軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊魔法というもの ⑰

「・・・娘さんを助ける代わりにテツさんが落っこちたの?」

「そういうこった」

父親として、体を張って娘を助けたと聞いて―――、いや。違うかな。

娘さんが助かったようだと理解して、お母様が眉間に入っていた力を抜く。

「チキュウ世界へ帰る方法は分かってるのか?」

「そんなもん、黒トカゲを締め上げて、もう1度、穴を空けさせりゃ良いじゃねえか」

“出来る”と信じて疑わない様子でテツさんが鼻で笑う。

大人の時間かぁ。

言うことを聞くまでドラゴンはポキポキと骨を折られるのかな?

召喚魔法じゃないイレギュラーだけど、異世界から拉致されてきた異世界人を“勇者”と呼ぶのなら、テツさんはドラゴンに拉致されてきた“龍の勇者”と言って良い。

過程は違っても結果は同じだからね。

ドラゴンを締め上げるなんて本当に出来るんだろうか? と思わなくもないけど、正真正銘の勇者なら出来るのかな?

「早く娘の元へ帰ってやらねばならんな」

「それが本当に可能かどうかは別として、だがな」

戦場から帰りたくても帰れなかった経験を持つお母様が態度を軟化させて頷き、呆れた様子でドネルクさんが首を振る。

ドネルクさんは実現性を疑ってるみたいだけど、テツさんなら実現してしまいそうな気がする。

「・・・ふむ」

深く息を吸って脳に酸素を取り込む。

落ち着いて整理してみよう。

情報は出揃ったよね。

テツさんの目的と、エルフ族の目的と、王様の目的。

テツさんとエルフ族は協力関係だから、1つの勢力と考えて良い。

なら、テツさんたちVS王様だ。

両者の大きな方向性は一致している。

だったら障害は何? 考えるまでもなく神教会だろう。

神教会の何が障害になる?

勇者とエルフ族を王国が抱き込んだとして、神教会が起こすアクションは?

そんなの決まってる。

王国に対して一方的な要求を突き付けて来るのだろう。

その要求は何か?

1つ目は、「勇者はウチのものだから寄越せ!」で、2つ目は、「エルフ族を寄越せ!」だ。

他には、「魔石を寄越せ!」も付いてくるかもね。

知ったこっちゃないけど。

ただし、王国としては、そう簡単に行かない。

そんな馬鹿げた神教会の要求を、「知るかボケ―――っ!!」と突っぱねるのは簡単だけど、四面楚歌で四方八方から攻め込まれて王国が耐えられるのかと言えば、現状は不可能と言って良いだろう。

ようやく真の問題点が分かったよ。

王様が私たちに意見を求めたのは、「どう躱せば良いか?」だね。

「・・・うーん?」

いつだったか、同じような図式を想定したことが有ったような?

何の話だっけ・・・。利権? 採掘場の話だったかな。

ルナリアとそんな話をした記憶が有るね。

ワンクッションを置いて“即答できない”大義名分をでっち上げて、のらりくらりと追及を躱す作戦。

クッション役は?

王国最強の戦力を持っていて、王宮の要求でも撥ね除けられる実力者なんて、ウォーレス家しか無い。

決定権者である王様のところへ「寄越せ!」と神教会が来ても、王様は「儂、知らんがな」と惚ける。

王宮に「何の話か誰か知ってる?」と確認するだけでも時間は稼げるし、王宮が「どういうこと!?」とウォーレス家に訊いて来ても「何の話?」と惚けられる。

神教会が直接乗り込んで来ようにも、ピーシス領も含めてウォーレス領は神教会が大嫌いな人たちばかりだ。

惚け続けて、痺れを切らした神教会関係者が攻め込んで来ようにも、王国内にウォーレス家と事を構えられる貴族なんて居ない。

ウォーレス家包囲網を築こうにも、北部を束ねるドネルクさんも、東部を束ねるバルトロイさんもウォーレス家の味方だからね。

いざとなればケイナちゃんたちはウォーレス領に逃げ込むだけで良い。

何なら、ウォーレス領が孤立しても、自給自足どころか他領を助ける余裕さえ有るウォーレス領は痛くも痒くも無い。

ウォーレス領には森もダンジョンも有るから、ケイナちゃんたちは仕事に困らない。

これ、イケるんじゃない?

テツさんたちは王都に活動拠点を構えているのだろうけど、レティアの町にも拠点を置かせて、王都をサブ拠点として、レティアを本拠地として冒険者ギルドに登録しておけば良い。

万一、ドネルクさんが冒険者ギルドから手を引く事態になっても、本拠地がウォーレス領なら次の担当者も手を出せないだろう。

そうやってウォーレス領を隠れ蓑に時間を稼いでいる間に、エルフ族やドワーフ族の協力を得て、ウォーレス領は―――、王国は戦力を蓄えれば良い。

王国のウィークポイントだった塩も魔法道具もこれで解決するんだよ。

もう、今すぐ鎖国したって構わないぐらいだ。

王様と約束している「技術の提供」もウォーレス家を間に挟んでしまえば、表面的にはテツさんたちの顔を見えなくできる。

ヨシ。再チェックだ。論理に穴は無い?

ふんふんと頷きながら論点を整理していたら、みんなの目が私へ集まっていることに気付いた。

えっ? 何?