軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

男の子って

「ところで俺たちの方なんだが」

レオンが気がかりそうに髪をかきあげた。

「まあ、夜にまとめて話そうとは思ってたんだが、マジでやばい状態だぜ」

「そんなに?」

「ああ。スライムやトカゲだけならいいが、草原にちらほらハネオオトカゲが見えたんだ。深森で草原にいるのは普通のことさ。けど、平原には本来スライムもトカゲもほとんどいないはずだ」

「魔物に対して何の対処も知らない子どもがうっかり草原に出てしまったら、おそらくスライムに引っかかってしまうくらいにはスライムもいたな」

ファルコも同意した。

「あいつらはそれこそ年少組が毎日ちょこちょこやっつけて一定の数を保っているのであって、ハンターが一日頑張ってやっつけても、数日たてば元通りだからなあ」

スライムはだから厄介なのだ。

「これがこの町だけならいいけどな。平原全体がこうなら俺たちだけではどうにもできないぞ」

なんだか面倒なことになってきた。

「とりあえず、下に行って皆を待つか」

レオンのその言葉で、みんな立ち上がった。

下には既にリクやサイラスがさっぱりした顔をして待っていたし、そのころには導師も教会から戻ってきて、まずは食事をということになった。

ファルコはショウに頷くと、自分はサイラスの前の席に着いた。レオンもファルコと一緒にそちらに行った。一方でリクはサイラスに一言言われて、跳ねるように立ち上がるとショウたちのほうにやってきた。

「なあ、俺たちだけで話したいこともあるだろうからって、行って来いってさ」

「本当にあの人たちは事情を聞こうとしないよね」

ショウはあきれたように肩をすくめた。

「ショウのとこもか。俺もサイラスには最初の頃以外ほとんど聞かれたことはなかったよ。でもな、他の人にはけっこう聞かれたぜ」

「深森はだれも詮索はしなかったなあ。むしろ聞いてほしいと思ってたんだけどね」

そんな気軽な話をした後は、三人の間には沈黙が落ちた。

三人目がどうしているかなと思うことはあっても、苦労していなければ問題ないと思っていたショウは、実際は会えるとさえ思っていなくて、こうしていざ顔を合わせてみても、案外しゃべることはなかったのだ。

それはどうやらハルもリクも同じだったようだ。

なんとなく気まずい雰囲気だったが、食事をしながら、結局リクが口を開いた。

「あの、さ。俺。こっちに来てからずっと気になってたんだけど」

ショウとハルはなんだというようにリクに顔を向けた。

「俺たちと一緒だった人たち、つまり電車に乗ってた人たちの魂ってさ、どうなったと思う?」

やっぱり気になっていたのだなとショウは頷いた。

「私も気になって、導師に聞いてみたことがあるの。ほら、深森は狩人の国でしょ? 世話人のファルコにまず最初に渡されたのがスライムを狩る短剣だからさ」

「ええ? 女の子に短剣って。まあいいや。それで?」

「うん。女神は魂を自分の世界の魂の原料にするって言ってた。もしも、魔物にも地球の人の魂が使われているのなら、私は倒したくないって思ったんだ」

「そうだよな」

リクもスライムを狩る。トカゲも狩る。だって酸を吐くんだ。それにトカゲだってほっといたら人を弱らせるって聞いた。それなら、大切なのは周りの皆の方だ。何かを殺すのは嫌だけれど、大切な人を守るためならやるべきことはやる、そう思っていたからだ。

でも、その命はもしかして、自分の元の仲間ではないかという思いを捨てきれなかったのだ。

「導師はね、魔物には魂はないと言ってたの。魂は体温のある、人や森の獣なんかに宿るのだと。魔物は動く資源のようなものだって。だから、魔物を狩っても、魂を狩ったことにはならないってわかってから、すごく気が楽になったんだよ」

リクはほっとして力が抜けた。

「ありがとう。俺、サイラス以外に事情は聞かれても話していないから、魂のことなんて誰にも聞けなくてさ」

本当は地球に残っている家族はどうなったのかも気になっていたけれども、お互いに聞いても意味がないということはわかっていた。

「結局、なんとかこっちになじんで暮らしてるから、これと言って特に話すこともない感じだなあ」

「うん。あ、そうそう。リク、女神に願った三つの願いのうち、リクは確か農業に役立つ力をって言ってた気がするんだけど。それってどんな力だった?」

「ああ、それな。うーん」

ショウの質問にリクは腕を組んでうなった。

「すごく言いにくいというか、微妙というか」

そのころには食事も終わっていて、ロビンも戻ってきていたのだが、リクが答えあぐねている間に、町長がやってきて、結局話が聞けないまま終わってしまった。

「導師、皆さん、一日中仕事をしてもらったうえで申し訳ない。宿の一部屋を治療のため空けてもらっているので、そこでスライムの怪我の治療をお願いしてもいいだろうか」

「大丈夫だ。後学のために、治癒師に薬師、全員連れて行きたいが大丈夫か」

「広い部屋にしてもらっているから人数は大丈夫だが、女性もいるので、それは本人に聞いてみないと」

「ではその人たちは個別にだな。まずは人に見られても大丈夫な者から優先していこう」

導師の合図に、ショウとハル、それに導師と一日一緒にいたナイジェルが席を立った。

ショウは情けなさに思わず天を仰いだ。天井が見えるだけだったが。そして静かに

「ロビン?」

と呼んだ。

「俺もか?」

「薬師もって、たった今導師が言ってたよね? この町にロビン以外の薬師が誰かいるの?」

「わかったよ」

ロビンが渋々と立ち上がった。ショウは切ない目でハルを見た。

ハルはくすくす笑いながら、リクのほうを向いた。

「リク」

「え、俺?」

「治癒師の勉強もしているんでしょ。今導師は、スライムの酸の痕が残っている人の治療をしようとしているところなの。カナンの町には、そんな怪我人はいないの?」

「いる。最近増えてきて……。わかった。俺も行かせてくれ」

それでいいというようにハルは頷いた。

「俺だってそんな風に優しく言ってもらったらわかるのにな」

「ロビン?」

「なんでもない」

まったくわかっていない薬師にショウはぐるぐると目を回すと、さっさと二階に上がっていった。