軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊魔法というもの ⑥

「・・・教え合い、します? ―――、ええっと?」

「僕のことはレイクスと呼んでくれれば良いよ。―――、申し訳ないけど僕のアレは体質でね。人に教えられる種類のものではないんだ」

ふぅん? 霊視眼とかその手の個人技能ってことかな?

先天的に生まれ持った特殊な特技だと理解した。

だったら、この人―――、レイクスさんだけを警戒しておけば良いのか。

汎用的に普及させられるものじゃないなら、という安心感は有るんだけど―――。

「・・・それは残念」

「ところで、手に何を持ってるの?」

「・・・魔石ですよ」

手の中をチラリと見せてあげる。

魔力の手だけでも食い付いてるけど、逃がさないための撒き餌はもう少し有っても良いよね。

ホレホレ。どうよ?

魔石を通した魔力の手でチョキチョキとVサインをして見せる。

「ちょっと、それ! 何やってるの!?」

ヒ―――ット!

食い付いた食い付いた! 入れ食いじゃん!

ニンマリと笑いそうになる顔を懸命に引き締めて澄まし顔を取り繕う。

「・・・今のところ秘密です」

「ううっ!」

知りたかったら大人しく投降しろ! という意図が伝わったのか、お預けを食らって悔しそうな顔をしたレイクスさんが大人しくなる。

レイクスさんにしか見えていないなら、他の人には恫喝したのも分かんないでしょ。

森にいる今は良いけど、領軍以外に領民の目も有る森の外で話題に出されても困るからね。

案の定、恫喝に気付いていないらしいテツさんとケイナちゃんは、チラッとレイクスさんに目を向けた後、ルナリアのウォーレス領自慢を聞かされる作業に戻った。

テツさんたちも森歩きに慣れているみたいだし、慣れた人ばかりだと4キロメートルなんて距離を歩くのは1時間ほどしか掛からない。

まだ浅いエリアで比較的歩きやすい森を進んでバンダースナッチ迎撃地点に戻ると、ジアンさんが率いるアスクレーくん部隊が到着していた。

「フィオレ!」

「・・・お兄様。早かったですね。―――、いや。遅かったのかな?」

耳慣れてきた興奮気味な呼び声に目をやれば、エウリさんたちを引き連れたアスクレーくんが駆けてくる。

猟師さんたちはアスクレーくん部隊の面々と一緒にバンダースナッチの血抜き作業を始めている。

アスクレーくんたちが到着しているってことは、今の時間は11時ぐらいかな?

討伐作戦には間に合わなかったけど、アスクレーくん的には気にしていないみたいだね。

宙に浮いた獲物を見上げて、アスクレーくんは目を輝かせている。

珍しい魔獣が見たくてわざわざ片道2日掛けてまで里帰りしたのに、見られなくて凹んでいたものね。

「ふぉおおおおおっ! イエーティだぁっ!」

「こっちの子は?」

自分をガン無視して魔獣に夢中になっている少年にも、テツさんは気分を害した様子もなく微笑ましそうにしている。

「・・・ファーレンガルド家の次男で、私の許婚のアスクレーお兄様です」

「ファーレンガルド家、つーと、ファーレンガルド領の?」

そう言えば、テツさんたちはファーレンガルド領を通ってきたんだっけ。

棲息域の違う魔獣が出たと騒ぎになっていたから、テツさんたちはファーレンガルド領の依頼も請けていた可能性が高いね。

「そのファーレンガルド家ですよ。―――ほら、お兄様? お客様ですからご挨拶してください」

「あっ。アスクレー・ファーレンガルドです」

「お、おう。冒険者のテツです」

口頭で注意すれば、正気に戻ったアスクレーくんはスッと折り目正しく一礼する。

このギャップよ・・・。

ケイナちゃんも呆気に取られている。

アスクレーくんの切り替わりように面食らった様子のテツさんが挨拶を返せば、アスクレーくんは再び即座に切り替わる。

「フィオレ! 描き残したいから下ろしてくれる!?」

「・・・ああ。ハイ。血抜きしますから、早めに終わらせてくださいねー?」

「分かったー!」

少し離れた場所へ熊を下ろしてあげれば、アスクレーくんはボールを投げられた子犬のように熊を追い掛けていく。

ブレないなぁ。

こっちの世界に鉄道やカメラがなくて本当に良かった。

そんなことになったら、世間様にご迷惑が掛からないように、先回りして軌道や車両を爆破して回らなきゃならなくなるところだったよ。

「マイペースだな」

「・・・だよね」

目を丸くしたテツさんに全面同意しておく。

まあ、ほら。オタクなんて、あんなものだし。

アスクレーくんと入れ替わりに、サーシャさんたちを引き連れたミセラさんたちが歩み寄ってくる。

「フィオレ様」

「・・・ミセラさん。怪我人の様子は?」

「2人とも意識を取り戻しました。全員、手当は施しておきましたので、問題は無いかと」

おや? 手当?

「・・・回復薬は飲ませなかったんだ?」

「怪我を完全に治してしまっては証拠が残りません」

サッサと治して自分の足で帰らせれば良いかと考えたんだけど、首を振られてしまった。

証拠ってことは、領主対策かな?

怪我人たちを送り届けてあげるついでに、森へ入らせた張本人に苦情を入れるつもりなのかも。

言われてみれば、証拠も無しに文句を言っても知らぬ存ぜぬで返されそうだよね。