軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

143 土下座ですか?

「お昼時で小腹も空いたことだし、カインの言う通り、試しにそこのかまどでやろうか。カインも食べ方を知りたいだろうし」

「そうだな」

ホークさんの言葉に皆が頷き、教会のかまどで調理することになった。

「おいる、いっぱいちゅかうけど、ありゅ?」

天ぷらは油をたっぷり使う。

せっかく難民の人たちの為に持ってきたのに、たくさん使ってはなんだか申し訳ない気がする。

「もちろんです! 持ってきたばかりですので使ってください! 後で補充すればいいですから!!」

「アーシェラちゃん。オイルならフラウリン子爵領の特産なの。気にせずいくらでも使ってちょうだい」

マリアおば様の生家のフラウリン子爵領はオイルの原料の産地ということなのか。

そういうことなら。

「胡麻油じゃなくてもいいの?」

大陸の胡麻油で作ると言っていた言葉を思い出してローズ母様が言う。

「ごまあぶらおいちい。でもいつものおいるでも、おいちい」

それに胡麻油は前世では少しお高めだったので、いつも天ぷらを作る時は普通のサラダオイルを使っていたのだ。全く問題はない。

カインさんが教会の厨房から大きな鍋を持ってきて、かまどにセットした。

難民を受け入れている為、大きな鍋をいつも使っているらしい。

うん。これなら一気にたくさん作れるだろう。

たっぷりの油を温めている間に、よもぎやタラの芽、菊の葉を洗って汚れを落とし、水気を取る。

しっかりと水気を取っておかないと油がはねて火傷してしまうからだ。

洗うのも水気を飛ばすのも、魔法でやっていた。便利だなあ、魔法って。

天ぷらの衣は、簡単に小麦粉と塩、井戸から汲んだキリっと冷たい水で。

片栗粉を入れるとサクッとするけど、薄い葉っぱだから小麦粉だけでも十分サクッと揚がる。

粉を混ぜ過ぎないのがコツだ。

「ちゅくったころもに、はっぱをくぐらせて、おいるであげる」

「「わかった」」

リンクさんとローディン叔父様が手際よく揚げていく。

ジュワー、パチパチ、という音があたりに響く。

菊の葉も、よもぎも薄いのですぐに揚がる。タラの芽もそんなに長い時間揚げる必要はない。

「あい、しょのくらいで」

「すぐに揚がるんだな」

ザルにあげて油を切り、すぐに試食する。

揚げたてが美味しいのだ。

「しおをちょっとちゅけて、たべりゅ」

いただきます、をしてそれぞれに塩を付けて食べる。

「わ。サクッとして旨い!」

「ほんとだ。軽い食感がいいな」

ホークさんとリンクさんがそっくりの顔で笑う。

「昨日のパン粉を使うフライもすっごく美味かったが、こっちも美味いな」

「ああ、シンプルだが美味い」

よもぎやキクの葉やタラの芽の調理法は、天ぷらがベストだと思う。

パン粉を付けてもいいだろうけど、山菜を揚げる方法として天ぷら以外に考えられなかった。

「よもぎって薬にするだけじゃなくて食べられるんだな。美味い」

「キクの葉も美味しいです! ほんのりした苦みが後を引く美味しさですね!」

ローディン叔父様やカインさんも天ぷらをつまむ速度が速い。

「タラの芽も美味しいわ」

「ええ、ほんとうですわね」

「これにちゅけてたべるのもおいちい」

そう言って用意したのは、こっそりと魔法鞄から取り出しためんつゆを水で薄めた、即席の天つゆだ。

めんつゆや数種類の調味料を小さな薬瓶に入れて、数種類の調味料が私の魔法鞄の中に常に入っている。このくらいのサイズならポシェットから出しても怪しまれないと思って入れておいている。

