軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊魔法というもの ⑫

出来るだけ安価に食料が流通するからこそ生活が楽になって、人口―――、労働力も増えるんだよ。

安価で在るべき食料の値段を、極めて一部の人たちのために高止まりさせる気はない。

畜産業で生産したお肉を輸出した方が儲かるなら、領外への輸出に回るのも市場原理だよ。

こっちの領地においても、そうやってお肉は他領から買うことも出来たし、旧領主は個人やご家庭レベルでこなしている仕事を集約して専業化する必要性を感じて居なかった?

いいや。それは無いか。

自分たちが贅沢をすることにしか興味が無かったのは悪趣味な領主館を見れば分かるし、地場産業の育成まで考えていなかった可能性の方が高い。

そう思うと、分業が進んでいたウォーレス領って他領よりも思想からして発達してたんだな。

私は新領地の産業基盤から構築しなきゃいけないわけだけど、ウォーレス領と同じことをさせても食い合って潰し合うだけだよね。

ウォーレス領の下請けをさせておけば良いかと考えていたけど、エクラーダ系の領民たちのことも有るし、ウォーレス領とピーシス領で分業化して食い合いを防いだ方が遠慮無く発展を目指せるんじゃない?

まあ、良いや。

住居建設の次に与える仕事も必要になるし、エゼリアさんやアンリカさんに持って行って貰う農作物との食い合いも避けたい。

この件はもうちょっと相談してから領民に何の仕事をさせるか考えよう。

今から大事な話し合いをしなきゃいけないし、そっちが優先だ。

真の問題点を訊き出さないことには作戦も練れない。

この場は兵士さんたちに指示を出して、今後のことは棚上げしておこう。

「・・・そっか。仕事を回す配慮は必要無いんだね。じゃあ、昼食後に捌くことになると思うから、庭に置いておいてくれるかな」

「了解しました!」

兵士さんの返事に頷き返して、宙に浮いたままの獲物たちへと目を向ける。

これ、結構な量だよね。

適当に放り出して行ったら邪魔になりそう。

もうお母様たちは建物へ向かってるし、急がなきゃ。

「・・・他にも荷馬車にバンダースナッチが5頭有るんだけど、どこに置けば良い?」

「こちらへ! 荷馬車の獲物も運ばせておきます!」

「・・・うん。お願いね」

兵士さんの一人が指定したのは馬たちを繋いでおくのに邪魔にならない芝生の隅っこだ。

芝生の上に獲物を並べ終えてお母様たちの後を追う。

あ。そうだ。そろそろ起きないかな?

「・・・ルナリア? 起きて」

私の肩に頬を乗っけて気持ち良さそうに寝てるルナリアを揺すっても反応がない。

このぉ・・・。

手の中に握っていた魔石をポケットに突っ込んで、魔力の手を自前の魔力に切り替える。

今から大事な話をしなきゃいけないってのに、気持ち良く寝てる場合じゃないでしょ!

「・・・えい」

「むきゅっ!? ―――、きゃはははははっ!!」

両手を後ろに回してルナリアの両脇腹を鷲掴みにすれば、身を捩ってルナリアが目を覚ます。

私はルナリア起こしマスターでもあるからね。

ルナリアの生活リズムは、結構、規則的だし、夜には1度寝たら朝まで起きないルナリアでも、2度寝みたいなものなら起こせるだろうと思ってたんだよ。

「・・・目が覚めた? 今からテツさんたちとの話し合いだから、しゃんとして」

「う~・・・。わたし、寝てたの?」

目を擦るルナリアを背中から下ろしてあげると、目眩の症状も無いみたいで、しっかりとした足取りでルナリアが自立する。

「・・・魔力酔いだよ。1時間は寝てたから、もう大丈夫だろうと思って」

「あ~。魔力酔いかぁ。久しぶりよね」

う~ん、と両腕を挙げて伸びをしたルナリアが納得顔になる。

スッキリと目が覚めた様子のルナリアを伴って建物の入口へと向かえば、荷馬車から降りたテツさんたちがマーシュさんに案内されて来たところへ鉢合わせた。

「おっ。目を覚ましたか」

「ええ! よく寝てスッキリよ!」

「そりゃあ良かった」

頭上に在る太陽みたいにニッと笑ったルナリアに、テツさんもニッと笑い返す。

ああ。なるほど? この2人、波長が近いのかも。

「昼食の準備にはしばらく掛かりますから、先に話し合いの場を設けるそうです」

「・・・了解。食堂で良いんだね」

「こちらへ」

マーシュさんの報告に頷いて返せば、マーシュさんはそのまま案内に立つ。

私たちは昨日も使ったから食堂の場所を知ってるけど、マーシュさんに案内を任せて後に付いていく。

入口を入って1階の廊下を進み、観音開きの扉をマーシュさんがノックする。

扉の向こうからお母様の返事が聞こえて、室内側から扉を開けてくれたのはレヴィアさんだった。

お母様とドネルクさんとマリッドさんとエゼリアさんとアンリカさんがテーブルの奥側に並んでいて、上座―――、お誕生日席が空けられている。

「席に着いてくれ」

「失礼する」

動じない態度でテツさんがお母様の向かい―――、上座寄りの席へ着き、ケイナちゃんたちもテツさんの並びの席に着く。

「お前たちは、そっちだ」

「えっ? わたしたちが上座?」

お母様に席を示されて、私が確認を入れる前にルナリアが首を傾げた。

「お前たちは当代当主だぞ? 良いから席に着け」

「「あっ。はい」」

そういや、そうだった。

正式な話し合いの場だから肩書きに沿った席順ってことなのだろうね。

ルナリアと並んで私も上座に着く。

椅子に腰を下ろした途端、ミセラさんとサーシャさんたちがお茶を淹れてくれた。

射貫くようなお母様の視線を正面に座るテツさんは堂々と受け止めていて、まるで動揺する様子がない。