軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

旅は続く

そうして旅は続いていく。町に泊まる時は狩りはしないので、少し長く馬車を走らせる。馬車も預けられる宿を取ると、

「また俺が導師と一緒か」

とレオンがぼやく。導師もまじめな顔をして、

「弟子たちは寝る間も惜しんで私の話を聞きたがるから、普段は私と同じ部屋になりたい若者であふれんばかりだぞ、レオン。お前には向上心が足りぬ」

という。

「だってよ、俺治癒師じゃねえし」

「実のところ私だってショウと一緒の部屋がいいのに、レオンで我慢しているのだ」

「俺もだよ」

それなら一人部屋でいいだろうに、言い合いながら同じ部屋を取る二人はけっこう仲がいいのだった。

深森のこのあたりは北の町とも近いから、治癒師は定期的に北の森に研修に来ており、治癒の技は最高レベルだ。導師は念のために教会は訪れるが、十分うまく回っていた。

一方、狩人たちはギルドに獲物を持ち込み、毎日の狩りを清算する。魔石に比べたら大したことはなくても、ショウが肉を無駄にすると嫌がるので持ってきた魔物の肉もそれなりの収入となる。並みの狩人ではかないもしない導師の護衛は正直なところ箔付け、つまりにぎやかしが主な仕事なので、こうして狩りもできてけっこういい収入になるのだった。

ショウも途中で取ったスライムなどの魔石を売りに行く。

「へえ、治癒師の見習いだろ、年少組にしてはすごい数を持ってきたな」

「そう、導師にくっついてきたんだけど、街道沿いにはけっこうたくさんいたからね。大漁だよ」

「旅人はわざわざ狩らないからな。ありがとよ。スライムの魔石はいくらあっても助かるからな」

「うん!」

そうして北の森にいた時のようにかなりのお金を稼ぐのだった。そして稼いだお金を持って、町のお菓子屋さんに走っていく。

「なあ、ショウ、いつも不思議に思ってたんだけどさ」

宿での夕食の時、レオンがショウに聞いた。

「お前、けっこうギルドに貯金してるだろ。なんでその金でおやつを買わないの。必ずその日稼いだ分でおやつを買ってるよな」

レオンはよく見ている。

「ん。一度貯金したお金は、ないものと思うの。ほしいものがあったら、貯金からじゃなくて稼いだお金から買うんだ」

「金を使うのに、どこから出しても同じだろ?」

「同じなんだけど、この考え方をしていると自然とお金がたまるんだよ」

ドレッドがほう、と言う顔をした。

「まあ、優秀な狩人ならたまるばかりかもしれないけど」

ショウが言うと、レオンは、

「でもなあ、夏に岩洞に行って、いい剣を見るとつい買っちゃったりして、けっこう使うなあ」

と頭をかいた。ファルコがぽつりと言った。

「レオンは女の子にも使うしな」

「いや、それはファルコだって同じだったろ」

「金をかけるだけで機嫌がいいなら、楽なもんだからな」

ゲスい。ショウは思わず冷たい目で二人を眺めた。ふと変わった雰囲気に二人がはっとすると、ショウの視線に気づいた。

「ち、ちがうんだ。これはお前の養い親になる前の話で、それにつまりレオンのことだし」

「いや、俺だけじゃないよねファルコ。それに独身の男ならばつまり自由恋愛と言うか、え、ショウ、待って!」

あわてて言い訳をする二人に、

「子どもはもう部屋に戻る時間だから。戻ってお菓子でも食べてるね」

とショウはにっこりして部屋に戻っていった。

「ああ、俺の印象が悪くなる……」

「レオンなんてもう下がりようがないだろ」

「だいたいお前が変なこと言いだすから」

もめる二人を見てライラがふっと皮肉に笑った。

「あんたも成長しないわねえ、ファルコ。そもそも子どもがいるところでそんな話題はご法度でしょ。それに女なら」

ちらりとファルコとレオンを見やる。

「昔の女の話は、どんなものでもいただけないわねえ」

二人はがくりと頭を落とした。

「まあ、話題が子ども向きじゃなかっただけで、ショウは別に怒ってもがっかりもしてなかったぞ。単におやつが食いたかっただけだろう」

ドレッドが冷静に指摘したが、その通りだった。ちなみに導師はそれを見て機嫌よく酒を飲んでいた。

大人なのにどうも抜けているレオンとファルコにやれやれと思いながら、ショウは部屋のベッドに今日の収穫を並べた。飴に、焼き菓子。小さいリンゴ。少し平原に近いこの地域では、珍しいバターのケーキが手に入ったのだ。

家畜を飼いすぎると、人の食べる穀物まで家畜に与えなくてはならない。その上、魔物を大量に集める可能性があってあまり畜産は盛んではない。

しかし、バターが最近手に入りやすくなってきたのだとお菓子屋のおばさんが言っていた。

それでも高いケーキを、ショウは奮発して買った。だってたくさん稼いだからね。

ショウはハルを迎えに行こうとは思ったけれど、正直少し戸惑ってもいたのだった。異郷の地で、大人に大事にしてもらえず3年間。ファルコに大事に大事にされてきたショウは、そのつらさを想像しようとしてもできなかったし、もし自分だったらと考えても、おそらく、地球での28年分の経験で何とか乗り切っただろうと思う。

だからハルが怪我をしていることはわかっても、何をしてあげたらよいのかはわからなかった。

ただし日本人なら、絶対喜ぶのは甘味だ。そう思って、自分も食べたいと思うものをいろいろ選んで集めている。

ガチャっとドアが開いた。ファルコだ。

「おやつを並べてるのか」

「うん。ハルの好きなものがあるといいなあって考えてた」

「そうだな。お前とおんなじなら、なんでも好きだろ」

「そうだといいな」

ショウはケーキを除いておやつをしまった。

「これ、この町で見つけた新しいケーキ。味見してみようよ」

「そうだな。俺が茶でもいれるか?」

ファルコの言葉ではっと思いだした。

「そうだ、お茶も買ったんだった。南の方のお茶なんだって」

「そうか、どこでもお茶はお茶だろ」

「違うんだよ、寒さとか、日差しとかで味が微妙に。試しに飲んでみよう」

そうやってワイワイいいながら食べる夜のおやつはよいものだ。おいしかったら明日のお昼にライラにも味見させてあげよう。きっと好きだと思うから。ショウは明日の馬車の旅を思った。