作品タイトル不明
生態系の覇者 ㉑
「うええ~。また土の生成?」
ぐで~っと寄り掛かっていたお母様の決断にルナリアが眉尻を下げる。
へろへろになるほど続けたモコモコ作業のお代わりだからね。
ルナリアも必要性は理解しているけど愚痴を零したくなったのだろう。
うんうん。気持ちは分かるよ。
「何だ。不満か?」
「やるわ!」
お母様に首を傾げて問われればルナリアも即答する。
この切り換えの早さも、めげない諦めないルナリアの美点だね。
ぐりぐりして貰ったルナリアが復活したのを確認してお母様が腰を上げる。
「行くぞ」
「「はい!」」
建てると決めたのなら即行動。
ピリピリと肌を刺すような覇気を全身から発散しているお母様がノシノシと歩き、お母様の背中をルナリアと私が追う。
「エレーナ! ノイエラ! イディア!」
「「「はっ!」」」
お母様に呼ばれたエレーナさんたちが集まって来る。
お母様が戦闘態勢に入った気配を察したのか、エゼリアさんたちまで集まってきて、エゼリアさんとアンリカさんが集まって来るなら、当然のようにドネルクさんとバルトロイさんも集まってくる。
お母様が発する空気が変わったことを察知したのか、ミセラさんたちもスススと集まってきた。
「小隊長も集めますか?」
「・・・うん。ジアンさんとエターナさんも呼んでくれるかな」
「承知しました」
伝令はミセラさんたちに任せて想定される作業分担を考える。
私たち建設組は建設作業に集中するとして、建設するには、先ず、邪魔になる木々を撤去しなくちゃいけない。
短期決戦で終わらせるなら、建設組に補充が欲しいな。
呼集されたのは指揮官クラス全員だ。
「砦の建設を行う。これは決定事項だ」
名目上の総大将ルナリアに代わってお母様が号令を発し、傍に付いているルナリアが頷いて追認する。
決定事項―――、命令となれば議論の余地はない。
全員が軍人なのだから、司令官が決断すれば全員が命令に従う。
「想定規模はどうされますか?」
「レティア砦だ」
「了解しました」
挙手で問うたエレーナさんにお母様が簡潔に答える。
レティア砦―――、ウォーレス家の本拠地である領主館と具体例を示されれば、この場にいる誰もが認識を共有できる。
お母様たち9人にドネルクさんとバルトロイさんを足して11人。
ピーシーズにジアンさんとエターナさんを加えて7人。
アスクレーくんの護衛をしてくれていたエングさんたち3人を加えれば21人にもなる。
お母様が直接呼んだのはエレーナさんたち3人だから、お母様が出してくれる建設組はエレーナさんたちだけだろう。
魔力の手を使えるピーシーズを建設組に引き抜いたとして、ルナリアと私を足せば10人だ。
8人を引き抜かれた指揮官クラスは戦闘経験豊富な大人たちばかりの13人。
お母様とドネルクさんとバルトロイさんは最終防衛ラインとして横に退けたとして、残りの10人で新人さんたち80人を指揮する。
割り振りとしてはイケるよね?
「・・・ジアンさん。エターナさん。ピーシーズには森を拓く手伝いをして貰うから新人さんたちの指揮をお願い。お母様の指示に従って」
「お任せを」
戦士の顔になったジアンさんとエターナさんが頷く。
戦闘の可能性を考えればノーアを背負わせたままは拙いな。
「・・・ノーアはこっちにおいで」
「にゃ」
背負子からピョンと自分で飛び降りたノーアが駆け寄ってきてルナリアに捕獲された。
「ピーシーズはこっちを手伝って」
「「「「「はっ!!」」」」」
エレーナさんたちとピーシーズが私の方へ寄れば、グループ分けは完了する。
「残りは警戒監視だ。不測の事態も有り得る。気を抜くな」
「やれやれ。退屈せんな」
お母様の注意喚起に口ではボヤいていても、ドネルクさんもまた戦士の顔になっている。
警戒監視組と分かれて建設組は早速作業に取り掛かる。
ナーガ川の監視と地下の監視を両立しようとすれば、建設位置は必然的に絞られる。
防御壁から10メートルほど空地を開けた位置から、最低でも100メートル四方は更地にする必要がある。
以前は風ジェットカッターで木を伐ってから移動させていたけど、ピーシーズが魔力の手を用いた重量物の運搬が出来るようになった今、いちいち伐り倒さなくても木々の撤去は可能だからね。
エレーナさんたちに土魔法で地面を緩めて貰って魔力の手で巨木を引っこ抜けば良い。
ネイアさんは風ジェットカッター魔法の訓練にならないから残念そうにしているけど、訓練はレティアに戻ってからすれば良い。
魔力の手で持ち上げられた巨木が宙に浮いて、歩いて行くピーシーズと同じ速度で予定地外へ移動して行く不思議な光景が繰り広げられる。
建設予定地の空地は瞬く間に広がっていき、退けられた木々が予定地外に積み上げられて行く。
ほぼほぼ必要な更地が確保できたと考えたときに、それは起こった。
目が良いナンナちゃんが珍しく大声で警告を発する。
「地面に亀裂!」
「・・・えっ!?」
まだ建物を載せていないどころか、それ自体も重量物な木々を退けたのに、もう地面に影響が出てるの!?
急いで「足」を地中に潜らせて、例の地下空間の様子を探る。
「一旦、退避しなさい! 木の運搬は後で良いわ!」
「はい!」
たまたま亀裂から近い位置を歩いていたオーリアちゃんが、ポイッと巨木を放っぽり出してアスリート走法で逃げてくる。
地下空間を探ろうと伸ばした「足」が明確な魔力に触れた。
慌ててアクティブソナーに切り替えれば、今までに触れた記憶のない魔力の反応が地中深くから迫り上がってくるところだった。
「・・・なにコレ。魔獣・・・!?」
反応は複数。
結構強い反応が靄に包まれたような魔力の中から湧き出してくる。