軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第2次領有宣言 ⑰

まあ良い。

ロンドベール家は降爵されて凋落し、利権はドネルクさんの手で王家に取り戻された。

今後はエゼリアさんも目を光らせるのだから、同じ轍を踏むことはないだろう。

あっ。そうだ。

「・・・そう言えば、カレリーヌ様はご健勝ですか?」

「すっかり落ち着いている。落ち着きすぎてポックリ逝かないかと心配しているぐらいだ」

ドネルクさん! 言い方!

難題を押し付けられて恨み言の1つも言いたい気持ちは分かるけど、ドネルクさんのお婆様だよね!?

まあ、親戚筋とはいえ他所様のお家事情に首は突っ込むまい。

それよりもだ!

「・・・それなら、ぜひ、お元気な内にウォーレス領へ!」

観光ホテルか温泉地の宣伝文句みたいだけど、カレリーヌ様には来て貰わなければならない事情が私にも出来ている。

勢い込む私にドネルクさんが苦笑する。

「来る気になってるぞ。陛下に尻を蹴り上げられていなければ、俺も祖母上と一緒に来るつもりだったんだ」

「・・・うっ。なんか、私のせいで済みません」

私の身を心配してのことと言われれば、王様のゴリ押しに責任の一端を私も感じざるを得ない。

この様子だと、結構な急ぎ足でウォーレス領へ来たんだろう。

そして、到着してみれば、いきなり怪獣大決戦に巻き込まれて、巨大スライムにトドメを刺せと小娘たちに無茶振りをされたと。

ルナリアには役立たず呼ばわりされたし踏んだり蹴ったりだよね。

特撮大怪獣映画で毎回政府に無茶振りされて酷い目に遭わされいる自衛隊みたいで申し訳なかったな。

「いやいや。俺が祖母上の不安を取り除いてやれれば良かったんだがな。アマリリアの事件も有ったし、不甲斐ないものだ」

笑って首を振っているけど、この責任感が強いドネルクさんのことだもの、ずっと忸怩たる思いを抱き続けて居たんじゃないかな。

くっそう。真犯人というか、王妃様暗殺未遂事件の黒幕は野放しのままだし、1年以上も前のことで実行犯も殺されているから協力しようにも真相の追い掛けようがない。

それでもドネルクさんは王国を守ろうとお母様たちと奔走したし、王妃様の治療が終わったときには心底安心した表情で王妃様と言葉を交わしていた。

不安を抱えながらもドネルクさんは自分に出来る精一杯を頑張ったんだよ。

本当に、まともな人だ。

無私の精神で身を粉にして頑張り抜いた人を誰が責められる?

「・・・王都の安定はドネルク叔父様在ってのものだったのでしょう? 叔父様は十分に務めを果たされていたと思いますけれど」

「そう言って貰えると救われる」

ドネルクさんは大変だっただろうけど、カレリーヌ様がドネルクさんを頼りにした気持ちも分かるよ。

そして、ドネルクさんに良いお嫁さんを、と願った気持ちも理解できてしまう。

色々有ったけどエゼリアさんもまんざらでもなさそうだし、丸く収まったのなら、それでヨシ!

「・・・大丈夫ですよ。ウォーレス領を見ていただければ、“お隣”も“西方”も怖れるに足りないとカレリーヌ様にもお分かりいただけますから。お婆様たちもカレリーヌ様にお会いできるのを楽しみにされていますし、カレリーヌ様にもお喜びいただけるでしょう」

「そうね。早く叔母様にお会いしたいわ」

「随分とお顔を拝見できていませんでしたからね」

カレリーヌ様から多くを受け継いだお婆様たちも優しい目で同意する。

そしてもう1つ。

私が押し出したのは手を掴んで捕獲しておいた吸血種の彼女だ。

「・・・それと、このサーシャさんたちにも、カレリーヌ様にお会いいただきたいのです」

「彼女らに、か?」

カレリーヌ様とサーシャさんたちの関係性を知らないドネルクさんが首を傾げる。

初めて会ったドネルクさんからみれば、サーシャさんはウォーレス家のメイドさんにしか見えないだろうしね。

「・・・サーシャさんたちはハーク一族の末裔なのですが、ハーク一族とは、旧ジュノー王国民なのですよ」

「そうなのか?」

目を瞠ったドネルクさんにサーシャさんが頷く。

「はい。ジュノー王国が滅ぼされた後、ラフィーヌ様のご尽力でグライアレー領に身を寄せておりました」

「驚いたな。大叔母上が・・・」

セリーナお婆様のお母様はまだお若い頃に亡くなられたそうだからドネルクさんは直接の面識がなかったはずだけど、故人の存在はよく知っている口振りだね。

「・・・旧ジュノー王国民のことでカレリーヌ様は深く気に病んでおられましたから、少しは過去に決着を付けていただくことも出来るかと」

「旧ジュノー王国民に対する悔恨は俺も祖母上から何度も聞かされた。祖母上も救われるだろう」

直孫のドネルクさんが同意してくれたことで、カレリーヌ様に関する方針は纏まった。

一時は反目したカレリーヌ様に、なぜ私がここまで理解を示して入れ込むのか?

私が持っていないものを持ってるからだよ。

カレリーヌ様は味方で、敵は他にいる。

しかも、その敵はカレリーヌ様と私の共通の敵だもの。

厄介な敵を相手取るのに情報源は多ければ多いほど良くって、西方諸国と小国連合国に散った旧ジュノー王国民が、カレリーヌ様の情報源として数十年を経た今も機能している。

そりゃあ私だってアリアナさんの件では思うところが無かったわけじゃ無いよ。

でも、大事の前の些事に拘泥したところで、足を引っ張り合うことになるだけで何の意味も無い。

共通の敵は強大で、王国が置かれた現状は多勢に無勢で厳しい。

“融和派”や”中立派”のことだって、そうだ。

私たちには1人でも多くの味方が必要なんだよ。

ともあれ、カレリーヌ様プロジェクトがご家族の承認を得たことで、拘束を受けていたサーシャさんも晴れて釈放される。

姉御、お務めご苦労さまでした。

もうこんなところに戻ってくるんじゃないぞ。

出所して 娑婆(シャバ) に戻ったサーシャさんを見送って、マルキオお爺様が実務上の問題へと話題を切り替える。

「領有宣言に踏み切るのなら領有範囲を示す地図を作らねばならんぞ」

「そうだな。フィオレ。明日にでも私を連れてナーガ川上空を渡河地点まで飛べ」

「・・・ナーガ川の形状で範囲を示すんだね。分かった」

航空偵察で描き取った川の流れを元に地図を作って、領有宣言の資料として添付するわけだ。

私の背中でお母様がスケッチするんだろう。