軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

380 集結と集結

三百八十

朝食が終わると、頃合いを見計らったかのようにエスメラルダがやってきた。このままイリスの部屋で寛ごうとするアルマを、政務が待つ場に連行するためだ。

「もうほとんど危険はないと思うけど、とりあえずイグナーツを捕まえるまでは、そのままでよろしくねー」

アルマは、そう言いながら引きずられていった。

「何ともまた、いつも通りじゃな……」

ユーグストを捕らえた今、イリスが狙われる確率はずっと下がった。カグラが行使する自白の術によって、彼が持つ『イラ・ムエルテ』についての情報は全て明らかとなったからだ。

それは、切り札として隠されていたものも含めてである。

もはや、ここでイリスを亡き者にしたところで無駄であるわけだ。とはいえ、それはそれとして、単純に報復として襲われる危険性が残っている。

よって完全決着するその日まで、ミラの護衛は続く。そしてイリスはというと、任せておけとばかりなミラを見つめて、にへらと嬉しそうに頬を綻ばせていた。

そうして今日の何気ない日常が始まる。

イグナーツ率いるヒルヴェランズ盗賊団がアトランティスの将軍達によって潰されるまでの間、ミラは特にやる事がないのだ。

そのため、暫くはイリスの護衛としてつきっきりとなる。

「今日から、予選大会のトーナメントが始まるんですよー」

ミラと一緒に観戦出来るのが余程嬉しいのだろう。魔導テレビの他、完璧に観戦環境を整えていくイリスの動きは、それはもう機敏であった。しかも、闘技大会予選がいよいよ大詰めとあって、普段より幾分テンションも高めだ。

「ほぅ、それは楽しみじゃな」

メイリンは当然として、召喚術の塔の術士ジュード・シュタイナー──もといブルースは、大陸中から猛者が集まるこの大会にて本戦まで駒を進める事は出来るのだろうか。

ミラ自身が出場出来なかった今、召喚術の未来はブルースの双肩にかかっているといっても、きっと過言ではない。

(わしは信じておるぞ、ブルース!)

ブルースにはヴァルハラにて、がっつりと仕込んでおいた。そしてミラも認めるほどに実力を伸ばした。ならばこそ召喚術は健在であると、世に知らしめるだけの成績を残してくれるはずだ。

そうブルースの活躍を願いながら、予選トーナメントの開始を待っていたところ。イリスが、あれやこれやとお菓子やジュースを並べている中でミラはふと気付く。

「……シャルウィナや、少し寝たらどうじゃ?」

部屋の隅にて護衛として待機しながら本のページを捲るシャルウィナだったが、その表情は、誰がどう見ても寝不足で限界といった顔であったのだ。だがそれでいて、彼女の両目はギラギラと輝いていた。

「いえ、大丈夫です主様! まだまだ続けられます!」

睡眠欲すら打ち破らんとするほどに、読書欲が高まっているのだろう。それほどまでにイリスの部屋の図書館は、夢のような場所だったようだ。シャルウィナは本を手にしたまま、問題ないと力強く返してきた。

その顔には寝る間も惜しいといった思いが、ありありと浮かんでいた。

(よもや、これほどまでにド嵌りするとはのぅ)

あの図書館を見たらきっと喜ぶだろうという単純な考えでシャルウィナを召喚したが、この状況を前にした今、もしかして人選ミスをしてしまっただろうかと悩むミラ。

ともかく、シャルウィナをこのままにしておくわけにもいかない。心は潤っているようだが、彼女の身体は真逆の状態だ。

きっとミラが命令すれば、シャルウィナは大人しく言う事を聞くだろう。だが主であるミラに注意されてしまったとして、基本真面目な彼女は同時に落ち込んでしまうかもしれない。

「ふむ、そうか。じゃが、お主にばかり負担をかけるわけにもいかぬからな。ちょいと助っ人を喚ぶとしようか」

あくまでも、頑張ったシャルウィナを労うという形で、ミラは召喚術を行使する。

二つ浮かび上がったロザリオの召喚陣。そしてミラの口から紡がれる詠唱。それによってこの場に参じたのは、シャルウィナの姉妹達。そう、ここにヴァルキリー七姉妹が集結したのだ。

