軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エンカウント! ㊺

敵対する意志は無さそうなんだから、それなら問題を大きくしない方が良い。

一応、助けられたことは間違いないしね。

逃げようとする―――、というか、距離を置こうとするってことは何か事情が有るんだろう。

事情を聞かせて貰って理が通っているなら、借りを返す意味で彼らの事情に協力するのは吝かじゃないよ。

「・・・正体不明の怪しい人たちがウロついてるってなれば、立場上、私たちは調べる必要が出て来ちゃうんだよ。それなら身元を明らかにしてくれた方が手の打ちようが有るから」

「立場上・・・?」

「手の打ちよう・・・ねぇ」

為政者側の事情を明らかにすれば、ターバンの人とテツと呼ばれた―――、面倒くさいな。

もう”テツさん”で良いや。

ターバンの人とテツさんが首を傾げる。

足を止めさせて時間を稼いだところへお母様が落ち葉を蹴散らして到着する。

スルスルと「足」を縮めて着地して、ルナリアの固定を解除すると同時に、ルナリアごとお母様にギュッと抱きすくめられた。

「無事だったか!」

「・・・うん」

「やっつけたわ!」

ルナリアは胸を張っているけど、私は胸を張る気になれない。

心配掛けちゃったなぁ。

余裕も時間も無くてゴリ押しで通しちゃったけど、待つ側の気持ちは内戦で散々思い知らされたのに、あのときの辛くて苦しい気持ちをお母様にまで味合わせちゃった。

結構、本気で反省してる。

「よくやった。―――それで、この者たちは?」

「イエーティの討伐を手伝ってくれたんだけど―――」

色々な気持ちを飲み込んで気持ちを切り替えたらしいお母様が、私たちを解放して見覚えのない面々へと目を向ける。

ルナリアが始めた説明を遮って、重い足音を響かせて追い付いてきたドネルクさんの声が思わぬ方向へと向けられた。

「テツ!」

「ギルド長?」

「よう。こんなところで会うとは奇遇じゃねえの」

フードの女の子が目を丸くして、テツさんが軽い感じで片手を挙げてドネルクさんに挨拶を返す。

「ドネルク殿?」

「ああ。彼らが言っていた冒険者なんだが・・・、知らない顔が多いな」

怪訝な顔で首を傾げたお母様に、ドネルクさんが答えを返しながらターバンの人たちへ目を向けた。

「んん? 言っていた?」

今度はドネルクさんの説明にテツさんが怪訝な顔で首を傾げる。

ビンゴだったね。

私たちが疑った通り、このテツさんがドネルクさんの言っていたテツさんで、すると、こっちのフードの女の子がケイナちゃんかな?

私たちとテツさんたちの間に立ったドネルクさんが、手のひらで私たちを示す。

「紹介しておこう。前ピーシス伯爵と現ピーシス伯爵に、現ウォーレス公爵閣下だ。こっちは冒険者のテツとケイナだ」

「テツだ。んで、こっちがケイナだ」

手のひらで指し示されたテツさんが、ケイナちゃんの頭を優しい感じにポンポンと撫でながら自己紹介を返してきた。

良かった。穏便に収まりそうで、そっと息を吐く。

「フレイア・ピーシスだ」

「・・・フィオレ・ピーシスです」

「ルナリア・ウォーレスよ!」

警戒度を引き下げたお母様の自己紹介にルナリアと私も続く。

ドネルクさんと面識の有る面々が自己紹介を終えれば、当然のことながらドネルクさんの目はターバンの人たちに向けられる。

「それで?」

「ケイナの兄貴たちだよ」

説明しろと言わんばかりに小さく首を傾げたドネルクさんに、何のことはないと言わんばかりにテツさんが肩を竦めて返した。

テツさんの返事を聞いたドネルクさんが目眩を堪えるように手のひらで目元を覆う。

「そう来たか・・・」

「何だ? 説明しろ」

「問題が大きくなったってことだ」

ドネルクさんの態度に理解が及ばなかったお母様が目を厳しくして、ドネルクさんが溜息雑じりに首を振る。

ドネルクさんの言う「問題」っていうのは、”王様も判断に困ってる”ってアレのことかな?

ドネルクさんの説明ではケイナちゃんが「問題」だったはずだけど、テツさんの紹介で「問題が大きくなった」ってことは、ケイナちゃん個人の問題ではなく ケ(・) イ(・) ナ(・) ち(・) ゃ(・) ん(・) た(・) ち(・) の問題って意味になるのかも。

もしかして、センシティブな感じの事情かな?

「・・・ふーん。ケイナちゃんのお兄さん、ね」

「どうしたの?」

私の口から漏れた独り言にルナリアが反応する。

私だって予測が付いてるわけじゃないし、どう答えたものかな。

「・・・いやぁ。ちょっと気になることが有ってね」

「気になることって?」

わざわざボカシた答えにルナリアから即座にツッコミが入る。

野生の本能なのか、脳筋は変なところで勘が良かったりするからなぁ。

スクスクとウォーレス血統らしい脳筋に育ちつつ有るルナリアも、脳筋のシックスパック―――、じゃなくって、シックスセンスを手に入れちゃったのかも。