軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エンカウント! ⑥

「目と鼻の先では有るが、レティアの城壁外に建てるのだから、養成施設―――、学校の方にも城壁は必要だぞ。出来れば支城としての機能も持たせたい」

「・・・支城の機能? 兵の駐留と兵站の備蓄で良いのかな?」

お母様の要望にイメージを思い浮かべようとしてみるけど、レティアの領主館のイメージが強すぎて他のイメージが思い浮かばない。

支城って確か、本拠地が敵軍に包囲されたときなんかに敵を背後から攻撃して、包囲網に穴を空けたりするものじゃなかったっけ?

学校に何をさせるつもりなのかと首を傾げていると、お父様もお母様に同意する。

「そうだな。受け入れる生徒には貴族の子女も含まれるだろう。ナーガ川を渡らせるつもりは無いが、施設自体にも防衛能力を持たせておかねばならん」

「・・・レティアの町みたいな城壁で良いの?」

わざわざ助けに行かなくても学校が独自に防衛してくれれば手間は掛からなそうだよね。

学校の守備兵として領軍を駐留させて、もしも敵に包囲されたときにはレティアの北門を外から支援させるってことかな?

でも、レティアの北門から学校までは1キロメートルも離れていないのだから、そんな狭っ苦しい隙間に挟まれに来る敵って居るんだろうか。

猫みたいに狭いところが好きな敵ならワンチャン有り得る?

お父様もお母様もハッキリと答えを口に出さないまま、試すような目をルナリアと私に向けてくる。

あ。これって授業?

「小さなレティアの町みたいなのが出来るのね」

「・・・そんな感じだよね」

私と同じくよく分かっていないらしいルナリアの率直な感想に、とりあえず頷いておく。

優しい目で私たちを見比べながら、お父様が追加情報をくれる。

「採掘場も防衛せねばならんからな。相互に支援し合える形が良いだろう」

「・・・あっ。相互に支援?」

これ、絶対にヒントだ。

いや。そうだよね? 挟まれたがる敵なんて居ないから、北門を攻撃できなくなるんじゃないのかな。

有事に立て籠もって耐えている学校も同じで、秒で城壁を突破されなければレティアからの攻撃が敵の背後に加えられることになるから、学校が攻撃を受けることが無くなる?

それは採掘場にも同じことが言えて、近くに支城が有るだけで攻撃されにくくなるのか。

「どうした?」

微笑ましそうにお父様とお母様が首を傾げる。

答えを言って見ろと?

ラジャー! 答え合わせ行ってみよう!

「・・・学校にも戦力が有ると敵が挟まれるのを嫌がって北門側が包囲されにくくなるってことだよね? 北門が自由に使えるなら、騎馬部隊を出し入れできてウォーレス領軍が得意とする機動戦に持ち込めるってことで良い?」

「そういうことだ。支援戦力になる支城が点在すると地域全体の支配力が強まる」

ヨシ。正解。

最初にお母様が学校に支城の機能を持たせろと言った答えがコレか。

私は拠点の1ヶ所1ヶ所に防衛力を持たせることしか考えて居なかったけど、“点”で見るのか“面”で見るのかの違いだ。

地域全体の支配権が握れているのなら、個別の防衛能力がガチガチに仕上がっていなくても“面”で支配権を維持できる。

それは労働力と資材資源の節約に繋がって、より少ないコストで個別強化に近しい防衛能力を手にできることになるんだろう。

あっ。待てよ?

「・・・だったら、採掘場と渡河地点の砦も街道で繋げば、さらに攻め込まれにくくなる?」

「その通りだが、それは追々だな」

正解だと肯定しつつも、お父様もお母様も首を振る。

「・・・そうなの?」

「採掘場と渡河地点は20キロメテルほどの距離だが、今すぐに街道を引かずとも、一先ずの支配権は確保できている。危険を冒してまで事を急ぐほど優先順位は高くない」

「・・・そっか。スッキリした」

重要なのは「支配権の確保」で、外側が出来上がっていれば内側を埋めるのは後でも出来るってことかな。

異世界モノでお馴染みのボードゲームでも、盤面の四隅を確保してしまえば優位性は揺るがない。

最終的な勝利が確実なら、コストカットしつつ余ったリソースを他へ振り向けることが出来る。

同時進行でたくさんの案件を並行処理すれば、山積みになった案件も少しは前へ進められるだろう。

ずっと手一杯だった私にとって、これは願ってもない朗報だよ。

そういうことなら、遠慮なくリソースを学校に注ぎ込ませて貰おう。

先ずは目の前のプラン策定だ。

「・・・んー。城壁の他に建てるのは、学舎と、宿舎と、厩舎と、兵舎? お母様。兵舎はどうしよう?」

「要らん要らん。詰所程度の用意をしてやって、後はレティアへ戻らせれば良い」

苦笑するお母様がパタパタと手を振る。

そりゃあそうか。たった数百メートルの距離だもんね。

健康のために歩いて通勤するにも近すぎるぐらいの距離だ。

スッパリと切り替えて次に行こう。

「・・・分かった。じゃあ、後は倉庫と孤児院かな」

「孤児院を学校の中に置くのか?」

ドネルクさんもバルトロイさんも意外そうに目を丸くしている。

「・・・親を失った子供たちって教育を受ける機会が減るんですよ。学校を作るなら一緒に教育を受けさせてあげたいじゃないですか」

「騎士団や魔法術師団の予備軍の予備軍か?」

ドネルクさんの言い草にクスッと来る。

確かに騎士学校や治癒魔法術師学校は騎士団や魔法術師団の予備軍だけどね。

「・・・そこまでは言いませんけど、ある意味、一貫した英才教育を受けられることになるかと」

「小さな子供は手間が掛かるだろう。学校内に置くと教師側の負担が大きくないか?」

ははぁん?

これって、どこかに「学校」が有って、そこの常識と懸け離れてるって感じかな?

王都辺りになら有りそう。