軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

495 ハルミレイアとオルターバ

四百九十五

カディーラに一目置かれるアストロのお陰もあって、難なくハルミレイアの墓参りを許可された。

けれどそこから先が思ったよりも長かった。

なぜならカディアスマイト連合国の英雄が眠る墓という事もあり、特別な場所に造られていたからだ。

カディアスマイト島の中ほどより幾らか北に行った場所。巨大な湖に囲まれた山の上に、その墓があるという。

しかもこれまでミラ達がいた街から、二百キロメートル以上は離れた地点だったのだ。

とはいえ、今回移動のために利用したのはミラのガルーダワゴンだ。二百キロメートルもの距離があろうとも、空の旅は最短ですこぶる快適。三、四時間程度で目的地に到着出来た。

「これまた、とんでもないところに墓を造ったものじゃな」

「なんか伝説のアイテムとかありそう」

辺り一面見渡す限りに広がる草原。その先には巨大な湖が広がっており、目的地の山もまた前方に堂々と鎮座していた。

視界に入る人工物は墓とその周辺のみであり、他はただひたすらに大自然が広がっている。出発前にカディーラから聞いた話によると、この辺り一帯は特別保護区に指定されているため、人の手を一切加えてはいけないそうだ。

ゆえに墓のある周辺は、ハルミレイア達が活躍した頃と変わっていないとの事だった。

そんな大自然の中にぽつんと存在する墓は、どこか異質でいて不思議な迫力に満ちていた。

ミラはその光景を前に、ただ感嘆したように声を上げる。対してアノーテは、どうにもゲーム脳に引っ張られ気味のようである。

とはいえ、ここにいる誰一人として、その言葉を否定する者はいなかった。なぜなら全員が『確かに』と思っていたからだ。

「あー、全然質素じゃなかったー」

近づけば近づくほどに全容が見えてくる。そうこうして湖も越え、いよいよ英雄の墓所前の広場に着陸しようとする中で、マノンがそんな言葉を口にした。

質素。それは確認させてもらった資料に描かれていたハルミレイアとオルターバの墓を見てマノンが最初に浮かべた印象だ。またミラ達も、それと同じような感情を抱いたものである。

けれど実際にその墓を目の前にした今、全員がその光景に圧倒されていた。

「いや、でっかいのぅ……」

「縮尺の問題だね、これはもう」

「英雄の墓に相応しい迫力だな!」

標高にして千メートルほどの山の頂。平原の如く広がるその只中にハルミレイアとオルターバの墓標が立てられていた。

否、むしろ聳えていたと言った方が正しいのかもしれない。そこには高さにして百メートルは超えるであろうほどに巨大な墓が二つ存在していたのだ。

ずっと離れた位置から見れば、確かに資料通りに見えるかもしれない。しかし目の前に立った今、もはや資料に騙されたとしか思えないほどに、その印象はひっくり返った。

高さ百メートルに対して幅は七十メートルほどだろうか。加えて奥行きも五十メートル近くはありそうだ。

ミラとアノーテ、アストロもまたワゴンから降りるなり、これは予想以上だと驚愕しつつ、その二つの墓を見上げた。

向かって左側がハルミレイア。右側がオルターバの墓となっているようだ。巨大な石柱の如く聳える墓には、しっかりとその名が刻まれていた。

「さて、ここから先は、ただの自己満足じゃが……」

ミラはハルミレイアの墓に歩み寄るなり、その前に備え付けられた供物台に、そっとヴェイグの日誌を置いて手を合わせた。

ミラが呟いた通り、その行動には何かのためになるという一切の根拠はなかった。ただ、還らなかった一つの魂がヴェイグのものだと思い込み、だからこそ娘の傍になどと勝手に考え、わざわざこのようなところまでやってきたというのが今の状況だ。

