軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エンカウント! ㊶

「・・・お母様。私が前へ出るよ」

「無茶はするなと、いつも言ってるだろう」

お母様の厳しい目を真正面で受け止めて、それでも断言する。

「・・・後ろから来てる方はバイコーンほど足が速くない。後ろの奴が来る前にバイコーンを倒す」

「わたしも行くわ!」

私の覚悟にルナリアも覚悟をもって応えてくれる。

さすが私の相棒。

私だって無闇に危険を冒そうだなんて考えていないし、勝機は十分にある。

各個撃破だ。

何なら、取っ捕まえた2杯目のシカを盾にして3杯目のお代わりと対決したって良い。

全部が敵なら、潰し合わせて敵が減った分は私が丸儲けすることになるんだから。

揺るがない私にお母様が諦めたように息を吐く。

「バンダースナッチを片付けたら私たちも応援に向かう。くれぐれも無茶はするな」

「・・・分かった。無理だと思ったら空へ逃げるよ」

お母様の念押しに頷き返す。

「行くわよ!」

「・・・うん!」

背中に飛び乗ってきたルナリアを固定して離陸する。

本日2回目の突撃だけど、救出が目的だった1回目と違って今度は敵の殲滅が目的になる。

樹上まで上がらず木々の合間を縫ってシカとの正面衝突コースで飛ぶ。

「ねえ。どう戦うの?」

「・・・出会い頭に思いっきり引っ叩く。ルナリアも一緒にお願い」

「分かったわ!」

単純明快、「手」の数に任せた袋叩きだ。

すべきことを明確に理解してルナリアが力強く頷く。

私の14本にルナリアの4本を足して「手」は18本。

合体の1本にアクティブソナーの1本と「足」の6本を差し引いて残りの「手」は10本。

シカの突進を受け止めて動きを抑え込むのに2本―――、いや、4本使っても攻撃用に6本回せる。

「・・・来るよ!」

飛ぶような猛烈な速度で跳ねてくるシカの姿をルナリアに指し示す。

冗談みたいな速度で右へ左へ木々を避けながら跳ぶシカを真正面に捉えて、ルナリアが「手」をフルスイングした!

「てやああああああああっ!」

「・・・くっ! このっ・・・!!」

真横に跳ねてルナリアの「手」を躱したシカの姿を見失いそうになる!

「避けられた!?」

「・・・行かせるかあああああああっ!!」

クランク軌道で私たちの防衛線をブチ抜こうとしたシカの進路に、2本の魔力の手を広く広げる!

点や線でダメなら面で押し留めれば良い!

固めた「手」にシカの角が突き刺さり、そのまま角を掴み取る!

採掘場のシカと違って枯れ木のように何本もに分岐した角は、生身の手で掴み取ろうとすれば大怪我を負わされただろう。

だけど、魔力で形作られた「手」に突き刺さろうが切り裂かれようが、私は痛みを感じることもない!

「ブフォオオオオオッ!!」

「・・・捕まえたっ!! けど、すごい力!!」

2トントラックほども大きさが有るシカの巨体に押し込まれて6本の「足」が地面に引っ掻き傷を刻む!

攻撃に回そうとスタンバイしていた私の「手」は2本有ったけど、手近な巨木の幹を掴んでシカの勢いを止める!

私の「手」は手一杯だけど、ルナリアの「手」がまだ4本残ってる!

「とりゃああああああああっ!!」

「ガフッ!? ブフォオオオオオッ!!」

防御術式を振り回す強烈な張り手を食らってシカが激高する!

ビシバシとルナリアが張り手を食らわすけど、シカは身を捩って暴れるばかりだ!

「なんか、あんまり効いてないっぽいんだけど!」

「・・・コイツ! 避けて打撃を弱めてるんだよ!」

信じられないほどの勘の良さ!

魔力を感じ取る魔獣には、魔力の手が目に見えないことに大した意味は無い!

予想していたことだけど、思ったよりもダメージが入らない!

「どうすれば良いの!?」

「・・・首をへし折る!!」

殴って効かないならパワーで押し切ってやる!

決意を込めて「足」を減らし、シカの首へと伸ばし掛けたところへ、闖入者が飛び込んで来た!

「グオオオオオオオオオッ!!」

「・・・えっ!? もう来たの!?」

新たに現れた敵に慌てて目を向ける!

「・・・コイツ!!」

モサモサと長く暗い灰色の毛に全身を覆われていても、この生物の正体を私が見誤ることなんてない!

熊だ!

私にトラウマを植え付けた仇敵の姿に、ギュッと心臓を掴まれた気分になる!

バクバクと鼓動が高まって身が縮みそうになるけど、ギリッと歯を食いしばって恐怖に耐える!