軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第2次領有宣言 ⑯

「それで? どうするつもりだ」

「・・・迷宮で探索と採取を進めて貰うなら、防衛拠点―――、砦の中で寝泊まりと採取作業をさせて安全性を高めるのが良いんじゃないかと」

ダンジョン内で行うのは探索と狩猟だけで、狩った獲物は砦内に搬入して貰う。

加熱加工した方が体液の甘みが増すっぽいから、砦内で加工と採取を行った方が生産性も上がるんじゃないかな。

渡河地点に設置してきた砦は、そういった作業場兼シェルターのコンセプトで建ててあるから、防衛任務の領軍だけでなく冒険者も砦内に受け入れてあげれば良い。

「間諜が紛れ込みやすくはならんか?」

「・・・冒険者を使う以上、今さらでは?」

「ふむ。それもそうだな」

バッサリと切り棄てる形で真理を突けば、心配顔をしていたマルキオお爺様も納得した。

冒険者にも目を光らせれば良いだけだし、砦に駐屯している領軍が不審な動きを見落としたとしても間諜に何が出来るわけじゃない。

「・・・それに、砦の内部を知ったからといって渡河できるわけでも有りませんし、迷宮が王国の手の内にある以上、南岸で同じようにドラゴンフライを狩ったところで迷宮以上の利益を生み出すことも出来ないでしょう。危険を減らせば冒険者が働きやすくなるのであれば、国境を守るついでで安全に働いて貰えば良いと考えますが」

「“盗人”どもは指を咥えて見ているしかないということか。それは面白いな」

私の真意を読み取ってくれたハインズお爺様も楽しそうに笑う。

“お隣さん”が悔しがる姿で溜飲を下げられるのなら、お爺様たちの健康にも寄与してくれることだろう。

二番煎じで儲けられるものなら、やってみれば良い。

リスクと利益が見合うのならね。

「・・・あと、アレです。いちいち王都に戻らなくても採取してきた素材を換金できるのであれば、冒険者も時間の許す限り働けると思うのですが、どうにかなりませんか?」

「ギルドでか?」

首を傾げる組織の長に直訴する。

「・・・はい。ギルドの出張所のようなものをレティアにも設置していただければ、冒険者は移動に掛かる手間と日数と費用が減ります。素材の運搬は輸送ギルドで請け負えますから流通に関与しようとする各種商会の中抜きも防止できますよ」

省力化と時間短縮と経費削減が出来れば個人事業者の手残り利益は爆増する。

無駄な介在者を排除することで、実務を担うものだけで利益を分配できるんだよ。

現物の運搬は輸送ギルドに丸投げすれば、輸送コストを実費プラスアルファ程度に抑えられる。

ギルドも商品の入荷数を把握しやすくなって、帳簿上の数字と現金のやり取りだけで必要な場所へ必要な数量だけ現物を分配することが出来るんじゃないかな。

これはまだ“捕らぬ狸”だけど、ダンジョンで本当に砂糖が採れるなら、王国全土で―――、ううん。国外へもシンプルな経路で配送できるだろう。

本音では国外への輸出はしたくないけど、それだと“融和派”や”中立派”に旨味が無くて反発を受けるかも。

販路を持つ貴族家や各種商会が、いくらの暴利を乗せて国外へ転売しようが好きにさせれば良い。

ただし、国内需要で暴利を貪ることは善良な生産者として許さない。

貴族家や商会への卸値も市場相場と同じにすれば、旨味が生じるのは国外輸出向け市場だけになって国内市場には影響しない。

極論すれば、冒険者ギルドの直売所でしか買えなくすれば良い。

買い占めようにも出荷数や卸し先をコントロールするのは王家と直結した冒険者ギルドなのだから、国内市場の相場が暴騰することは抑止できる。

まあ、生産者が販売戦略にまで口を出すのは出しゃばり過ぎだろうし、手にしたカードをどう使うかは、ドネルクさんと王様と宰相さんで上手く考えるだろう。

私の提案にドネルクさんが頷く。

「東部のハリエット領に支部を置くことが出来たのだから、南部にももう1つ支部を置くことは出来るだろう」

「・・・出張所ではなく支部ですか。―――んん? 現地に近い場所で買い取ってしまえば無駄をなくせそうなものなのに、もしや、今まで冒険者ギルドは支部を持っていなかったのですか?」

言い回しに違和感を感じて憶測をぶつけてみれば、ドネルクさんは渋い表情で頷いた。

王国1国に冒険者ギルドが王都の1ヶ所にしかなかったってこと?

それ、おかしくない?

「ロンドベールが魔獣素材の流通を独占するためだ」

「・・・窓口が1つしか無ければ利益を獲り零さないと?」

ドネルクさんの答えに驚いた。

理屈は分かるけど、それをやっていたのが公爵家?

「ああ。俺もギルドに籍を移してから知ったんだが、冒険者登録も素材の買い取りも仕事の依頼も、王都の冒険者ギルドまで足を運ぶ必要が有ったらしくてな。冒険者側からも依頼者側からも、不便だとの不満は以前から出ていたそうだ」

「・・・私欲で王国の足を引っ張っていたのですか? よく今まで放置していましたね」

呆れて物が言えない。

公爵家1つで利権を独占していたのなら、賄賂を送ってでも恩恵のお零れに預かろうとする有象無象が群がっていただろうことは簡単に予測が付く。

ドネルクさんちやバルトロイさんちと同じ公爵家なのに、こうも在り方が違うとは。

足下でそんな汚職を横行させるなんて、王宮って何やってたの!?

役に立たないなら王宮こそ解体しちゃった方が良いんじゃない!?

そこで、王城へ着いたときテレサにニヤケ顔を見せつけに来ていた貴族連中の顔を思い出した。

アイツらだものなあ・・・。

「魔獣素材流通を握る“中立派”に国外輸出を握る“融和派”と結託されてはな。連中が手を結べば国内貴族の3分の2だぞ」

「・・・王家に最も近い公爵家がそれでは、カレリーヌ様がお怒りになるわけですよ」

「全くな」

今にも出家してお坊さんにでもなってしまいそうな達観の表情で、ドネルクさんが同意する。

すでに状況を耳にしていたのか、エゼリアさんも瞳孔が開ききった達観の表情で虚空を見上げている。

騎士団を辞したドネルクさんが王都で大変な思いをしていただろうことも察してしまった。

頑張れ! ドネルクさん!

負けるな! エゼリアさん!

賄賂で機能するガバガバスカスカの腐敗組織を立て直すなんて無茶振りどころではない無理難題だっただろうから、恐らく、解体的組織再建―――、事実上の新組織立ち上げになったんじゃないかな。

私だったらバッサリと旧組織を切り棄てて新組織を立ち上げるもの。