ゆえにミラは日誌を届けた後については何も考えておらず、それでいて満足げに笑い「では、戻るとしようか」と振り返りアストロ達に声をかける。

すると──。

「ミ……ミラちゃん、後ろ……」

「で……出ました」

「……まじか、はっきり見えるんだが」

そこには目を見開いたアノーテと、唖然とした顔のマノン、そして何度も目をパチクリさせて驚くアストロの姿があった。

いやいやまさか。こういう時には、よく示し合わせてそういうドッキリを仕掛けてくる輩が出てくるものだ。

しかしながらアストロといいアノーテといいマノンといい、そういう悪戯を仕掛けてくるようなタイプとは思えない。

「なんと!?」

ならばもしやと振り返ったミラは、目と鼻の先に突如現れた男女の姿を目の当たりにして思わず飛びのいた。

それから素早くアストロ達の傍にまで戻ると、まじまじとその二人を見据える。

「間違いなく、幽霊船の船長だな」

「うむ、あの時見た姿のままじゃ」

男性の方は、既に見覚えがあった。

幽霊船に乗っていた赤い服の男だ。そして日誌より得られた情報からして、それがヴェイグ・ランドルシアである事は間違いない。

やはり日誌には、彼の魂が残っていた。そう確信を得るなり、ミラ達はそんな彼の向かい側に現れた女性へと視線を移す。

ヴェイグと同じくらいだろうか、すらりとした長身の女性。キリリと引き締まったその顔はとても凛々しく、またその佇まいには堂に入った品があった。

それこそ言葉で表すとしたら、立派な騎士そのものといった印象だ。

そしてだからこそミラ達は、そんな二人を前に心底驚いた。

確認した日記の全てを総合して思い描いていたハルミレイア像とは、まったく似ても似つかなかったからだ。

「あれが娘さん……?」

「思っていた感じと、かなり違う……」

そう率直な感想を口にするのは、アノーテとマノンだ。二人は印象の違いに驚きながらも、それでいて次には「素敵」と零していた。

どうやら女性から見て憧れるタイプのようだ。

とはいえハルミレイアといえば、やんちゃで活発な健康優良少女というイメージが一番にあった。悪戯好きで正義感に溢れ、考えるよりも先に身体が動く。そんなガキ大将的なイメージしか日誌からは読み取れなかったのだから仕方がない。

しかし現れた女性から受ける印象は、まるで正反対だ。そんなギャップもあってか、ミラ達の中でハルミレイアという存在が大きく変化していく。

アジトにいた頃──日誌に書かれていた頃より何があったら、これほど凛と落ち着いた女性になれるというのか。英雄として戦った日々が、彼女をこのように成長させたのか。

人間変わる時は変わるものだ──と、ミラ達は感心しながら親子の感動的な再会を見守った。

突如現れたヴェイグ達……もう幽霊と言ってしまってもいいだろうその二人は、会話をしている様子であった。ミラ達にその声は聞こえていないが、二人の仕草や様子からして何かしら話しているのは確実だ。

「なんだか感動するね……」

長い時を越えて再び出会えた親子。声は聞こえずとも、きっとこれまで交わす事の出来なかった親子としての話題で盛り上がっているのだろう。そしてこれから、会えなかった時を埋めていくのだろう。

アノーテは、きっとそうだと感涙しながら「良かったぁ、良かったよぉ」と顔をくしゃくしゃにする。

そしてミラ達もアノーテほどではないが、その再会に胸を打たれていた。

だが、そんな感動のシーンから少しずつ状況があらぬ方向へと進み始める。声は聞こえずともヴェイグ達の仕草は見えているのだが、どうにも様子がおかしいのだ。

「ん? どこを見ているんだ?」

「何だか呆れたような顔を……」

アストロとマノンが、その動きを前に疑問を浮かべる。

幾らか言葉を交わし終えたと思ったところで、ヴェイグがふと促されるような形で墓の方に振り返ったのだ。

いったいそちら側に何があるというのか。二人はどういう会話をしていたのか。さっぱり事情は掴めないが、ミラ達もまたそれに釣られるようにしてヴェイグの視線を追ってそちらを見やった。

「あ……!」

「おお!? もう一人……じゃと?」

そこにあったまさかの存在を捉え、目を見開くマノンとミラ。

視線を向けた先、ハルミレイアの巨大な墓の根本付近にそれはいた。まるでその陰に隠れるかのようにして、こちらを窺っている女性の姿がそこにあったのだ。しかも見た感じからして、彼女もまた幽霊であるとわかる。

