軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊魔法というもの ④

この人、知ってた―――、いや。予想してた?

ふぅん・・・。曲者っぽいな。

自分たちが「問題」になることを分かった上でドネルクさんに接近したわけだ。

遠回しにグダグダと右往左往するよりも、ストレートに勝負した方が付き合いやすい人かも。

良い機会じゃん。

ドネルクさんが王都へ帰る前に「問題」の解決法が見つかれば王様も安心するだろうし。

それでお母様は「来い」と強権を発動したんじゃないかな。

だったら、ここで私がテツさんたちを逃がすわけにはいかないよね。

「・・・歓迎するから泊まっていけば?」

「あー。気持ちは有りがたいんだが街道を使って仲間を先行させててな。心配させちまうから早めに合流してやりてえ」

ふむ? ノータイムでの即答だけど、用意していた回答ってわけじゃなさそうかな。

だとしたら、本当に仲間を気遣ってるってことか。

逃げ道を塞ぐ意味でも、心証を悪くしない意味でも、お仲間を安全な場所へ誘導しておいた方が良さそうだね。

信用の醸成を企図するなら、要望通りお仲間との合流を完遂させてあげるのがベストかな。

関係者を呼びに行かせる程度なら、私の一存で強権を発動しても許される範囲だろう。

「・・・伝令を走らせるよ? あっ。でも、領境を越えたかどうか関所に確認しないと居場所が分からないか」

「ウォーレス公爵領の何とか言う町で落ち合う予定になってるんだが」

「・・・レティアの町かな?」

私の世間が狭いだけかも知れないけど、ウォーレス領で名前の通った町といえばレティアの町しか思い浮かばなかった。

パッと表情を明るくしたテツさんが、“正解”と言わんばかりにピッと私を指してくる。

「おお。それそれ。その町で名所を見てえ、つっててな」

「・・・名所?」

慰霊碑のことかな。

テツさんたちって王都から来たんだよね?

王都の冒険者ギルドにいたドネルクさんと接点が有ったんだから、それは間違いないはず。

思ったよりも情報の伝播が早い?

「何か、馬鹿デケえゴーレムが有るんだろ?」

「・・・ど、“獰猛くん”のことかな?」

ズコッとズッコケかけた。

テツさんの答えに頭痛を覚える。

マジかぁ・・・。

慰霊碑じゃなく、“1号”の噂が王都まで届いてるの?

西方地域まで聞こえさせて神教会を煽るつもりで建てた慰霊碑よりも“1号”の噂が先行するとは、私の思惑と違った結果になってしまった。

想定外の事態で頭を痛めている私の返事にテツさんが首を傾げる。

「獰猛? 何だそりゃ?」

「・・・ゴーレムの名前だよ。私が作ったの」

記憶を探るようにテツさんは宙へ視線を飛ばした。

「そういや、領主の娘が作ったって噂だったんだよな。本当のことだったのか」

「・・・本当だけど、移動させたから“獰猛くん”が有るのはレティアの町じゃないよ?」

昨日の朝まではレティアの北門に鎮座していたから、テツさんたちの情報は昨日以前に仕入れたものだったんだろう。

テツさんたちは情報面でのバックアップ要員を持っていない?

いや。待てよ? 王都まで情報が伝播したとは限らないのかも。

テツさんたちは北の方から南下してきたっぽいことを言っていたから、昨日以前から森の中に居たのなら情報を得ていなくてもおかしくないのか。

私が背後関係を考察していることに気付いていない様子でテツさんが眉根を寄せる。

「そうなのか? そりゃあマズったかねえ」

「でも、名所ならレティアの町には慰霊碑が有るわよ!」

“1号”の処分命令を下した側の名義人であるルナリアが別のランドマークを宣伝すると、テツさんが目を丸くする。

「慰霊碑?」

「高さが50メテルも有る、ものすごくデッカい慰霊碑よ!」

「50メートル・・・。17階建てぐれえか。そりゃあデケエな」

日本人のテツさんなら見慣れた形状だろうから、大きさに驚くだけじゃなく慰霊碑の意味も正確に理解してくれるだろう。

墓標の他にも慰霊碑を建てる文化って、こっちの世界ではイマイチ伝わっているか自信が持てないからね。

「どんなに遠くからでも精霊様の下へ帰れるようにって建てたのよ!」

「へぇ? 精霊信仰ってヤツか。そういや、精霊が姿を現したとかって噂も有ったんだっけな」

建てたときの苦労話やご祈祷での出来事にまで至るルナリアの説明に、テツさんだけでなくケイナちゃんやお兄さんたちも表情を柔らかくして聞き入っている。

この様子だと、恐らくは信仰面でも私たちと感性が近いのだろうし、関係構築が悪い方向へ働くとは思えないな。

感性の同一性は共存を阻害するカルチャーギャップを埋めるための一助になる。

ヨシ。決めた。

「・・・やっぱり伝令を出すよ。仲間の人たちって、どんな人たち?」

「荷馬車が1台に、馬を7頭連れた獣人族3人とドワーフ族2人だ」

は? 今、何と?

「「ドワーフ族!?」」

「お、おう」

身を乗り出した私たちの食い付きに、目を真ん丸にしてテツさんが仰け反った。