「主様、何なりとご命令を」

アルフィナを筆頭にして跪く姉妹達。その姿たるや高貴高潔を形にしたかのようであり、それこそ何かの物語から飛び出してきたかのようだった。

だからと言うべきか、アルフィナ達を目にしたイリスの反応といったら、それはもう輝かんばかりである。

「凄いですー! まるで九賢者物語に出てくるダンブルフさんのヴァルキリーシスターズみたいですー!」

当然とでもいうべきか、イリスは九賢者が題材となった書籍についても完全に網羅しているようだ。そこに書かれているダンブルフの逸話の一つであるヴァルキリー七姉妹を想起させる光景に随分と興奮した様子だ。お茶のポットを手にしたまま、それはもう大はしゃぎだった。

「あー、うむ、そうじゃな、確かに、物語みたいじゃのぅ。まあ、物語みたいなだけじゃがな……!」

思わぬところでその名が出てきた事に、びくりと冷や汗をかきつつ、ミラはまったくの別人であるという方向に誘導していく。

とはいえ流石に想像力逞しいイリスでも、ミラがダンブルフであるという発想にまでは行き着かないようだ。ただそれ以前に、イリスはアルフィナ達の方に夢中となっていた。

「やっぱり、カッコいいですー!」

ちょこまかと駆け回り、羨望にも近い目でアルフィナ達を多角で見つめるイリスは、惜しみない称賛の言葉を繰り返す。

対するアルフィナ達は、きりりとしたままミラの言葉を待っていた。けれど一人だけ、そうクリスティナだけは、大絶賛するイリスの声に満更でもないとばかりに頬を緩ませていた。

「こほん。さて、早速なのじゃが──」

イリスの興味がこちらに向けられる前にミラは簡潔に状況を説明し、互いの紹介も行った。そしてアルフィナ達には、暫くの間ローテーションを組んで一緒にイリスの護衛として任に当たってほしいと伝える。

「任務、拝命いたしました」

そのように仰々しく答えるアルフィナと静かに一礼する姉妹達。イリスはその様子を前にして、物語通りだと更にテンションを上げていく。

なお、物語の方には姉妹達の名前などは表記されていないため、そこから身バレする事はなさそうだ。

「さて、昨日はシャルウィナが通しで護衛をしてくれていたのでな。今日は、別の者に交代してほしいのじゃが……」

今日からは姉妹達でローテーションを組んでもらう。そうすれば自然とシャルウィナが休みとなるわけだ。一度、この本好きの楽園ともいえる部屋から遠ざければ、シャルウィナとて、しっかりと眠ってくれるだろう。

「まずは私が引き継ぎましょう!」

そう一番に名乗りを上げたのは、やはりアルフィナだった。

更にシャルウィナを見やった彼女は、すぐに寝不足気味であると察しミラの意にも気付いたようだ。

「貴女は、しっかりと休んでおきなさい」

そう告げてから「主様のために、よく頑張りましたね」と労いの言葉を続けた。シャルウィナの寝不足を、全て任務遂行によるものだと思ったのだろう。

事実シャルウィナは、アルフィナが召喚されてから手にしていた本をいつの間にかどこかへと隠していた。

果たして、アルフィナが四階にある図書館の存在を知ったら、どのような反応をするだろうか。それはまた、もう少し先の事だ。

ヴァルキリー七姉妹によるイリスの護衛計画については、それからあっさりと決まった。基本は長女から降順となり、例外として四女のシャルウィナが末っ子クリスティナの次、という順番だ。

つまり次にシャルウィナの番がくるのは一週間後というわけである。

そして、基本的には日替わりで来てもらうという予定であったのだが、ここで一つ予定外……ながらも、少し想像すれば予想出来た事態となった。

日々の訓練や私生活という事も考慮して、その日ごとに召喚するつもりだったミラ。だが、アルフィナ以外を送還しようとしたところで、全員分のお茶を用意していたイリスが『もう帰ってしまうのですか』とばかりに寂しげな表情を浮かべたのだ。