そんな女性に向かってヴェイグが何かを言いながら手を振った。けれどその女性は何か躊躇っているのか、その陰から出てこようとしない。

けれどヴェイグが何度か声をかけたところ、ようやくそこから出て歩み寄ってきた。

「あれ? え? もしかして……」

涙ぐんでいたアノーテは、その近づいてくる姿を見て唖然としたように呟く。そしてミラ達もまた同じ反応を示した。

なぜならハルミレイアの墓の陰に隠れていた幽霊が、日誌を読んで思い描く事が出来た『ハル』の人物像にピタリと当てはまっていたからだ。

やんちゃで活発な健康優良児が、そのまま大人に成長した姿。女性らしさが目立つ形で大人になっているが、日誌に書かれていた根本的な部分はまったくそのまま。本人を見た事がないはずなのに『ハル』の面影が見事に重なるという奇跡の一致率だ。

そして、そこから続く光景を前にして、ミラ達はようやく勘違いしていた事に気付いた。

一気に駆け出したヴェイグが、新たに現れた幽霊を強く抱きしめる。そう、むしろこの瞬間こそが本当の親子の再会であった。イメージが『ハル』と完全一致するその者こそが、ヴェイグの娘ハルミレイアだったのだ。

「え? それじゃあ……?」

「こちらの方は……?」

相当な年月が経過しているためか、ヴェイグとハルミレイアの態度は若干たどたどしかった。

けれど親子である。会えなかった時間などなんのそのと、直ぐに会話が弾み始めていた。これまでのように声が聞こえてくる事はないが、それでも嬉しそうだという感情だけは伝わってきた。

ただそうすると、一つの疑問が生まれる。あちらがハルミレイアならば、こちらは誰だったのだろうかという疑問だ。

不意に正体不明となった、もう一人の幽霊。アノーテとマノンがゆっくり振り返ると、ミラとアストロもまたいったい誰なのだろうかと困惑しながら、もう一人に視線を戻した。

「──」

その幽霊の女性は、ヴェイグとハルミレイアを見守るように優しく笑っていた。凛々しさにそっと微笑みを浮かべたその顔は誰であってもドキリとするくらいに美しく、ミラ達は思わず見惚れてしまう。

と、そんなミラ達の事に気付いたのか、幽霊がふとこちらに振り返る。

「あ、と……ところで貴女は、どなたなのだろうか?」

視線があった瞬間、照れているのかどこか緊張気味にしながらもアストロがストレートに疑問を口にした。

こちらの声は通じるのか幽霊が答える。けれども一体どういう原理なのか、あちらの声は届かない。幽霊もまた何かを言った後、それに気づいたようだ。ふと考えるような仕草を見せると、今度はその動きで答えてくれた。

幽霊は、墓を指さしていた。しかもそれは、ハルミレイアの墓ではなくオルターバの墓だ。

「やっぱり!」

もしかしたらという可能性はあった。そして今回は、そのもしかしたらという予想が当たったとして、マノンが一番に声を上げる。

その幽霊の仕草からわかる彼女の正体。念のためにとマノンが今一度口頭で確認したところ、幽霊は肯定するように頷いてくれた。

そう、もう一人の幽霊は、ハルミレイアと共に並ぶ英雄オルターバ本人だったのだ。

カディアスマイト連合国の代表カディーラの許可を得てやってきた、英雄の墓。ミラ達は今、そこでもう一人の英雄オルターバの幽霊と共に、ヴェイグとハルミレイアの再会を温かく見守っていた。

