!

「・・・見たい!! どうすれば見られるの!?」

「精霊の存在を感じ取ってください。そこに居ると信じて、何を伝えたがっているかを感じ取れるようになれば、そのうち見えますよ」

テーブルの上へ身を乗り出す私を、まあまあと両手のひらで抑えてケイナちゃんが苦笑する。

霊視かな?

「何かを伝えたがってる」とか地縛霊みたいじゃない?

いや。この際、何だって良いよ!