軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お土産を買って北の町に帰ろう

もうほとんど片づけて帰るというころになって、ショウとアルフィはお小遣いを握りしめて町に繰り出していた。年少組のみんなにお土産を買うためだ。ショウが女の子の、アルフィが男の子のお土産を担当することにしていた。

今回は治癒師としてちゃんと働いたので、後で報酬はしっかり出るはずだが、ショウとアルフィが持ってきたのは途中で狩ったスライムのお金だ。高価なものでないほうがいい。でもノールダムの町は、岩洞の隣だから細工物がたくさん売っている。ショウは女の子たちには、小さな石のついた髪飾りを買うつもりだった。みんなの目の色と髪の色を思い出しながら、一人ずつ選んでいく。

と、きれいな銀細工に、緑石がはまっている髪飾りがあった。ショウが手を伸ばすと、アルフィの手とぶつかった。あれ? アルフィが照れくさそうに鼻の下をこすった。二人で声をそろえる。

「「アウラに」」

だよね。そうか、アルフィはアウラに特別に渡したいんだね。カインはそうかなと思っていたけれど、アルフィもそうなんだ。

「いや、カインは違うと思うけど」

またまた。ライバルだね。アウラはきれいだからなあ、とショウは思うのだった。とりあえず、その髪飾りは譲って、ショウはまた別のデザインの物を買った。思い切って、赤いのなんてどうだろう。アウラの顔を思い出して考えてみる。うん。くっきりしたアウラのりんかくに似合うかも。これを買おう。

「まいどー。小さい治癒師さん。よければ俺の体も見てくれないか?」

ショウもアルフィもちゃんと黄帯もしめている。

「いいよ、おじさん、手を出して?」

「はいよ」

「はい、うーん。体に悪いところはないけど、座り過ぎだから腰が弱ってるよ。少し体を動かさないと」

「確かに最近腰がだるいんだよ」

「治癒はしたけれど、毎日ちゃんと動かさないとまただるくなっちゃう。少しは運動してね」

「わかったよ。噂にたがわず的確だなあ、おい」

そんな噂なら流れてもいい。ショウとアルフィは顔を合わせてふふっと笑った。

そんな2人をレオンとファルコが見つけた。

「へえ、お土産か、律儀だな、ショウとアルフィは」

「友だちへの土産は楽しいもんさ、選ぶのもあげるのもさ」

「そんなもんか」

そんな話をしながら近付くと、店のおやじがショウに話しかけている。

「治癒の礼に、好きな髪飾りを選ぶといいぜ。おまえさん、さっきから友だちの物ばかり選んでて、自分の物は選んでないだろう」

「おじさん、なんでわかるの?」

「だって一人一人思い浮かべながら選んでただろう」

「ふあ、すごい」

さすが商人だ。ショウは尊敬の目で見た。親父は照れてこう言った。

「いいから、選びな」

ショウは何を選ぶんだろう。ファルコはちょっと気になって後ろで見ていた。

「いいの」

ショウは断った。親父は不思議そうに聞いた。

「なんでだ?」

ショウはちょっと恥ずかしそうにしながら、

「あとでファルコに選んでもらうの」

と言った。ファルコは後ろでかちんと固まった。

ファルコに。ショウがそう言った。選んでもらうのって。俺に。ショウが。恥ずかしそうに。首をかしげて、かわいらしく。いや、そこまでしてないからと、ショウに心の声が聞こえたらそう言われただろうが。

「おお、お、親父、それ」

「ファルコ?」

「あんたがファルコか」

親父さんはニヤニヤしながら言った。

「それ、そこからそこまで、全部くれ」

「「は?」」

「だから、ここのところ全部。ショウはかわいいから、なんでも似合うからな。その黒髪に銀細工は何でも映えるんだ。全部似合うから、全部買う」

後ろでレオンが笑い転げている。どうだ? ファルコはショウを期待の目で見た。ショウは冷たい目で見返した。なんでだ?

「一つでいいの」

「なんで、どれでもいいんだ。なんなら店ごと買ってもいい」

「一つでいいの」

なんでだ? ショウのためなら何でも買うのに。

「毎日付けたいの。一つをもらって、大事に使いたいの。ファルコが一番似合うと思うものを、選んでほしいの」

たくさん買うほうが楽なのに。だめ?

ファルコはしぶしぶ店先を見た。銀の細工に、夕闇の空のようなあいいろの石に手を伸ばす。

「これ、どうだ」

「星迎えの日にファルコと歩いた時の、空の色だね」

そうだ。手をつないで歩いた日。

「いいのかい、ちょいと地味な色だが」

「きれいな色だよ。ファルコ、それを買ってくれる? がんばったご褒美に」

もちろんだ。

「つけて行くかい?」

「うん!」

落ち着いた色合いが、ショウにはよく似合う。ショウは髪飾りにしきりに手をやっている。

「ショウ、似合うぜ」

「レオン、ありがとう」

「きれいだよ」

「アルフィ、ありがとう」

にこにこしているショウに、ファルコがはっとして言った。

「その髪飾りに合う服と、靴と、新しいベルトと、それから」

「いらないよ……」

「そ、そうか……新しい剣は?」

「ますますいらないよ……」

笑っていたレオンがようやく止めた。

「やめろ、ファルコ。小さい子にそんなに物を買ってやったら甘やかしてダメにする」

「そんなものか」

「そうだ。さあ、アルフィ、ショウ、他に買い物はないのか?」

「「ない」」

「じゃあ、戻ろうか」

帰り間際に、小さい治癒師を自分の町にと言う申し出がずいぶんあったそうだ。一つは岩洞の町からも来たという。小さいショウを自分の町のコミュニティで育てることができれば、どんなに町に貢献してくれることか。自動的に黒狼も付いてくるのだし。しかしガイウスが片っぱしから断ってくれた。すでに北の町に属しているからと言って。

夏の狩りは終わった。さあ帰ろう。お土産を持って、みんなで北の町へ。