軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

319 魂に結び付いた力 4

「実は三人には反射魔法の魔導具は鞄にしまわずに身につけておくようにと、言うつもりだったのだが」

「身体に同化しましたからね。まあ結果的に理想的な感じにおさまりましたね」

陛下の言葉の後に、クリスフィア公爵がそう続けた。

「「「?」」」

それって、どういうことなのかな?

反射魔法の魔導具はたぶん討伐の時に活躍するだろうと思っていたんだけど、陛下の言葉って、近々何か、反射魔法の魔導具が必要な事態が起きるように感じるけど?

それはローディン叔父様とリンクさんもそう感じたらしい。

「どういうことなのでしょう? そのお言葉から察するに、反射魔法の魔導具を使わなければならない事案が直近で起きるように思われますが……」

「ああ、おそらくな。リヒャルトの仲間にサディル国の魔術師がいるという話は聞いているだろう? サディル国とアンベール国は繋がっている。実はアンベールにいた闇の魔術師が作った魔導具が、サディル国に渡っているらしいのだ」

サディル国には闇マーケットがある。アンベール国がサディル国から反射魔法の魔導具をはじめ、さまざまな魔導具を仕入れているように、サディル国もまたアンベール国から闇の魔術師が作った魔導具を手に入れていたらしい。

サディル国は、危険な魔導具を売りさばき、それにより他者が苦境に追い込まれているのを、ほくそ笑みながら高みの見物をしているような国主がいる、はた迷惑な国であると公然と知られている国だ。

さらにアンベール国から闇の魔導具を購入している。ということは、彼の国は前から保有している物と合わせると、かなりの数の闇の魔導具を持っているということになる。

そんな国出身の魔術師がリヒャルトの側にいる。これまでの状況から鑑みるに、その魔術師を通してリヒャルトも闇の魔導具を一つだけではなく複数個手に入れているだろう、ということだ。

「確か、リヒャルトが潜んでいた屋敷に闇の魔導具による罠が仕掛けられていたのですよね?」

以前、リヒャルトは追手をまくために一度闇の魔導具を使用して逃亡している。

その時リヒャルトが使った闇の魔導具は、一度起動するとオフにはできない仕様だった。つまり闇の魔導具が壊されるまで、その術に捕まった者の力を吸い取り、発動者の魔術の糧となり続けるものだった。

発動者は闇の魔導具が発動した術に嵌った者の力を利用することで、己の魔術の威力を倍増させることが可能となる。だが、魔術にとらわれてしまった者にとっては、最悪だ。

捕まった者は魔力のみならず生命力までも奪われ続けるのだ。かつて菊の花が咲く教会で会った、トッツオさんとマリオンさんのように。

かつて彼らはアンベール国の闇の魔術師が仕掛けた術により生命力を奪われ、自分の意志で身体を動かせなくなった。食事を自分でとることもできず、下の世話までしてもらわなければならなかったのだ。

苦しくて、辛くて、情けなくて。

生きていることに絶望し、命を絶ちたいと願うほどに。でも思うように身体を動かせない彼らにとって、それは不可能だったのだ。あのままでは、衰弱死するまでその生命力を搾取され続けていただろう。

……本当に、どこまでも人を苦しめる非道な術だ。

リヒャルトが潜伏していた場所にはそれと同じ術が仕掛けられていた、と、ディークひいお祖父様から聞いていた。

そんな酷い術を使うこと自体がリヒャルトの残酷さを物語っている。

自分さえよければ他人がどうなっても構わないということだろう。本当に腹立たしい!

陛下が言うには、リヒャルトはアーシュお父様が生きていたことを知った。だからアーシュお父様が大事にしているローズ母様を殺害、もしくは人質にしようと、闇の魔導具を使って攻撃を仕掛けてくるだろうとのことだ。

それって、サディル国出身の魔術師かリヒャルト本人が出てくるってことだよね。

闇の魔導具は強い力を持っている。だが数は少なく、手に入れにくい。しかも超高額で取引されているものだ。だからこそ個人が手に入れたら、決して他者に渡すようなことをしないという。

それゆえに、闇の魔導具を持ったその二人が近々私たちの前に現れるだろう、とのことだ。

だから、身を護るために、反射魔法の魔導具がすぐに発動できるように肌身につけておきなさいということだったのか。

まあ、その反射魔法の魔導具は私たちの身体に同化しちゃったんだけどね。

リーフ・シュタットが遺した光の魔力を宿した反射魔法の魔導具は、彼らの持つ闇の魔導具の力をも反射するだろう。しかも倍となって返るのだ。

「ふっ。倍加して己に反射した闇の力に、やつらがどう対処できるか見ものだな」

リヒャルトのことを話すクリスフィア公爵のお顔はとっても厳しい。

魔法学院の生徒を人質にしたことで、リヒャルトは完全にクリスフィア公爵を怒らせたんだよね。

先日、クリスフィア公爵はかつての教え子だったリーフ・シュタットを見送った。

彼は闇の魔導具によって自由を奪われ、結果としてその命を散らしてしまったのだ。

だからこそ、闇の魔導具を手に入れ、魔法学院の生徒たちを己の盾に利用しようとしているリヒャルトのことが許せないのだろう。

気持ちは分かる。

クリスフィア公爵は魔法学院の生徒のためにずっと心を砕いてきた人なのだから。

たぶんリヒャルトは、クリスフィア公爵に出会ったら絶対にタダでは済まないだろう。

でも眉間にしわを寄せている今のクリスフィア公爵より、いつもの大らかに笑うクリスフィア公爵の方がいい~!

よし、こんな時は美味しいものを食べるに限る!

話し合いも終わったらしいし、いいよね!

「あーちぇ、おみやげもってきたの!」

今日のおみやげは、ついこの間、バーティア伯爵領のレストランで提供しはじめたばかりの自信作だ!

もちろん出来立て熱々を魔法鞄に詰めてきた。

「まあ、うれしいわ! さあ、クリスフィア公爵も難しい顔をしてないで、一緒にいただきましょう!」

王妃様がクリスフィア公爵にそう声をかけると、陛下が「フィーネ、私は?」と言った。

おや、陛下。その反応ってちょっとリンクさんに似ているよ。やきもちですか?

「ふふ、もちろん一緒よ!」

満面の笑みでそう答える王妃様。

おおう、そういえば、国王夫妻は仲が良いのだった。

王妃様がたまに実家に里帰りした際は、陛下がクリスウィン公爵家まで王妃様を迎えに行くのだとか。

本当に仲が良いんだね。

国王夫妻のやりとりで、いい感じに場がほっこりした。

よし、じゃあ、みんなで一緒に食べよう!