軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

58 魔法鞄と魔法のせんせい

たしかに。まさか超レア物の魔法鞄を手ずから作ってくれるとは思わなかった。

私もこの贈り物はとっても嬉しいけど、その裏にあった話にも、半端じゃなく驚いた。

「うふふ。確かに私もコレにはびっくりしましたが、皆さんお作りになられている時とっても楽しそうでしたよ」

笑いながら、カレン神官長が『では、使い方をお教えしますね』と続けた。

「ええと。これは私からのプレゼントで、アイスクリームです!」

そう言うと、音もなく、すうっとカレン神官長の手の上に少し大き目の箱が出てきた。

どっから出てきた?! とびっくりしていると。

「ふふふ。実は、私の 魔法鞄(マジックバッグ) から取り出したんですよ! どうぞ!!」

なんと。カレン神官長も 魔法鞄(マジックバッグ) を持っているのか。

「ありがとうごじゃいましゅ!」

「いろんな味のアイスのカップの詰め合わせです! これをこの 魔法鞄(マジックバッグ) の口に持って行ってください」

重い詰め合わせは持てないので、バッグの口をアイスの入った箱に持っていくと、しゅん、と音も無しにバッグの中に消えていった。

「はい。中に入りましたね。では逆に取り出してみましょう。バッグの口元に手を持って行って念じてください」

アイスクリーム! と念じたらアイスクリームの入った箱が出てきた。

「しゅごい!!」

魔法だ! こんな小さなバッグに、何倍もある大きな箱が出たり入ったりしている。

しかも8畳分も容量があるのだ。わくわくする!

「 魔法鞄(マジックバッグ) の中に入った物は、入れた時そのままです。アイスクリームは冷たいまま、熱いスープは熱いまま。劣化することもありませんし、物が中で混じることもありません。先ほどの登録で 魔法鞄(マジックバッグ) はアーシェラ様にしか使えません。誰かに盗られてもその者は使うことも出来ませんし、そもそも 魔法鞄(マジックバッグ) だと認識することも出来ません。ですが、うっかり置き忘れしたとかの場合、このペンダントが活きてきます」

にこにこ笑いながら、ペンダントを取り出して私の手にのせた。

『そのうっかりはお前だろう』と、額に手を当ててディークひいおじい様がため息をついている。

ねえ。カレン神官長、なにをしてディークひいおじい様をあきれさせたのかな?

「ま、まあ。私のうっかりはこの際忘れましょう! ええとですね。ペンダントトップと 魔法鞄(マジックバッグ) のチャームは連動しています。落とした場所まで案内してくれますし、普段は 魔法鞄(マジックバッグ) をこのペンダントトップに収納しておくことも出来るのですよ!」

それは便利だ! このバッグは可愛いから外につけて行きたいが、一目で高級品と分かる。

普段の『ちょっとそこまで』使いは出来ない代物だ。

でも 魔法鞄(マジックバッグ) は常に持っていたいと思っていたから、収納できる機能があるのは大歓迎だ。

「使い方は触れて念じるだけです。ペンダントは出来れば服の上ではなく身につけてください。そうすることで常に触れている状態になります。さあ、どうぞ」

ペンダントを首にかけて服の下に入れる。肌に直接触れるようにかけた後、 魔法鞄(マジックバッグ) を収納するように念じたら、音もなく手の中から消えた。

同時に金色のペンダントトップが、 魔法鞄(マジックバッグ) のチャームのプラチナに変わったのがわかった。

ペンダントをひっぱって取り出してみたら、思った通りにプラチナ色になっていた。

「これは本当に国宝級だな」

色が変わったペンダントを見て、ディークひいおじい様が感心して言う。

「ええ本当にレイチェル女官長はすごいですわ。―――実はですね。私の 魔法鞄(マジックバッグ) も、元になる核をレイチェル様にもらいました。魔力は私のを入れて作ったんです。ず~っと欲しかったんです~~!」

