軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

96 おさとういれないの?

―――小豆だ!!

「小豆です。渋抜きしてから料理して食べますが、あまり調理法がなくてツリービーンズ領でも人気が無いんですよね。今年作付けをやめようかと言っているんです」

え? 小豆だよね? おもいっきりスイーツにむくんだよ?

「あじゅき、おしゃとういれて、にないの?」

「食事用だよ? スープに入れたりサラダにしたりして食べる。砂糖なんて入れたことないよ」

私にとって、『小豆』と言ったらお赤飯と餡子のお菓子。

私はマルクスさんたちとは逆で、砂糖を入れてお菓子用という認識だった。

「「アーシェラちゃん。お砂糖入れると美味しいの?」」

マリアおば様とメイヤさんが同時に聞いてきた。

「あい。おまめ。おしゃとうでにるとおいちいよ?」

「そうね。金時豆でアーシェがお砂糖入れてじっくり煮込んだ煮豆が甘くて美味しかったわね」

「ああ。あれな。あれは甘くて美味かった」

ローズ母様とリンクさんは商会の家で何度も食べている。

「そうなのか。私は食べたことがないな」

「ええ。商会の家で以前作ったものですから。簡単ですわよ。水で戻した豆を一度茹でて汁を捨てて、再度水と砂糖を入れて時間をかけてじっくりと煮るんです。甘くて美味しかったですわ」

うん。金時豆の煮豆はほっくりとして美味しいのだ。

うずら豆やとら豆も味が濃厚で美味しいし。

白ささげ豆もほっくり。

黒豆も奥深い旨味があって美味しい。

豆の種類で、煮豆の味が変わる。

前世ではいろんな豆を煮豆にして食べていた。

商会の家では金時豆がよく手に入ったので、そればかり使っていたのだ。

ツリービーンズ領に、いろんな種類の豆があると知れて嬉しい。

とら豆やうずら豆などは豆自体の味が美味しいので、煮豆にすると濃厚な旨味の煮豆になるのだ。

前世ではとら豆やうずら豆は、煮豆になった状態で売ってなかったので、よく産直で乾燥した豆を買って作ったものだ。

今度ツリービーンズ領から色んな種類の豆を仕入れてもらおう。

「そうなんですか……豆は食事としか認識していなかったし、どの豆も砂糖で煮たことはなかったですね」

「じっくりと煮て形が崩れるくらい柔らかくなると、とっても美味しいんです」

そう。スープやサラダに入る豆は、歯ごたえがある感じだけど煮豆は少し煮崩れるくらいが美味しい。

「まあ、なんだかとっても美味しそうね」

「乾燥した豆を一晩水戻ししてからでなくては出来ないので、今度お作りしますわ。おば様」

「ほう。楽しみだな」

ローズ母様の言葉に、マリアおば様とディークひいおじい様が嬉しそうに微笑んだ。

すると、マルクスさんが急に立ち上がって厨房に行くと、すぐに大きなボウルを持って戻ってきた。

「実は、食事用に水戻ししておいた金時豆があるんです!」

ツリービーンズ家では、毎日一度は豆を使った料理を食べるということだ。

今日の夕飯用にと、昨夜から水戻ししていたという、金時豆が大きなボウルに入っていた。

マルクスさんとメイヤさんが、目をキラキラさせて、ローズ母様を見ている。

もちろん、ローズ母様の答えは是だ。

「では、厨房をお借りしていいでしょうか?」

にっこりと笑って了承していた。

「ええ! ローズ様、お願いしますわ!」

メイヤさんが満面の笑顔で頷いた。

さっそくみんな隣の厨房に移動して、金時豆を鍋に入れ、火にかけた。

煮豆は時間がかかるけど、調理自体は簡単だ。

一度茹でてゆで汁を捨て、再度水を入れて、アクをとりつつ柔らかくなるまでじっくりと煮る。

しっかりと柔らかくなってから砂糖を入れ、塩を少し入れる。

煮詰まるまでに時間がかかるけれど、焦がさないようにかき混ぜる。それだけだ。

―――それじゃあ、私は。

「あじゅきも、にりゅ」

「どれ、おれがやる」

リンクさんが調理を買って出てくれた。

小豆をさっと洗って、そのまま鍋に入れて火にかける。

「水戻しはしなくていいのか?」

「ちいしゃいから、だいじょうぶ」

「たしかに小さいな」

金時豆と同じで一度煮た小豆をザルにとって汁を捨て、再度水を入れてアクを取りながら煮る。

「やわらかくにえたら、おしゃとういれて、にちゅめる」

「金時豆の時と一緒だな。仕上げに塩を少し入れるんだよな」

「あい」

塩を入れると甘さが引き立って美味しいのだ。

前世では、煮豆を作る時は圧力鍋で一気に煮て、後はレンジで煮詰めるという簡単な方法で作っていたけど、こっちの世界には圧力鍋もレンジも無い。シンプルにじっくりと煮て作る。そもそもこっちの方が当たり前の作り方なのだ。

