軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

生態系の覇者 ㊱

必要とされるのは、曲がりくねった 峠道の急カーブ(ワインディング) を速度超過のまま曲がりきる曲芸のような軌道!!

どうする!! どうすれば、そんなことができる!?

14本の魔力の手を「足」にしている私には文字通り打つ手がない!!

なんか、ついさっきも同じようなことが有った気がするなあ!!

「手」が足りなきゃ「足」を出せば良いじゃない!!

追い込まれた状況がそれを可能にする!!

やれる!! 自分を信じろ!!

実戦証明(コンバットプルーフ) された技術こそが信じるに値する!!

「・・・うおおおおおおっ!!」

思い切り体ごと車輪を寝かせれば、慣性という怪物がとんでもない力で私を外側へ引っ張ろうとする!!

慣性の力に負ければ距離となって私に跳ね返ってくる!!

失敗の代価はノーアの命だ!!

そんなこと絶対に受け入れられない!!

どんなことをしても曲がりきる!!

接地面の「足」が大地に指を食い込ませて横滑りする!!

バリバリと眼下の木々を薙ぎ倒しながら5つの引っ掻き痕を刻む「足」がグリップを失えば、横倒しになって車輪は転倒する!!

ダメか!? いいや、ダメじゃない!! 私ならやれる!!

「・・・かめっ!!」

呪いの言葉に応えて内輪側に生まれた新たな接地面は、横滑りする「足」と同様に大地を噛む!!

車輪とは別に増えた「手」が木々を薙ぎ倒して地上に爪痕を刻み、側面で支え棒の役目を果たすことで転倒を防ぐ!!

これが伝説の2点ドリフトだ!! たぶん、そう!!

4点ドリフトだったらイニシャル入りの豆腐をガルダに投げ付けるところだけど、幸いなことに接地面は2つしかない!!

右に増えたのなら、当然、左にも「手」は増えている!!

「オエエエエエエエエッ!?」

一気に追い付いてきた私の姿に慌てたガルダが、右へ左へ曲がりくねった軌道で逃げる!!

手が届きそうなほどの距離でピッタリと背後に貼り付いて離れない私と、必死に羽ばたくガルダ!!

ダンスを踊るようなランデブーは唐突に終わりを告げる!!

「にゃああああああああああああっ!!」

「オエエエエエエエエエエエエっ!!」

急旋回に次ぐ急旋回で、荷重に耐えきれなくなったノーアの衣服が破れた!!

そのまま離脱を図るガルダを無視して、高空へその身一つで放り出されたノーアを追う!!

「ノーアああああああああああああああああっ!!」

「ねえさまあああああああああああああああっ!!」

「足」を縮めて急制動を掛けつつ落下速度に合わせて高度を下げる!!

必死に伸ばし合った手が手を掴まえる!!

思い切り引き寄せて腕の中へ小さな体を抱き留める!!

ヨシ! 取り戻した!!

「ねえさまっ! ねえさまあああっ!!」

「・・・もう大丈夫! 大丈夫だよ!!」

何が有ってもノーアを落っことさないように、魔力の手でノーアと私の体をガッチリと固定する。

ふぅ・・・。これで一安心だ。

私の胸にしがみついて珍しく大声で泣くノーアの背中をポンポンと撫でながら、飛び去っていくガルダの後ろ姿を睨み据える。

煮えくりかえるような私の怒りは、これっぽちも収まっては居ない。

逃がすと思ってんのかゲロバードが!!

「・・・よくもノーアを泣かせたな!!」

翼を羽ばたかせて飛ぶ鳥類が出せても速度はたかが時速数十キロメートル。

レース用の種は別として、必死に飛ぶ鳩の速度が60キロメートルちょっとだっけな。

1分間で1キロメートルしか逃げられない。

今の私の射程距離は4キロメートルを優に超える。

本当に制御が怪しくなるギリギリの目一杯まで伸ばせば、6キロメートル程度は超えるんじゃないかな。

しかも、ここは高度数十メートルで、地上よりも遙かに見通しが利く。

魔力制御というものは、目視できるかどうかによって難易度が変わるんだよ。

地上で6キロメートル先を目視するのは難しいけど、上空から俯瞰できるなら射程を伸ばすことは容易い。

そして、伸ばす魔力の手の速度は鳥なんかよりも、もっと速い。

物質を透過する性質から空気の抵抗すら受けない可能性が高い魔力という存在は、音速どころか光速に及ぶ速度を出せる可能性さえ持っている。

負け惜しみのように嘔吐しそうな声で鳴きながら逃げて行く鳥を単純に追い抜くぐらい、わけはない。

ムカムカと煮え立つ怒りに応えるように、私の胸の中で魔力が騒ぐ。

そっか。手伝ってくれるんだね。

私が滅多に使わない術式だから大きな魔力の流動に精霊も興奮してるんだろう。

「・・・“蒼焔”」

逃げ去るガルダをとうに追い越して遙か彼方まで伸ばした「手」の中に、天文学的な超重量を内包する「核」が生まれる。

私の怒りまで引き寄せて押し潰す超重力が、水素っぽいナニカを引き寄せて圧力を増す。

威力を抑えるために小規模にしたとはいえ、怒りに任せて押し込んだ魔力が青白く光る炎の塊を生み出すまでの時間はほんの数秒間だった。

誕生したばかりの疑似太陽は日の出のように下半分を森の木々の合間に埋もれさせていて、濛々と青白い煙を量産している。

とばっちりを食らった森の木々には悪いけど、こうしないと木々の合間に逃げ込まれちゃうし。

今は炎上していてもすぐに火は消えるんだし、どうせ明日には新芽を出すぐらいに“魔の森”の木々は強くて逞しいからね。

恨むなら、あなたたちの下へ逃げ込もうとしたガルダを恨むと良いよ。

私を恨むって言うなら全部伐り倒して更地にするけど。

ガルダを利するもの全てを灼き尽くす気でいるぐらい、私は頭に来ている。

突如として行く手を遮ったもう一つの太陽に慌てて、ガルダが針路を変えようとする。

「・・・ほーら。見てごらん? ノーアを怖くさせた悪い鳥は焼き鳥になるからね」

「にゃ・・・」

ノーアの頭を撫でながら光源を指し示す。

洟を啜っているノーアが目を向けた瞬間、地上にめり込んだ太陽が膨張して巨大な火球になった。

閃光が明暗を反転させたような視覚的錯覚を起こさせ、眩しさに目を背ける。

レティアの町にまで聞こえるんじゃないかと思うほどの轟音を響かせて炎が炸裂した。

魔力の手で何重にも防御術式を展開しているから、爆風も衝撃波も私たちには届かない。

全方位に向けて拡散する爆炎に呑まれて炎上したガルダは、私たちの方に向かって流星のように飛んで来る。

葬らん(ホームラン) !!

いや、ゲロバードだからなあ。

「・・・AA略!!」

決まった!!

ドヤ顔でキメた私の勝利宣言はノーアには意味が伝わらなかっただろうけど、ノーアを泣かせた悪い鳥が成敗されたことだけは分かってくれたみたい。

私にしがみつくノーアの体から少しだけ力が抜けたことを感じ取りながら、墜落していく黒焦げのホームランボールを伸ばした魔力の手でキャッチした。