そうやって用意した天つゆを、ローディン叔父様に火の魔法の応用で温めてもらった。

塩もいいけど、天つゆで食べるのも大好きなのだ。

「まあ! めんつゆで作った天つゆというのも、とっても美味しいわね!」

「私、塩よりこっちの方が好みだわ」

「ああ。これで食べても美味いんだな」

天つゆも皆に好評だった。

「いいですね、これ。以前よもぎを湯がいて食べたことがありますが、好みではなくて」

「ああ。それ、俺と一緒に試したやつだよな」

カインさんの言葉にホークさんが頷いた。以前、鑑定して食用と結果が出たものを片っ端から食べてみたことがあるそうだ。

「けっこう苦みがあって、断念したんだよな」

「はっぱ、あくぬきちないとにがい。おいるであげると、にがみがほどよくぬける」

よもぎと言えば、天ぷら。そしてよもぎ団子にするのが大好きだった。

今度餅つきした時に作ってみよう。ふふふ。

「そのようですね。揚げたら苦みがほどよく抜けて、美味しいですね」

「キクの葉の天ぷらも、いい感じの苦みで旨いものだな」

「よもぎよりもキクの葉は少し厚くて、食べ応えがある」

菊の葉も、よもぎも、タラの芽も、春の味覚でとっても美味しい。

菊の葉は年中あるからいつでも食べられるだろうけど。

「あーちぇ。えびとか、いかのてんぷらもしゅき」

「ああ! それは絶対美味いはずだよね! よし、家に戻ったら今日の夕食はそれを作ろう!!」

「それはいいわね! フライと違う食べ方が出来るのね。楽しみだわ!」

ホークさんとマリアおば様が楽しそうに言うと。

「よもぎも、タラの芽も、キクの葉っぱまで食べられると知ったら、親父たち驚くよな」

リンクさんがにやりと笑った。

◇◇◇

そんな会話をしていたら、教会の中から、こげ茶色の髪と瞳の司祭様が出てきた。

難民の人たちと会って欲しい、ということだった。

マリアおば様が了承すると、教会の中から世話人に連れられて子どもたちが何人もぞろぞろと出てきた。子どもたちは私のように小さい子からだいたい10歳くらいまでの子が9人。

そして、子どもたちの後から、母親や祖父母らしき人たちがぞろぞろと出てきた。

大人は年配の男性が数人で、後は母親らしき女性ばかりだった。

大人と子供、全員で25人。結構な人数だ。

難民として逃げてきた人たちは、顔立ちがアースクリス国人とは違うのだと認識した。

もともとウルド国、ジェンド国、アンベール国の三国はセーリア大陸周辺からの移民であり、その前は長い間放浪の一族だったという歴史を持っている。

そして、三国はもともと一つの民族だったので顔立ちがとてもよく似ている。

三国を判別するのに有効なのは肌の色と身体的特徴だ。

ウルド国はがっしりとした体格と黄色人種の肌色の者が多い。アンベール国とジェンド国は、ウルド国のような体格の特徴はなく、判別は肌色。アンベール国はウルド国の者より肌色が濃く、ジェンド国は三国の中で一番肌色が薄い。

それでいくと、濃い肌色の人たちはアンベール国、薄い肌色の人たちはジェンド国からの難民なのだろう。

今教会にいる難民の人たちは、ここ10日から20日間の間に保護された人たちだとのことだ。

―――私はこれまであまりアースクリス国以外の人に会ったことがなかった。

クリスウィン公爵領で会ったサンダーさんはアンベール国の血が入っていたが、代を重ねているので殆どアースクリス国人だったし、純粋に外国人といえば王都の教会で会ったジェンド国出身のトムおじいさんくらいだ。

こんなに、多くの外国人に会ったことはなかったので、驚いた。

そして、それ以上に驚いたのは、皆が皆とても痩せているということだった。

そのアンベール国とジェンド国からの難民の人たちは、私たちを見て固まっていた。

どうやら教会の司祭様が、『領主家族が来ているので、外に出て挨拶をするように』と促したらしい。

そして、外に出てきたところ、カインさんを除いて銀髪(私は金髪だが)の貴族たちがずらりと並んでいて、驚き、固まっていた。

三国には金髪や銀髪は殆どいない。

そしてアースクリス国で銀髪や金髪を持つ者は、貴族の血を引いている証でもあるのだ。

おそらく彼らは初めて金髪と銀髪の人間を見たのだろう。

マリアおば様は領主であるデイン伯爵の夫人、ホークさんとリンクさんは伯爵家の子息。

そしてローズ母様とローディン叔父様は血の近い親戚だ。祖国では見たことのない銀髪の貴族が5人も揃っていたら、そりゃ驚いただろう。

司祭様に挨拶をするように指摘されて、慌てて頭を下げたかと思ったら―――驚いたことに、大人たちが一斉に地面に頭をつけるように全員土下座をした。子供たちも大人と同様に膝をついて地面に頭をつけた。

え? ―――土下座ですか??