軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エンカウント! ㊲

「「~~~~ッ!!」」

下っ腹が急速冷却される感覚に背筋がゾクゾクする。

自然落下を遙かに超える速度での急降下に、内臓が浮き上がる強烈な玉ヒュンを味合わされる!

「手」のガードが有ると分かっては居ても、迫ってくる緑の海に思わず目を瞑ってしまう!

怖えええええええええっ!!

再突入でバキバキバサバサと枝葉をへし折って突き抜けると同時にルナリアが雄叫びを上げる!

「このおっ! 退けええええええええっ!」

ルナリアの魔力が動いたことが感じ取れて、魔力の手を振り下ろしたのだと察する。

驚いたことに、深緑の壁と衝突する恐怖心に目を瞑ってしまった私と違って、ルナリアは目を開いたまま地上の敵を見据えていたみたい。

すごい度胸だね。

ルナリアは本当に絶叫系を完全克服してしまったらしい。

枝葉を押し退けて迫ってくる地上の景色の中に、飛び退いて「手」を避けたバンダースナッチの姿と数人の人影を認める。

急制動を掛けつつ真上から見下ろしている格好で平衡感覚がおかしくなりそうな視界だけど、数人は武器を構えて抵抗中だったことを確かめる。

人数は―――、2、4、6人!

良かった! まだ生きてるかは未確認だけど、頭数だけは揃ってる!

2人は倒れ伏してるけど、残りの4人が倒れた仲間を庇いながら、取り囲むバンダースナッチに槍を向けて接近を阻んでいたようだ。

ルナリアの魔力の手が人間と魔獣の間に数メートルも有る大きな手形を刻んで、バンダースナッチの包囲を下がらせている。

地上へ着陸してしまうと私たちも一緒に攻撃を食らうだろうから、5メートルほど上空で留まる。

「・・・ルナリア! 攻撃を続けて!」

「任せなさい! とりゃ―――っ!!」

叫びと共にルナリアが魔力の手を振り回し、魔力動きを察知しているらしいバンダースナッチが飛び退いて「手」を避ける。

「この! このこのこのこの! 避けるな―――っ!!」

苛立ちを隠さない叫びも虚しく、伏せたり下がったりでバンダースナッチはルナリアの攻撃を躱している。

やっぱりバンダースナッチも魔力を感じ取るんだな。

初めてシェリアお婆様と森へ入ったときに牡ジカが躱したように、目に見えないルナリアの「手」を避けている。

魔獣の考察は後だ。

サッサと助けて離脱してしまおう。

「・・・助けに来たよ! そのままじっとして!」

「「「「は、はい!!」」」」

目を瞠ってはいたけど、バンダースナッチから目を離すわけにはいかない村人っぽい服装の男性たちが前を向き直して答える。

彼らの返事を耳にしながら倒れている2人を「手」の中に包んで持ち上げ、残りの4人の胴体も引っ摑む。

どの「手」の中にも私とは感触が違う体内保有魔力の存在を感じ取れる。

倒れていた2人もまだ生きていると思いたい。

バサバサと枝葉が降ってくるけど気にする余裕なんて無い。

「・・・身柄確保! 離脱するよ!」

「分かったわ!」

「「「「わあああああああああっ!?」」」」

ルナリアが答えるのも待たずに「足」を伸ばして急上昇に転じる。

要救助者たちの悲鳴なんて完全に無視だ。

今は安全な場所へ退避するのが最優先だから、枝葉に当たろうが知ったこっちゃない。

いくらかの大怪我をしようが、どのみち治療するんだから誤差だよ、誤差。

「・・・拙いな」

樹上へ出てしまえば一先ずは攻撃から逃れきったけど、倒れていた2人の出血が酷い。

血に塗れたことで何となく魔力の手の姿が分かってしまうほど出血している。

意識が有る4人も初めての空中散歩に顔色を青くして悲鳴も出ないほど硬直している。

360度どっちを見ても森の木々しか見えなくて、深緑色の水面に立っているように錯覚しそうになる。

普通なら帰り道が分からなくなりそうなものだけど、私にはアクティブソナーが有る。

お母様たちの魔力反応を頼りに6本の「足」で駆け始める。

「・・・やっぱり追跡されてる・・・!」

「えっ!? 何も見えないわよ!?」

ルナリアと一緒になって眼下を見下ろすけど、私の目にも枝葉に遮られて地上の様子は見えない。

目には見えないけれど、アクティブソナーでバンダースナッチの位置は手に取るように掴めている。

向こうからも私たちの姿は見えていないはずなのに、30メートル下の地上をバンダースナッチは追ってくる。

思えば、初めて採掘場でバンダースナッチを狩ったときにも、ボス犬たちは1キロメートル以上も先から私たちを目指して駆けてきたよね。

今現在、私たちが追跡を受けていることで、バンダースナッチは視覚に頼らず獲物の存在を察知する能力を持っていることが証明された。

障害物を避けなければならないバンダースナッチよりも、真っ直ぐに飛べる私たちの方が移動速度は速い。

1歩ごとの歩幅も私の方が遙かに大きいしね。

彼我の距離はぐんぐん開いていく。

なのに、地上のバンダースナッチは迷うことなく追い掛けてくる。

着陸するまでに出来るだけ距離を稼いでおかないと。