彼女が置かれた状況からして、きっとこの部屋にこれだけ大勢がやってくる事など滅多にないだろう。イリスのはしゃぎようは、物語に出てくるようなヴァルキリーに会えたというだけでなく、多くの客人が来てくれたという喜びも含まれていたわけだ。

その結果、送還は中止。七姉妹は暫くの間、イリスの部屋で暮らす事となった。

現在は、他者の戦いを見るのもまた訓練になるという事で、大会予選を映す魔導テレビを観賞中だ。なおシャルウィナは、アルフィナの手によって寝室送りとなった。

「予選といえど、侮れませんね……」

「なるほど、そんな使い方が……面白いです」

「うわぁ、今のは痛そう……」

訓練の一環というだけあって、ただ試合として観戦するミラ達とは違いアルフィナの視点は戦士のそれだった。

ただ、それはそれとして、皆楽しめているようである。また何よりイリスがすこぶるご機嫌だ。

予選ながらも本戦出場まであと一歩であるため、選手は凄腕揃い。戦闘については、からっきしなイリスでは時折何が起きたのかが理解出来ない場面が出てくる。

しかしだ。

「凄いですー。今のは何が起きたのか見えませんでしたー」

そうイリスが疑問を浮かべたら「今のは──」と、姉妹達が完璧に解説するのである。しかも彼女達は、戦士としての技術についてならば術士のミラより知識も経験も豊富である。そのため、より詳しい解説が可能だった。

アルフィナ達とイリスの相性は良さそうだ。ともあれイリスが笑顔になってくれてよかった。そう微笑みつつも予選に術士が出てきたところで、ミラもまた存分に解説するのだった。

ヴァルキリー七姉妹が加わり、より鉄壁となったイリスの部屋。また同時に賑やかとなったそこでは、毎日が騒がしく過ぎていった。

皆一緒になっての魔導テレビ観賞。闘技大会の予選が順調に進んでいく中で、ブルースの登場にミラが歓喜するなどという場面もあった。

特訓の成果に加え、別れて以降もブルースは鍛錬を怠ることなくしっかりと励んでいたようだ。彼の部分召喚は、実戦でもそれなりに通用するレベルにまでなっていた。

優秀な成績で予選を勝ち上がってきたようだ。魔導テレビの画面からでも、その注目度がわかるほどだった。

すなわち、それだけ召喚術のアピールも出来ているという事だ。

実に素晴らしい成果だと、ミラはブルースを絶賛する。

また、一時期共に過ごしたアルフィナ達も、そんなブルースの戦いぶりに感化されたようだ。気付けば庭の方でも出来そうなものを中心として、待機組が訓練を再開していた。

むしろ護衛として任に就いている方が休憩になるという、おかしな状態だ。

だがそこに、これまでとは違う要素が一つ加わった。

イリスだ。アルフィナ達の訓練を興味深そうに見ていた彼女が、その訓練を受けたいなどと言い出したのである。

ミラが語った冒険者の話や、今の状況、そしてひたむきに努力し続けるアルフィナ達。そういった環境の変化が、イリスに決心をさせたようだ。せめて自分の身を守れるくらいに強くなりたいと言ったのだ。