と、それから暫くしたところで状況に変化が現れる。その再会を喜んでいたハルミレイアが、ふとこちらに振り返り寂しそうな顔を見せたのだ。

同時にヴェイグが深々と頭を下げる。そして顔を上げたところで、またもう一度、深く頭を下げた。

その行動の意味とは、きっとここに連れてきたミラ達へのお礼であり、また娘のハルミレイアと共にいてくれたオルターバへのお礼でもあったのだろう。

どうやら、お別れの時がきたようだ。

親子仲良く寄り添い合うヴェイグとハルミレイア。それはきっと二人が長年待ち望んできた瞬間だったはずだ。

けれどハルミレイアの表情が曇ったままであり、その寂し気な目はオルターバに向けられていた。

「わがる……わがるよぉ……」

その様子を前にして号泣しているのはアノーテだ。

娘と再会出来た事で、ヴェイグの未練は晴れたのだろう。そしてそれは、ハルミレイアにとっても同様。この再会をもって、現世への未練を断ち切れたと思われる。

ゆえに後は成仏するだけになったわけだが同時にもう一つの心配事が生まれてしまったのだと、アノーテはまるで全てを察したかのように嘆く。

いわく、ここで成仏すれば、オルターバが一人で残る事になってしまうと。

だからこそハルミレイアは寂しそうな顔をしており、だからこそ成仏するまで踏み出せない。

実際のところアノーテの言う通り、ハルミレイアが躊躇っているように見えた。それに対してオルターバが色々と言っている。けれど余程心配なのか心残りなのか、さっぱり頷かないハルミレイア。

「うん、うんうん……!」

そのやり取りを見つめながら、更に泣き腫らしていくアノーテ。

二人が何を言っているのかわかる──などという事はなく、それでいて二人の反応からだいたい察せられると自信満々に答えた。

きっとオルターバは、『私の事など気にせず、先に行け』と言っている。そしてハルミレイアは、『そんな事出来ない。貴女を残して、いけるわけない』と答え、そのままのやり取りが繰り返されている。それがアノーテの脳内で展開されている目の前の状況だ。

「そう聞くと、何やらそのように見えてきたのぅ……」

未練を晴らし成仏するハルミレイアと、未練を残したままのオルターバ。今はそんな二人の別れの瞬間。

心底感情移入しているアノーテの言葉だったからか、実際に双方のやり取りを眺めていると、その通り言い合っているように見えてくるから不思議だ。

ただ、このまま平行線を辿り続けるかと思いきや、そこでオルターバが動いた。ずんずんとハルミレイアに歩み寄っていくなり、その両手でばしりと勢いよくハルミレイアの顔を挟んだのだ。

「いいかげんになさい! お父さんに逢えたのでしょう、貴女の望みは叶ったのでしょう。ならその事を喜びなさい。もう貴女は十分誰かのために戦った。だからもう自分の事だけを考えればいいの。私の事は気にせず、早くお父さんといきなさい。それとも何? 貴女がいなくなったくらいで私がどうにかなるとでも思っているの? 見くびらないでよね!」

ハルミレイアをぐっと掴んだまま顔を寄せて、何か怒鳴りつけるように話しているオルターバ。そしてそんな彼女の言葉を勝手に妄想しては実況するアノーテ。

しかしこれもまた、目の前の場面にさりげなく一致するためか、本当にそう言っているかのように見えてしまうから不思議だ。

そうして状況を見守る事暫く。話に決着がついたようで、今度は二人が強く抱き合った。

なおこの時にアノーテは号泣のその先へと至り、もはや泣き呻くだけの何かになり果てていた。よってその次の場面については、ただ見て感じるだけになる。

心が決まったのか、抱きしめ合った後に離れると、ハルミレイアの顔はすっきり晴れていた。それから短く『またね』という感じで口を動かすと、そのまま嬉しそうにヴェイグと並び太陽のような笑みを浮かべた。

