軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

パーフェクト学園へ 1

まさかパーフェクト学園に潜入後、1秒でセシルに出くわしてしまうとは予想外すぎて、冷や汗が流れた。

私だとバレれば、死ぬほど怒られるに決まっている。

生徒数を考えても、唯一の知人に会う可能性などかなり低いだろうと高を括っていたのだ。とは言え、私が制服を借りて潜入しているなど夢にも思わないはず。

「お前──…」

それでも、やけにじっと顔を見つめられ、流石にまずいかもしれないと焦り始めた時だった。

「……っ」

何故かセシルは赤面し、顔を逸らしたのだ。どうしたのかと不思議に思ったものの、すぐに気付いてしまう。

俺様ツンデレ純情ボーイであるセシルは元々、レーネのことが好きだったのだ。ただ単純に、好みのタイプの女子に照れているに違いない。

このまま妙に意識されたり、後に探されたりしては困るし、この場からさっさと立ち去るためにも、私は2秒で考えた作戦を実行することにした。

「や、やだあ、ダー君、ごめんね!」

「は? ダ……?」

「私ったらわざとじゃないとは言え、ダー君以外の男の子と触れ合っちゃうなんて……! 許してね?」

「…………」

甘えるような声を出し、吉田の腕に自身の腕を絡める。普段の私とは真逆のキャラ、そして彼氏持ちとなれば、セシルも疑ったり好意を抱いたりはしないはず。

吉田からはゴミを見るかのような、蔑むような視線を向けられているけれど、私は女優だと言い聞かせ、へらりとした笑みを浮かべ続ける。

「本当にごめんなさい! それでは!」

そうして私はセシルに背を向け、ぐいぐいと吉田を引きずりながら歩き、なんとかその場を立ち去った。

適当に突き進んで廊下を曲がり、セシルの姿が見えなくなったところで吉田から腕を離し、息を吐く。

「ごめんね、ダー君。今のは私の従兄弟でして……」

「分かったからそのセンスのない呼び方はやめろ」

とっさに考えたカップルっぽい「ダー君」という愛称は、お気に召さなかったらしい。

とにかく今後はセシルにも気をつけねばと気合を入れ直し、メラニーちゃんにもらったメモを元に、一時限目の教室へと移動する。

魔法史の授業らしく、本当に聞いているだけで良さそうだと思いながら、一番後ろの隅の席に腰を下ろす。

「アンナさんっぽい人、見当たらないなあ」

講堂内はかなり広く何十人もの生徒がいる中、アンナさんの姿を探したものの、桃色の髪は見当たらない。きっと、この授業には出席していないのだろう。

ハートフル学園とは授業内容も違うようで、隣に座る吉田は興味深そうに教科書を捲っている。

やはりその整った容姿のせいか、近くにいる女子生徒達の視線を集めてしまっていた。

「……やっぱり、味方がいると便利なんだけどな」

頬杖をつきペンを唇に乗せながら、今日のこれからの動きについて改めて考えてみる。アンナさんとひとつも授業が被らなかった場合、昼休みが肝になるだろう。

アンナさんの行動パターンを知る、この学園の生徒の味方がいれば楽なのに、なんて思っていた時だった。

「──隣いいか」

「あっ、はい! どうぞ」

反射的に返事をし、やけにイケボだなと何気なく隣に腰を下ろした生徒の顔を見た私は、ぽろりとペンを落としてしまう。

隣には何故か、超絶イケメンが着席していた。

短めの銀髪に切れ長で形の良い目、太陽のように輝く金色の瞳。そんな彼は、褐色の肌が恐ろしいほどに似合っている。どう見ても只者ではない。

長年の乙女ゲーマー、そしてヒロインとしての勘が、彼は攻略対象に違いないと言っている。

続編の舞台であるパーフェクト学園にも、セシルを含めた攻略対象は何人もいるのだ。

間違いなく関わってもいいことがないと判断した私は、教科書を捲り、集中しているアピールをする。

そんな中、褐色イケメンはがさごそと鞄の中を探した後「あ、やべ」と呟いた。嫌な予感しかしない。

「悪い、教科書見せてくんねえ?」

「あ、どうぞ……」

「サンキュ」

ちゃらちゃらとした派手な見た目とは裏腹に、真面目な性格らしい。見た目で判断してしまったことを反省しながら、忘れてしまったものは仕方ないと、おずおずと教科書を差し出す。

むしろ今日限りの私に学ぶ必要はないため、思い切り目の前に置くとイケメンは小さく笑った。そしてぺらぺらと教科書を捲っていき、やがて手を止める。

「これ、メラニー・ウォルシュの教科書か?」

「えっ?」

「あいつもこの授業とってんのに、おかしいな」

教科書に記名していないことは確認したのに、何故バレたのだろうと冷や汗をかいていると、イケメンはとあるページを指差す。

「…………!?」

そこにはなんとびっくり、ハートが飛び交うベンくんとメラニーちゃんの相合傘の落書きがされていたのだ。

メラニーちゃんの乙女っぷりはとても可愛いものの、罠すぎる。ここでバレて不審者扱いされて追い出されては、元も子もない。

私は必死に頭を回転させ、苦し紛れの嘘を吐く。

「わ、私は二人の恋を陰ながら応援する者でして……」

「へえ? 変わった趣味だな」

ふーん、という反応をされ、奇跡的に納得してくれたのかもしれないとホッとしたのも束の間、「つーかさ」とイケメンは続ける。

「お前、うちの生徒じゃないよな? こんな好みの女、一度見たら忘れねーもん。何してんの?」

そう言って笑顔のまま頬杖をついた彼は、耳元の大きなピアスを揺らし、首を傾げた。