そしてその日から、イリスの特訓も始まった。だが突然強くなって驚かせたいというので、アルマ達にはまだ内緒だ。

今はアルフィナ達の訓練に交じって、色々と学んでいるところである。

なお特訓内容が、そんなイリスに合わせて調整されたため、次女以下の姉妹達は大歓迎ムードだったりする。

そしてそれを維持するために、イリスの気が変わらないように、その指導は懇切丁寧でいて非常に気合の入ったものだった。

と、そのようなミラ達の日常が過ぎていく中で、もう一つの作戦が動き始めていた。

アーク大陸の中央部の東。まるでクレーターのような円形の湾が広がるそこには、海運の中心となるユニエスポートという街があった。

周辺地域に比べ、幾分かはヒルヴェランズ盗賊団の息が薄い街だ。

大きな港があるため人の出入りも激しい街だが、ここ数日の間に一人、また一人と大物がこの地を踏んでいた。

その者達の正体こそ、並行する作戦の要、アトランティス王国が誇る最高戦力『 名も無き四十八将軍(ネームレスライン) 』だ。

一緒になって動くと相当に目立つため、各々で現地集合となっているのだ。

「はい、皆のゴットフリートの到着だ。って、遅れてきた俺が言うのもなんだけど、もしかしてまだ揃ってない?」

そんな街にある大きなホテルの一室。その扉を加減など知らぬとばかりに開いた男──ゴットフリートは、そこに揃った仲間達を見回しながら何か期待したように言う。

けれどそれに答えた男の言葉は、その期待をあっさり斬り捨てるものだった。

「いや、お前が最後だ、のろま。二日もあれば十分な距離を四日もかけやがって。今度はどこで何してやがった、このやろう」

男は、実に苛立たしげだ。けれどその声には、どことなく諦念めいた何かも含まれていた。彼は知っている、というより予想出来ていたのだ。ゴットフリートが遅れてきた理由について。

「いやぁ、それがさ。聞いてくれよ。ほんとは二日で到着出来るはずだったんだよ。こっちが近道だっていう直感が、ビンビンきてさ。けどな、来る途中の山奥に小さな村があったんだけど、なんか凄い暗いの。聞いてみると、牙神様とかいう神様に供物を捧げる日が近づいているって言うんだ。でもな、今年は不作で要求された量を用意出来なかったんだと。するとだ、今度は生贄を要求してきたって言うじゃないか──」

「──あー、もういい。だいたいわかった」

言い訳というよりは、それこそ非常事態だったとばかりに話すゴットフリートを男は止めた。

その理由は単純。それがいつもの事だからだ。

「その牙神様とやらが魔獣か何かで、退治してきたとかだろ、まったく。何がどうしたら毎回毎回出かけるたびにそういった場面に出くわすんだ、馬鹿やろう」

そのように男があり得そうな話を挙げたところ、ゴットフリートは「流石レイヴン、その通りだ!」と、その内容を肯定した。

つまりゴットフリートは、男──レイヴンが予想した通り、小さな村に供物と生贄を要求していた魔獣を討伐してからやってきたというわけだ。ゆえに予定よりも二日ほど遅れたのである。

そしてレイヴンはというと、ゴットフリートがなぜかそういう事にばかり巻き込まれる運命にあると知っていた。否、彼はそういう事に首を突っ込みたがる気質であるのだと諦めていた。

また他の者達も、ゴットフリートの遅刻には慣れっこなようだ。もはや、いつも通りといった様子だ。

なおゴットフリートが言う直感は、むしろヒーローレーダーか何かなのではないかというのが半分本気なレイヴンの予想である。

「まったく……まあ、いい。とっとと座れ。情報を共有するぞ」

「おうよ。で、どんな状況だ? 何人か見当たらないが、お前がここにいるって事はもう準備は進んでいるんだろ?」

ゴットフリートは遅れた事を悪びれる様子もなく空いている席に座ると、こちらもまた、いつも通りといった態度で問う。

レイヴンがいれば、作戦遂行に支障はない。そんな信頼があるのだろう。だからといって遅れていい理由にはならないが、誰もゴットフリートを責める気はないようだった。

それはきっと、彼がいたからこそ救われた者達が大勢いるからだろう。

「ああ、シモーネクリスはニルヴァーナからの情報通りに盗賊共の拠点があるかの調査。ついでに狙撃地点の下見ってところか。あとサイゾーも一緒だな。拠点を確認出来たら、そのまま潜入工作って予定だ。でアルトエリーとハートシュルツは、周辺国の首脳陣と作戦会議中だ」