魔法鞄(マジックバッグ) は、大きな魔力を使うため、王宮ではなく、神殿で作られたのだそうだ。

王宮内で大きな魔力を使い続けるといつか誰かに気づかれるだろうとの懸念があった。

それならば、と神殿に毎日行く王妃様と女官長、公爵様方の習慣を利用して神殿の小部屋で魔力を日々込めていたのだそうだ。

神殿を使うとなれば、神官長へ話があるわけで。

「お前は……本当にちゃっかりしているな」

ディークひいおじい様が呆れると。

「違います!! いくら欲しくても、さすがにそこは私だってわきまえました。ですが!! 『こちらは容量が小さいから』と、レイチェル女官長が私の目の前で核を破壊しようとしていたので!! 『処分するくらいなら譲っていただきたい!!』と、土下座して頼み込んだんです」

だって、もったいないじゃないですか!! 目の前で国宝と同じくらい希少なものが壊されるところだったんですよ!! とカレン神官長は力説した。―――まあ確かにそれはもったいないと思うが。

「容量が小さい?」

ディークひいおじい様が問うと。

「こちらはですね。ええと、例えると、商会の家にあった冷蔵庫二つ分くらいの容量なんです。アーシェラちゃんの容量の大きいものを作る前の試作品だったそうなのですが、完璧に出来た核を廃棄するなんてもったいないですよね!! 絶対に絶対にレイチェル女官長のことは他言しませんと、拝み倒したのです!!」

カレン神官長は女神様に認められて神官長になった方だ。女神様以上の後ろ盾はないだろう。

『カレン神官長ならばいいでしょう』と廃棄しようとしていた核を、めでたくもらうことが出来たのだそうだ。

カレン神官長がとっても愛おしそうに頬ずりしているバッグは、大人の女性が持つような上品な作りで、白地に金の刺繍が入っている。

そして私がもらったバッグと同じチャームがついている。

たぶんだけど、あれが核なのかな。

「こちらは容量が小さいのですが、それでも私の魔力を昼夜一月以上かけて入れ続けて、やっっっと! 完成したのです! 自分で手をかけた分、完成した時はもう、ほんとうに嬉しくって!! でもこの感動を誰にも言えなくてぱたぱたしていたのです! アーシェラちゃん! これはとっっても素晴らしいものですわよ!! 大事にしましょうね!!」

本当に嬉しかったのだろう。瞳をキラキラさせてバッグを抱きしめている。

なんとなくカレン神官長がしっぽを全力で振る子犬のように見えてきた。

「あい!!」

「ペンダントとバッグがひとつになっていたら、念じるだけで目の前にでてきますよ!」

「やってみりゅ!」

さっそくやってみたら、一度入ったアイスクリームは念じるだけで出入りした。

ふああ! 便利だ!!

その後、人前では 魔法鞄(マジックバッグ) を使うところを見られないように注意を払うことを約束させられた。

たぶん普段はペンダントトップに収納した状態であることが多くなるだろう。

「いいものをもらったな。アーシェラ。大事にするのだぞ」

「あい!!」

もちろんだ!!

「れいちぇるおばあしゃま。いろんなまほうどうぐちゅくれる?」

「そうだな。最たる物はコレだが、核さえ正確に作れればいろんなものができるからな。レイチェル殿はコレを作れるくらいだから、その他の物も作れるだろう」

「あーちぇもなんかちゅくりたい!」

なんだかとっても面白そうだ!

どんな魔法道具があるかわからないけれど、こんな便利なものがあるのだ。

魔法道具作りやってみたい。

「それならそちらの教師は、レイチェル女官長ではいかがでしょう? いい先生になると思いますわ」

「まあそうだな。へたに外から教師を選ぶよりもレイチェル殿の方がアーシェラの安全も確保されるだろうしな」

「では、王妃様と女官長にご提案しておきますわ」

「アーシェラ。魔法道具作りは基本の魔力操作をできるようになってからになる。先に魔力操作を覚えような」

「あい! ひいおじいしゃま!」

先日、王妃様の承認がでたので、私の魔力操作の先生はひいおじい様になった。

今後、ローディン叔父様やリンクさんが戦争に行っている間は、商会の家に泊まることもあるとのことだ。楽しみだ!