そしてヴェイグとハルは光となって、空に還っていく。はしゃぐように輝くのはハルだろうか。優しく輝くのはヴェイグだろうか。

ミラ達は夕暮れ迫る空を仰ぎ、そんな光が見えなくなるまで見送った。

「あ……!」

三百年の時を越えて、ヴェイグとハルの魂が天ツ彼岸ノ社へと還っていった。その現場に居合わせ感嘆としていたところで、マノンが声を上げる。

どうしたのかと振り返れば、なんとオルターバの姿がおぼろげになり始めていたのだ。

未練を晴らし天に還ったヴェイグとハル。だがオルターバがここに残り続けていた理由については不明であり、彼女にどのような未練があったのかはわからなかった。

けれど、どういうわけかオルターバもまた、ここにきて成仏しそうな様子ではないか。

「そう……そういう事だったのね」

顔をぐしゃぐしゃにして微妙に呂律が回っていないが、それでも合点がいったとばかりにオルターバを見つめ、また号泣するアノーテ。

そんなアノーテが語る。きっとオルターバはハルミレイアのために、ここで一緒に待っていたのだろうと。つまりオルターバの未練は、ハルミレイアであったというのだ。

「……」

オルターバの声は聞こえない。けれどここにきて、そんなアノーテの予想がぴたりと当たっていたとわかる。オルターバは、そっと口元に指を立て『秘密』だと示した。

そう、オルターバはハルミレイアが一人ぼっちにならぬよう、ここで一緒にこの日が来るのを待っていたのだ。

そしてその願いが叶った今、彼女の未練もまたなくなったわけである。それがわかっていながら先ほどあれだけ言い合っていたのは、きっとこの理由を知られるのが恥ずかしかったからだろう。

オルターバは、そんな思いを胸に秘めたままハルミレイアを見送り、少しした後に自らもその後に続いていく。

彼女はふわりと、それこそ霧のように消えていった。

「おお? さっきと違うが、どうなったんだ?」

「成仏、出来たのかな?」

ヴェイグとハルミレイアの時と違った光景に戸惑いを浮かべるアストロとマノン。ちなみにアノーテは今、触れられる状態ではない。

「うむ、今空に還って行っておるようじゃぞ」

精霊王に聞けば、彼女もまた未練が晴れたようだと返ってきた。天に還って行く魂が、はっきり見えているとの事だ。

ただ、空を見上げながら精霊王の言葉を伝えたミラは、そこでふと疑問に思った。

なぜ先ほどはヴェイグとハルミレイアが輝く光として見えたのに、オルターバは見えなかったのかと。

『ところで精霊王殿や──』

その違いは一体何なのか。気になったミラは、その点について知っていそうな精霊王に直接聞いてみた。

するとその問いに対して、明確な解説が返ってくる。

精霊王いわく、魂を知覚する能力を持たない人間にとってみれば、それが普通だそうだ。

それでいて以前にミラは、セントポリーの街で魂を見送った事があった。ただそれは精霊の魂だったため、精霊王の加護を持つミラでも見えたらしい。

ではなぜ今回は、人であるヴェイグとハルミレイアの魂が輝いて見えたのか。それに対する答えは、神器の存在であった。

途中で少し話題に挙がったランドルシア家の宝剣だが、これが神の力を十分に宿す神器だとしたら全て説明がつくという。

精霊王が言うに、神の力に触れた事のある魂は、特別な能力を持たずとも見えやすくなるそうなのだ。

神の力。これを宿すものには幾つか種類があった。アーティファクトなどと呼ばれるものの他、一部教会の神像や祭器、伝説級に分類される武具といった類にも宿っている事がある。

だが、魂を可視化してしまうくらいに影響を及ぼせるのは一つだけ。先ほど挙げたものとは比べ物にならぬほどの力を宿したもの。すなわち神器だけだそうだ。

『なるほどのぅ……』

ランドルシア家の宝剣が神器だったとしたら、今回の現象についてぴたりと原因が一致する。しかも文献に残されたハルミレイアの奇跡的な勝利についても、この神器の力があったからこそという納得の説明がつく。

多くの残された情報が、神器の存在を証明しているといっても過言ではなかった。

(これまた、とんでもない可能性が出てきたものじゃな)

そのような作用もあったのかと感心するミラは、同時にこれはとんでもない事なのではないかとも直感する。

なぜならば現時点において公に存在が判明している神器は、三神国が所有しているものだけだからだ。

もしもカディアスマイト連合国にも神器があると知れたら、国家規模の大騒動になるだろう。

と、衝撃的な秘密に気づいたミラに向けられる視線が三つ。アストロ達のものだ。なんやかんやでミラが精霊王と話しているのを察したのだろう。その顔は、『で、結果はどうだった?』と如実に語っていた。

「実はじゃな──」

どうしたものかと悩んだものの、一人で抱えるには大きすぎる秘密だ。加えてここまできて何も話さないなど出来るはずもない。よってミラは精霊王から聞いたこの話を、アストロ達にも詳しく伝えた。