軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

生態系の覇者 ㊲

ルナリアとお母様に出会うまで私は知らなかったことなんだけど、人間というものは何かに抱き付いていると安心するものらしい。

足下に地面がない上空というものは、結構、不安感を覚えるもので、自分が下になってブラ下がるよりも上に乗っかっている方が安心度は高い。

そんなわけで背負い直したノーアを背中に固定し直して渡河地点へ戻れば、出来上がったばかりの防御壁の歩廊でお母様たちが待ち構えていた。

ルナリアの姿が見えないけど、お母様があんなところにいるってことは、どうやら戦闘状況は終わってるっぽいね。

お母様の目の前へ着陸しても良かったんだけど、今はお土産の焼き鳥を持ってるから手を振るだけに留めて、高度を下げて歩廊を飛び越えた地上へと着陸する。

ダンジョンの大穴の周りに積み上がった蜻蛉の死骸と並べて焼き鳥を下ろしていると、お母様たちが歩廊から駆け下りてきた。

「フィオレ! ノーア!」

「・・・ただいま。お母様」

ぐりぐりされながら固定を解いてノーアを地面に下ろしてあげる。

ぐりぐりで終わるのかと思えばギュッと抱きしめられた。

「よくやった。フィオレ」

「・・・うん」

全身で感じるお母様の温もりにピリピリと尖っていた神経が落ち着いてくる。

私を放したお母様は膝を突いてノーアもギュッと抱きしめる。

「心配したぞ。ノーア」

「にゃ」

かなり本気で心配していたのだろうことは、後始末を丸ごと他人任せにして待ち構えていたことからも分かる。

腕の中にある温もりを確かめてお母様の表情が和らいだ。

怖い思いをしたノーアもようやく安心できた様子で、尻尾の先っぽが機嫌良さそうに揺れている。

ノーアの生存を確認したことで一安心した様子のお母様は、ノーアを回れ右させて真剣な目で上着の背中にできた破れの中を覗き込む。

この切り換えの早さもお母様だよね。

「怪我は無さそうか?」

「・・・簡単には確認したけど、目立った怪我は無さそうだったよ」

ノーアが上手く避けていたから、ガルダの爪に服を引っ掛けられたのは偶然だったんじゃないかな。

あと数ミリメートルでも外れていればノーアが攫われることは無かったのだろうし、そこは運が悪かったのだろう。

あれ? いや、逆かな?

幸運にもギリギリ数ミリメートルの誤差で怪我を負わずに済んだのかも。

腰を屈めたトリアさんがノーアと目線の高さを合わせる。

「ノーア様。着替えましょうか」

「にゃ」

頷いたノーアをお母様に代わってトリアさんが抱き上げる。

お母様が向けた視線に小さく頷き返していたから、着替えさせるついでに怪我の有無を確認するのだろう。

いつまでも大きく破れてしまっている服を着ていては風邪を引いてしまうしね。

私も尿意がぶり返す前におトイレへ行きたいけど、状況確認と情報交換の方が優先度が高い。

ノーアを抱いたトリアさんの背中を見送って、お母様と改めて向き合う。

「・・・こっちの状況は?」

「ラクネもドラゴンフライもガルダも片付いたぞ。ピーシーズが魔力の手を習得していたお陰でこちらの攻撃もガルダに届いた」

お母様が向けた視線の先には数羽のガルダが吊されている。

対空戦闘はピーシーズが担当したらしい。

あっちのガルダはナンナちゃんが発見して警告を発した方の個体かな。

何にせよ、魔力の手を覚えさせておいて良かった。

「・・・そっか。―――、被害は?」

「軽傷が十数名だ。警戒を解かずにいて正解だった」

今回も大怪我を負う人が出ずに済んだか。

イディアさんの警告が早かったお陰だろう。

ラクネもガルダも奇襲性が高い。

それでも被害を抑えられたのは発見が早かったからだ。

早期警戒の重要性を噛みしめる。

私の意識は蜻蛉だけに向いていたけど、お母様たちは蜻蛉以外への警戒を続けることも忘れていなかった。

これは視野の違いかな。

私の経験の無さが如実に出たのだろう。

「・・・ルナリアは?」

「最後までやり遂げたぞ。お前に言われた通り、ドラゴンフライが討伐されるまでゴーレムを維持して、ガルダの掃討にも参加していた」

「・・・やるなあ。ルナリア」

そっか。やってくれたか。

ルナリアなら出来ると信じては居たけど、かなりの無茶振りをしたと思うしね。

ノーアが攫われたことで緊急性が高かったとはいえ、いきなり無理に押し付けた仕事を完遂した上で、他の支援にも回っていたなんて大活躍じゃん。

感心している私にお母様が表情を厳しくする。