軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

生態系の覇者 ㉙

「・・・これで勝つる!!」

既存の12本の「手」は押し込み作業に使っているだけだから私の意識には余裕が有る!

余裕が有るなら別のことが出来る!

「・・・私が受け止めてるから、どんどん作って!」

「あっ! うん!」

私の「手」が魔力浸透を遮る防御壁になっているから、「手」の上の土がダンジョンの影響を受けることはない!

ルナリアも掌握の維持から解放されてモコモコに集中できる!

私は私で、ルナリアの掌握から漏れた土を探すまでもなく、全ての土は私の「手」の上に有る!

私の魔力の内側でルナリアのコピペが加速する!

ルナリアの複製速度が爆速に引き上がり、ルナリアの制御下を離れた土は私の魔力の内側に有る!

内側と外側の両方から掌握された土は体積を2倍に増やし、瞬きよりも速い速度で4倍8倍とネズミ算式に増殖する!

宙に浮いたまま急激に膨張し始めた土の塊に包囲陣から響めきが上がる!

「・・・復活せよ!! 来たれ“獰猛くん”!!」

勝利の予感に気分が盛り上がっていて、何となく、その場のノリで叫んだけど、破壊処分を免れた“獰猛くん1号”は死んでないからね!

今もレティアの町の北門で通行人の目を集める名物として鎮座していることだろう!

脈動するように波打つ土の塊は直径20メートルを超える巨大な球状にまで成長し、私の叫びに応えるように、内側から殻を突き破るかのごとく2本の腕と2本の足をズボボボッと突き出した!

その身長は30メートル以上!

靄が掛かったような不定形ながらデフォルメされた人型は、魔力の「手のひら」の上から初めの第一歩を踏み出そうと右足を上げた!

宙に浮いた右足は急激に収縮し、カメラのピントが合うように輪郭を明確にする!

パキパキと硬い音を響き渡らせて、収縮するごとに硬度は増していく!

ズシン! と空気を振動させて右足が大地を踏んだときには、コンニャク板に似た体全体が密度を増して身長が少し縮んでいる!

「・・・往け!! “獰猛くん2号”!!」

効果音を付けられるものなら、「ガオ―――ンッ!!」とでも吼えさせたいところだけど、胸の上あたりに刻まれたつぶらな瞳と牙を剥いた口は 彫刻(レリーフ) に過ぎないのが残念だ!

“獰猛くん2号”は“1号”の半分ぐらいしか身長がない!

それでも20メートルを大きく超える高さともなれば、首が痛くなるほどの角度で見上げる必要が有る!

「「「「「うおおおおおおおおおおおっ!!」」」」」

威嚇するように両腕を振り上げてガッツポーズを取れば、ポカーンと呆気に取られて見上げていた新人さんたちが正気に戻った!

大歓声を受けて爆誕した“2号”が決戦の地―――、地面の穴に向けて、ズシン! ズシン! と歩き始める!

「・・・もう土はいいよ。ありがと」

「う~ん?」

大役を果たしてくれたルナリアにお礼を伝えると、返事なのか何なのかハッキリしない反応が返ってきた。

「・・・ん? どうかした?」

「やっぱり頭はないのね」

「・・・だから、頭なんて飾りなんだってば」

陽キャを見れば分かるじゃん。

空っぽだよ? たぶん。

ともあれ、準備万端。これで魔獣を押し込んでおく必要は無くなった!

悪意ある解釈?

HAHAHA! 純然たる観測結果だよ!

客観的な科学的見地に善悪なんて概念は存在しない!

「・・・ヨシ! 殺るよ!」

「うん!」

お母様たちのところへ避難してくれていて構わないのにルナリアは動かない!

返事をしたってことは、私の傍に居てくれるつもりなんだろう!

胸の中が暖かくなるような心強さを感じつつ、魔獣の頭を押さえ込んでいた「手」を緩める!

邪魔する力が弱まったとみれば、ここぞとばかりに勢いが増す!

「・・・おおおっ!? すごいパワー!!」

緩めただけで、魔力の手を消したわけじゃないのに押し上げられる!

慌てて再び押さえようとするけど、たかが十数メートルの距離は押し切られる方が早かった!

でも、もう遅い!

穴の出口では相撲取りのように低く腰を落とした“2号”が待ち構えている!

魔力の手による制止を振り切った超・超巨大蜻蛉が残った縁の残骸を突き破って地表に顔を出す!

穴の上に覆い被さるようにして待ち構えていた“2号”が、ドゴン! とお腹にタックルを食らって両足が浮き上がる!

なんて強さの体当たり!

「・・・何それ!? 強すぎでしょ!!」

「ギチギチギチギチッ!!」

“獰猛くん2号”のブロックを突破出来なかった超・超巨大蜻蛉が悔しそうに歯ぎしりをする!

いや! これって、ゴッツい顎で噛み付かれてる音!?

しかし、そこは数百トン単位の重量を持つであろう“獰猛くん”だ!

超重量の自重で蜻蛉の頭を押し戻して、ズズン! と両足で着地する!

鋭く硬そうなギザギザの顎で抱え込まれた“2号”のお腹をゴリゴリと噛み砕こうとしているけど、パラパラと僅かな破片が剥落しただけで“2号”はビクともしない!

何より、土をギュッと固めて作られた巨大な操り人形に過ぎない“2号”は、噛み付かれたところで痛覚なんて持っていない!