軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エンカウント! ㊷

「ブフゥウウウウウウウッ!!」

「ゴアアアアアアアアアッ!!」

新たな敵の出現に拘束を振りほどけないシカが激しく威嚇し、追ってきた獲物に熊も咆哮で威嚇し返している!

コイツもデカい!

「で、デカっ!!」

のっそりと上体を起こして2足立ちになった巨体は、2階建ての家を見上げているみたいだ!

恐れを含んだルナリアの声に頭の芯が急加熱する!

トラウマ? 知るか、そんなもん!

「・・・このクサレ熊!! 私を無視して私の獲物に手ェ出すな!!」

「グオゥッ!?」

さらに「足」を減らして思いっきりブン殴れば、横っ面に「手」を食らった熊の目が私たちへ向く!

カッとなってやった。

今も反省はしていない。

殴った拍子に体勢がグラッと揺らいで「手」を「足」に戻す。

「ちょっ!! こっち向いちゃったじゃない!?」

「・・・あっ。ヤベ」

ルナリアの焦った声に頭の温度がスゥッと下がる。

訂正。ちょっとだけ反省している。

「もおおおおおおおおおっ!!」

「ガッ? グルルルルル」

ヤケクソっぽい叫びと共にルナリアが熊に攻撃を集中し始めたけど、熊はビクともしていない。

もしかして、長い毛がクッションになってダメージが入らない?

私は手一杯だから口先だけでもルナリアを支援する。

「・・・殺っちゃえ殺っちゃえ!」

「ぜんぜん効いてないわよ!?」

やっぱり口先だけじゃダメか。

うん。知ってた。

「・・・ああ、クソ熊め!! シカを片付けるから、ちょっとだけ熊を押し留めて!!」

「ええっ!? わ、分かったわ!」

無理っぽいと思っているのだろうに、それでも頑張ってくれるルナリアがビシバシと熊叩きを再開する。

熊叩きなら私も参加して冥土へ送ってやりたいけど、隙あらば拘束から逃れようとシカが踏ん張っているせいで「手」を離せない。

効いてはいなくても嫌がっているようで、熊は鬱陶しそうにしている。

何とかこの状況を打破しないと!

熊はルナリアに任せてサッサとシカを絞める!

決意を込めてシカに「手」を伸ばし直せば、シカも2足で立ち上がって前脚でバシバシと「手」を蹴り飛ばして来た。

このぉ・・・!

「手」は見えてないくせに勘が良すぎだろ!

「・・・ええい! じっとしろ!」

「こーの! このこのこのこのっ!!」

私の「手」はシカの前脚に防御されるし、ルナリアの「手」は熊の毛に遮られて打撃が通らない。

とうとう痺れを切らしたらしい熊がノシッと後脚を踏み出す。

あ。これ、拙いヤツだ。

「グオオオオオオオオオッ!!」

「ひいいいっ!! こっち来んなあああああああっ!!」

熊の咆哮にビビったルナリアが「手」の回転数をレッドゾーンまでブン回す。

お母様と約束した「撤退」の2文字が私の頭を過ぎったとき、また新たな咆哮が加わった。

「うおおおおおおおおおおっ!!」

「「えっ!?」」

遠くから近付いてきた叫びと共に、横合いから宙を素っ飛んできた人影が腕を振り抜く。

「うるるぁあああああああああああっ!!」

「ガフゥッ!?」

ゴツッ! と硬くて重い音が森に響いて熊の足元が大きくよろめいた。

「「ええ~っ!!」」

横っ面に食らった衝撃を逃がしきれなかった熊が、酔っ払いの千鳥足のように2歩3歩とフラつく。

真っ直ぐにぶつかったビリヤード球のように運動エネルギーの全てを伝達しきって、素っ飛んできた人影が見た目の体格からは意外に思える身軽さでスタッと着地する。

マルキオお爺様並みに大きく分厚い体躯は2メートル近い身長が有るんじゃないかな。

そして、何よりも目を引くのは王国では珍しい黒髪だ。

あの人、どう見ても人間なんだけど、あれだけ魔力の手で殴り続けても揺るがなかった熊を後退らせちゃったよ。

しかも、素手でだよ。

私たち以外で武器を持たずに魔獣と戦う人なんて初めて見た。

どこからどう見ても”ザ・日本人”と言った見た目の男性が私たちに気付いた。

「お? 人が居るじゃん」

「ちょっ!! 後ろ後ろ!!」

必死な声でルナリアが指さす。

目を丸くしている男性の背後にのっそりと熊が立った。

助走を付けて熊をブン殴ったくせに、目を怒らせて毛を逆立たせている熊の存在が眼中にない様子で男性は私たちを見上げている。

「って子供? なんか宙に浮いてるんだが」

「・・・ちゃんと敵を見て! 敵!!」

何やってんの!? この人!!

話している言葉は西方の公用語に近い訛が有るけど、少し違う感じかな。

明らかに日本語ではないこっちの世界の言葉で男性は独りごちた。

いやいやいや!

私たちが浮いてるとか、今はそんなこと気にしてる場合じゃないでしょ!!

「おっと」

「「えええっ!?」」

私の警告に熊の右パンチは左手でパシッと受け止めたけど、続く左パンチはまともに男性の側頭部を捉える。