「魔力操作をおじい様に。魔術陣や魔法道具作りはクリステーア公爵夫人か」

「いい先生ばかりだからずいぶん伸びるはずだ。アーシェはどこまで強くなれるんだろうな。楽しみだな」

ローディン叔父様とリンクさんがくすりと微笑んだ。

教える教師の能力次第で伸びしろはずいぶん変わるという。

魔法学院の在学期間はたいてい2年間だが、卒業までにクリアするべき課題をこなせなければそれ以上の在学となる。

座学は学年別に皆一緒だが、実践に関しては、教師は、生徒のレベルに合わせて個別につく。

魔法学院に在籍していた当時、ディークひいおじい様に幼いころから指導を受けていたローディン叔父様とリンクさんは、魔法操作に関しては入学時点でも上位クラスだったそうだ。

ローディン叔父様とリンクさんの可能性をもっと引き上げる為に、クリスフィア公爵が二人の指導につき、その2年間で専門的な能力が開花し、基礎的な力も飛躍的に向上したそうだ。

だからこそ教師選びは大切なのだと言っていた。

幼少期はディークひいおじい様に、そして魔法学院時代はクリスフィア公爵にと、魔法操作の英才教育を受けたローディン叔父様とリンクさんは、卒業前に魔法省に入ってくれと誘われるほどの実力の持ち主となった。

先日来たクリスフィア公爵が、これまで私やローズ母様が無事だったのはローディン叔父様とリンクさんが優れた能力を持っていたからだと教えてくれた。

私もひいおじい様から学ぶ。ローディン叔父様とリンクさんに教えてもらうことも出来そうだ。

ふと、ディークひいおじい様がローズ母様を見た。

さっきからローズ母様は心配そうな表情をしている。

本来なら7歳から始めるはずの魔法教育。

今日4歳になったばかりの私には魔力を使うことで体に負担がかかると、ずっと心配しているのだ。

「ローズ、心配なのは分かるが、アーシェラは王妃様と同じで加護をもらっている。魔法をなるべく早くきっちりと身につけなければ、自分で自分の身を守れないのだぞ」

「姉さん。アーシェは興味があるものに突っ走っていく子だよ。狙う者がいるということで行動制限されるのじゃなくて、やりたいことを思い切りやらせたい。そのためには自分でも身を守れなきゃいけない」

「ああそうだな。護衛はつくがそれに慢心しては駄目だ。自分自身を守る術は早く身につけた方がいい」

私もその言葉に頷いた。先ほど聞いた、犠牲になった生徒のことを聞いた以上は、周りの人に常に守られるだけじゃなく自分自身を守れなきゃいけないと思っていたのだ。

「かあしゃま。あーちぇ、だいじょうぶ」

母様に抱き着いて『大丈夫』だと伝えると。

「ぜったいに無茶をしないと約束してちょうだい。アーシェ」

ぎゅうっと抱きしめてぽんぽんしてくれた。

「それに魔法教育だけじゃなく、令嬢教育もきちんと受けさせよう。マリアにいい教師を紹介してもらおうな」

私の頭をディークひいおじい様が撫でた。

食事のマナーとか挨拶はローズ母様に教えてもらっていたけど。

これからはたくさん覚えることがありそうだ。

「あい! やりましゅ!」

魔法も令嬢教育も前世でやったことがない。

どれも楽しそうだ!

「うちの母上なら、他の者に任せずに、絶対自分でやると言いますよ」

嬉々として手を挙げる姿が目に浮かぶ、とリンクさんが笑っていた。