軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊魔法というもの ㉔

「嬢ちゃんも勇者なわけか」

「・・・私は勇者じゃないよ。私の体は、こっちの世界の人間だし」

誤解の無いように主張しておく。

“勇者”の定義に私は当て嵌まらないもの。

即座に答えた私にテツさんが首を傾げる。

「んん? 体は? 元、ってのは?」

「・・・私、日本で死んだんだよ。そして、どういうわけか、こっちの世界で目覚めたら今の体に入ってた」

「異世界転生。“生まれ変わり”ってヤツか・・・。本当に有るんだな」

テツさんが唸る。

さすがは現代日本人。

状況を説明すれば、テツさんはスルリと飲み込んでくれた。

テツさんがわざわざ言い換えてくれたことで、ケイナちゃんたちも理解してくれたみたいだね。

こっちの世界には精霊信仰が有って、その信仰の中には“精霊の下へ還った死者は身近な者の近くへ生まれ変わって帰ってくる”という輪廻転生の概念が有るもの。

まあ、そっちの概念から見ても、世界の壁を超えて来た私のケースはイレギュラーなんだけどね。

日本のファンタジーではOKでも、こっちの世界で生きていたフレーリアの体に入り込んだ私は“輪廻転生”とは言えないだろうし、“中身だけ”ってことは異世界転移とも違うだろう。

正確に言えば、死霊の憑依?

そう言った意味での“転生”と分類して良いものか分かんないんだよなぁ。

とはいえ、現状、こっちの世界で生きてしまっている以上、考えても仕方ないから、この件について私は考えることを止めている。

私の身の上さえ分かって貰えればそれで良いよ。

「・・・この件を知ってるのは、お母様とルナリアとお父様とミセラさんたちの数人だけだから、知らない人たちの前で余計なことを喋らないで欲しいんだよね」

「喋りゃしねえけどよ。ああ~。あんときのアレは、そういう意味だったんだな」

私の要求に納得顔でテツさんが頷く。

分かってくれたみたいだけど、恐らく、まだ理解が浅いだろうから補足する。

「・・・大事なことだよ? テツさんが居て、ケイナちゃんたちが居て、中身が元日本人の私が居る。しかも、私の体は勇王国に滅ぼされた国のお姫様だったらしいし」

「こっちも亡国の姫様か。勇王国ってことは神教会絡みだな」

テツさんが理解してくれたなら、ケイナちゃんたちも疑問が有れば訊きやすいテツさんに訊くだろう。

私たち“共通の敵”について思い至ってくれたテツさんに念押しする。

「・・・そういうこと。私たちの誰か1人だけでも、神教会勢力を引き寄せ兼ねないのは分かるよね?」

「了解した。こっちも今のメンバー以外には話さねえと約束する」

テツさんの了承に追従して、ケイナちゃんたちも揃って頷く。

状況を把握すれば自分の興味が勝るのはオタクの 性(さが) というものなのだろう。

レイクスさんが身を乗り出してくる。

「ねえねえ。あのゴーレム、どうやって作ったの?」

「・・・教えても良いですけど、代わりに精霊魔法を教えて貰えますか?」

交換条件を突き付ければ、レイクスさんがウッと言葉に詰まる。

どうよ? オタクの勢いを削ぐには、こうするのが早いだろう。

教えてくれるというのなら、私も教え返してあげるのは吝かじゃないし。

判断に困ったレイクスさんが大人しくなったと思えば、今度はケイナちゃんが首を傾げる。

「精霊なら、もう憑いてますよ?」

「・・・んん? ついてる?」

“ついてる”って、どの“ついてる”?

何がどう“ついてる”というのか判断に困って私も黙らせられた。

私の困惑に構わず、ケイナちゃんが私の両隣に視線を移す。

「フレイア様も、ルナリア様も憑いてますね」

お母様も投げ掛けられた言葉の理解に困ったようで首を傾げる。

ところが、ケイナちゃんの視線を受け止めたルナリアは動じない。

「ルナリアで良いわよ! その代わり、わたしもケイナって呼んで良いかしら!」

「私は構いませんが、私がルナリア様を呼び捨てにするのは、いかがなものでしょうか」

ニッと太陽みたいな笑顔を向けられたケイナちゃんが困惑を顕わにする。

ここは、ちゃんと言っておいた方が良いだろうね。

「・・・あ~。良いの良いの。どうせテレサに会ったら呼び捨てを強要されるだろうし、私のこともフィオレで良いからね」

「テレサさん、ですか?」

パタパタと平手を振って見せれば、ケイナちゃんが首を傾げた。

真面目な話だから、表情を引き締めて真っ直ぐにケイナちゃんの目を見つめる。

「・・・ケイナちゃん。王都へ戻ったらテレサに会うと良いよ」

「その方は、どういった方なのでしょう?」

私の視線に背筋を伸ばしたケイナちゃんが首を傾げる。

「・・・この国の第三王女殿下なんだけどね。気が合うと思うし」

「あ~。分かる~。感じが似てるものね!」

納得顔のルナリアも大きく頷く。

ケイナちゃんも真面目っぽい子だし、ズケズケと厚かましいタイプでは無さそうだから問題ないだろう。

むしろ、しっかりと礼儀作法の教育が施された慎重なタイプに見える。

私の予測を裏切らず、ケイナちゃんが遠慮を見せる。

「私などが王女殿下とお会いするのですか? それは、ちょっと・・・」

「・・・そう? テレサのことだから、放って置いても勝手に来ると思うけど」

「テレサに会ったら、わたしたちの友だちだと言えば良いわよ!」

テレサはテレサで、王都には良い友だちが居ないようで楽しく無さそうだったからね。

私たちも簡単には会いに行けないし、気軽に離せる通信手段も無いから、顔を合わせやすい距離に居られるケイナちゃんが仲良くしてあげて欲しい。

きっとそれは、テレサにとってもケイナちゃんにとってもプラスに働く人間関係になるだろうし、打倒勇王同盟の同志になれる。

私たちの後押しに困惑が収まらない様子の同志ケイナちゃんが思案顔になる。