軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊魔法というもの ⑮

もちろん私も退く気は無いよ。

そんなものは遅かれ早かれだ。

まだ準備が整っているとは言い難いけど、お母様が“殺る”というのなら、神教会勢力との全面戦争だって受けて立つ。

とは言え、だ。

「神教会のクサレ坊主どもなど私たちが―――」

「・・・テツさんたちは、どう考えてるの?」

「おう? 俺たちか?」

私がテツさんに話を振れば、ギャンギャンと遣り合っていたお母様とドネルクさんがピタリと口を閉じた。

強権で押し通すのが貴族の思考回路なのだろうけど、当事者の意向を放ったらかしで話を進めるのはどうかと思うよ?

”和を以て貴しとなす”、日本的論理を提示した私にテツさんが目を細める。

「・・・腹を割って話そう。―――ドネルク叔父様も」

「了解した・・・」

「面白えな。嬢ちゃんは」

ドネルクさんが内臓まで吐き出しそうな溜息を吐いて、テツさんがニヤリと笑う。

ああ。やっぱり、確信犯だ。

この人は最初から王国を巻き込む気で居たんだな。

ドネルクさんは巻き込まれた側だろうね。

直接会ってみて勇者の件で確信を持ったときにも感じたけど、王様と強く繋がっていることを承知の上でテツさんはドネルクさんとの接点を持ったんだろう。

仕切り直しでお母様とテツさんが真正面から視線を合わせる。

「俺たちが求めているのは、エルフ族をはじめとした亜人種族が安全かつ平和的に暮らせる環境だ」

「このリテルダニア王国においてはヒト族も亜人種族も無いぞ」

お母様が首を傾げるけど、テツさんは揺るがない。

「ああ。知ってる。内戦が起こるほど国内に色々な勢力が有ることもな」

「ならば、お前たちはウォーレス領に居ろ。私たちなら、お前たちを守ってやれる」

真っ直ぐに見据えるお母様に、今度はテツさんが首を傾げた。

「飼い殺しになれ、と? 1つの勢力に加担するのも危険だと思うが」

「むっ」

お母様が不機嫌そうにピクッと眉根を寄せた。

怖いもの知らずというか、笑っちゃうぐらいにストレートだなあ。

「単刀直入に」と言ったのはお母様だけど、私利私欲で動く“融和派”や“中立派”と一緒にされれば気分を害するよね。

感覚の違いも有るし、喧嘩になるのは避けたいから、日本人であるテツさんの感覚を理解できるであろう私が割って入る。

「・・・それで国王陛下に接近したんだ?」

「この国の立ち位置を試した、と言った方が良いな」

平然とした表情でテツさんは肩を竦めて見せる。

試した、ねぇ。

「・・・ダメそうなら他国へ移ったってことかな? 試した上でこの国に居るってことは、ドネルク叔父様と国王陛下は合格だったんだね」

「その言い方は不敬だとか誤解を招きそうだが、そうなるな」

状況次第では他国へ出ることも選択肢に有ったと聞いて、お母様が難しい顔になる。

地球上でもトップクラスに自由な日本という国を知る身としては、縛られたくない気持ちは分からなくも無いけど・・・。

「・・・危ないことするなぁ」

「まあな」

私の感想にテツさんが苦笑する。

この国の統治形態は封建制だ。

テツさんの立場は平民で、貴族階級と平民の権限や権利には天と地ほどの差がある。

王様は、貴族のさらにその上に居る。

そんな国で、侯爵閣下や王様まで利用しようとするなんて、一歩踏み間違えば簡単に死刑になるんだよ。

かなり危うい橋を渡っていると思うけど・・・、この人に自覚が無いとは思えないな。

だとしたら、危ういギャンブルをしなきゃいけないだけの事情が有る?

さっき怒ったところを見ると、テツさんが勇者だってことと、ケイナちゃんがエルフ族だってことは、ドネルクさんに明かしていたのだろうと推察できる。

王様は王様で、「匿う」って言葉が出たぐらいだから、勇者とエルフ族を王国で抱き込みたいのだろうと推察できる。

なぜテツさんは自分たちの身元を明かしたのか?

自分たちの身を守ってくれる防波堤が、神教会との間に必要だからだろう。

勇者にエルフ族とくれば、将来的に神教会勢力との衝突を覚悟している王国は話を聞かざるを得ないもの。

でも、テツさんはお母様の庇護を拒否した。

きっと、王様に対しても拒否したんだろう。

矛盾しているようで、していないね。

たぶん、線引きの問題かな。

「・・・庇護を求めない理由は、何?」

「取り込んで、欲しいものを吸い上げて、棄てる。普通に起こり得る話だと思うが?」

私の疑問にテツさんは片眉を上げる。

ああ。なるほど?

これは日本でも横行していた 事業買収(M&A) やヘッドハンティングのことを言ってるっぽいね。

技術を持つベンチャー企業や中小零細企業を買収して技術を抜き取る経営手法や、良客を持っている営業マンや技術者を好待遇で引き抜いて、顧客や技術を奪ったらポイ捨てする営業手法のことを言いたいのだろう。

現代地球の商業的手段を知っていないと出て来ない発想だよね。

搾り取られた搾り滓として棄てられないようにするには、ガッチリと自分たちが持つ技術や情報を握っておく必要が有るんだよ。

それ以前に―――。