「なるほど、いつも通りに順調だな!」

「ああ、そうだ。いつも通りだ。お前の遅刻も含めてな」

皮肉交じりに言うレイヴンだが、快活に笑うゴットフリートにとってはどこ吹く風である。

「それならもう、あとは行って潰すだけか。で、作戦開始はいつだ? 今からか!?」

ヒルヴェランズ盗賊団の討伐。それが成されれば、今よりもずっと平和になるだろう。そう信じるゴットフリートは、今すぐでも構わないとばかりなヤル気に満ちていた。

「ったく、それは三人が情報を持って帰ってきてからだ、馬鹿やろう」

溜め息混じりにそう返したレイヴンは、「まずは今わかっている事を、その足りない頭に入れておけ──」と前置きしてから情報の共有という会議を開始した。

現時点における、作戦概要。

まずは一番重要な、盗賊団の本拠地をどうやって制圧するかという点だが、それについては既に決定済みだ。

ここに『名も無き四十八将軍』が十人も揃っているのである。その戦力を全て投入する事こそ最も確実で最も安全な方法といえるだろう。

だが、今すぐには動けない。

それは、周りの準備が完了していないからだ。

「アルトエリーの話によると、完全に展開するまではあと三日ほどかかるそうだ──」

そう言ってレイヴンは、周辺諸国の動向についての情報を、ここに共有する。

ヒルヴェランズ盗賊団による被害に困窮していた国々は、『名も無き四十八将軍』に呼応して出兵を決定した。

その総数は、一万。数の上では盗賊団を上回るほどだ。けれど装備の質が違うため、正面からの激突ともなれば兵士達は敗走を余儀なくされるだろう。

それほどまでに、盗賊団側の武装は強力であるという調査結果が出ている。それもこれも盗賊団の頭領兼『イラ・ムエルテ』最高幹部であるイグナーツが、武具の裏取引まで仕切っていたからだ。

ゆえに正規兵の装備ですら劣るという如何ともしがたい差が生じた。

そんな兵士達が担当するのは、いわば檻の役である。盗賊団の本拠地を包囲するように陣を敷き、誰一人として討ち漏らさないようにするのだ。零れ落ちてきた程度ならば、兵士達でも十分に対応出来るという計算だ。

たとえアトランティス最高戦力のレイヴン達とて、数千人規模となる集団全てに目が届くわけではない。だからこその重要な配置だった。

とはいえ一万という人数を動かすには時間がかかる。加えて包囲を完全なものにするための術具を設置するのにも幾らかの時間がかかるそうだ。

「──というわけで、作戦決行予定は三日後だ。後は誰がどのポイントを攻めるかだが、こいつは三人が戻ってから決める。いいな?」

現時点における作戦の進展度合いを話し終えたレイヴンは、最後にそう締め括った。盗賊団の本拠地を襲撃する際の役割分担は、まだ未定だと。

「俺は、一番でかいところな! 親玉がいるところは俺な!」

ここまで黙って聞いていたのは偉いが、レイヴンが話し終えた矢先に声を上げたのは、やはりゴットフリートだ。

それはもう元気よく、一番の大物と戦う事を希望する。だが、そこには手柄がどうだとか、強い奴と戦いたいだとかいった感情は無かった。ただ、あるのは揺るぎなき正義感のみだ。

世のため人のために、悪名高きヒルヴェランズ盗賊団を討つ。そして、その業を背負う。それが彼の信念なのだ。

「はいはい、私はそれでいいよー。で、私は一番小さいところでお願いね。なるだけ楽なところー」

どこか眠たげな顔で主張するのは、その場に同席する一人の少女、エリュミーゼだ。もはや寝巻きといっても過言ではない若草色のローブを纏う彼女は、言うだけ言って再びテーブルに突っ伏した。何とも気だるげな様子である。

「だから、三人が戻ってきてからって言っているだろ。馬鹿共が」

片やヤル気満々、片やヤル気皆無という極端な二人が盗賊団討伐メンバーという事もあって、レイヴンは既にうんざりした表情を浮かべていた。

とはいえ、くじ引きで決まってしまったのだから仕方がない。レイヴンは己の運の悪さを呪いつつ、ここ数日分の情報も伝えていった。実に律儀な性格である。