前世では水飴やザラメ糖を入れて煮豆を作っていた。水飴は照りを出すし、ザラメ糖はゆっくり溶けるので煮豆や小豆を煮る時に最適だ。

だけど、どっちもまだこっちで見たことがないから砂糖だけで作る。それでもとっても美味しく出来るから問題ない。

「小豆、水分が無くなって、形が潰れてきたぞ」

「あい。しょのくらいで。できあがりでしゅ」

スプーンでちょっと味見をすると、ちゃんと粒あんになっていた。

私はザルで裏ごししたこしあんより、粒感が残った粒あんが好きなのだ。

「こっちも出来たわ」

「食べてみましょう。旦那様も呼んでくるわね」

少しすると、メイヤさんが旦那さんのマークシスさんを支えながら連れてきた。

マークシスさんはマルクスさんと同じ、銀髪に青い目をした年齢の割に若い印象のイケメンさんだ。

「バター餅を教えてくれてありがとう! こんなみっともない姿で挨拶することになって申し訳ない……」

腰に手をあてていて、とっても痛そうだ。

見かねたディークひいおじい様が『治癒』を施すと、少し楽になったようだ。治癒を重ね掛けすると治りが早くなるのだそうだ。

そういえば、去年ラスクを作った時に椅子から落ちて胸を打ち付けた時、ローディン叔父様とローズ母様が治癒を重ね掛けしてくれたのを思い出した。たしかに苦しさと痛みが急激に薄れていっていた。

ディークひいおじい様が『治癒』を施した後、まがっていた姿勢が少し真っすぐになっていた。

これが、重ね掛けの効果か。

「ありがとうございます。バーティア先生。痛みが取れるまで二日かかると言われましたが、これでだいぶ痛みが取れました」

そうなんだ。マークシスさんもディークひいおじい様の生徒だったんだ。

じゃあ、マークシスと同級生だと言ったメイヤさんもディークひいおじい様の生徒だったのだろう。

『礼には及ばん』と言っているひいおじい様、かっこいい。

「実は、お土産を持ってきていたのよ!」

マリアおば様が保存魔法をかけたバスケットを開けた。

中には、アメリカンドッグとフライドポテト。そしてケチャップとマスタードだ。

「「「なにこれ?」」」

親子そろって広げられたものを見ている。

「うふふ。このお料理はね。昨日アーシェラちゃんが作ったのよ。すっごく美味しかったから、料理人に作ってもらってきたのよ」

言いながらアメリカンドッグにケチャップを塗り、マスタードを付けて、ツリービーンズ親子三人に渡す。

その間に私たちも自分の分を用意する。

アメリカンドッグもフライドポテトもバーティア家別邸の料理人さん達が作ってくれた。

さすがはプロの料理人さん達だ。昨日初めて作ったのに、完璧な仕上がりだ。

保存魔法のおかげで熱々だ。

「いただきましゅ」

『いただきます』をみんなで言って、ぱくり。

ああ。やっぱり美味しい。

「「「美味しい!!」」」

「熱々でサクサクで美味い!」

「中に入っているのはソーセージね! 外側が甘くて、中がソーセージの旨味と塩気ですごく美味しいわ!!」

「この外にかかってるトマトケチャップっていう、ソース、すっごく美味い!!」

マークシスさんやメイヤさん、マルクスさんも、初めて揚げ物を食べたそうだ。

本当にこの国には今まで揚げ物なかったんだな、と再確認した。

三人とも、あっという間にアメリカンドッグを食べきった。

「美味しいでしょう! そっちのフライドポテトもおすすめよ!」

マリアおば様が満面の笑顔で勧めた。

「「「こっちも美味しい!!」」」

「なにこれ! 外側がカリッとして、中がホクホクしてるわ!」

手が止まらないフライドポテト。やっぱりあっという間になくなった。

「「『揚げる』という調理法。すごいな……」」

マークシスさんもマルクスさんも、もちろんメイヤさんも。オイルで揚げた美味しさに感動していた。

「うふふ。美味しいでしょう。アーシェラちゃんの作るものは、美味しいのよ」

「なんで母上がアーシェを自慢するんだ」

「いいじゃないの。アーシェラちゃんはうちの家族よ。可愛い子を自慢して何が悪いの」

当たり前だと言う、マリアおば様の言葉が嬉しい。

ツリービーンズ親子は、アメリカンドッグもフライドポテトも大絶賛していた。

うん。揚げ物美味しいよね。

―――さあ、次は金時豆の煮豆と小豆で作った粒あんの試食だ。