軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

宿泊研修 1

あっという間に、宿泊研修当日がやってきた。

「レーネちゃん、その髪飾りかわいいね」

「ありがとう。兄がくれたんだ」

ユリウスが今日のために、と用意してくれた髪飾りで髪を纏めている。宿泊研修のためとは一体? と思いつつも、とても可愛らしいそれを一目で気に入り、身に付けてきた。

朝早くに学園を出て昼過ぎに目的の山に着き、今は麓の綺麗なホテルの割り当てられた部屋にて、集合時間までお菓子片手にお喋りをしている。

「リンジーちゃんの髪型、すっごくかわいい! お化粧もなんかいつもより大人っぽい感じで、似合ってる」

「本当に? 嬉しいわ」

部屋は四人一組で、私はテレーゼとユッテちゃん、リンジーちゃんと同じ部屋だ。部屋割りは自分達で決めることができたため、仲の良い子達と一緒で心の底からほっとした。

私に嫌がらせをしてきていた二人と一緒だったなら、まともに眠ることすらできなかったに違いない。

そんな中、リンジーちゃんが「実はね」と口を開いた。

「わたし、ドミニクに告白しようと思うの」

「ええっ」

ドミニクくんは、同じクラスのBランクのイケメンだ。彼女は入学当初に彼に一目惚れしてからというもの、ずっと想いを寄せていたのだという。

二人がよく会話している姿は見かけていたし、とてもお似合いだとも思っていた。だからこそ、とても素敵だとはしゃいでしまい、みんなに笑われてしまった。恥ずかしい。

そしてなんと今夜、早速告白するつもりらしい。

「がんばってね! 応援してるから!」

「きっと大丈夫よ」

「うんうん、絶対に両思いだと思うもん」

「みんな、ありがとう。頑張るね」

頬をほんのりと赤く染め、照れたように微笑む彼女は抱きしめたくなるくらい可愛らしかった。

きっと、このイベントを機に好きな異性と交流したり、告白をしたりする人も少なくないのだろう。

「レーネちゃんは、好きな人いないの?」

「うん。困ったことにできる気配ゼロ」

「なんだっけ、体育祭で声を掛けてきた人は?」

「……避けられてるような気がするんだよね」

彼に対して何かしてしまった記憶はないし、もしかすると他にいいなと思う子ができたのかもしれない。まあ、別に気にはしていないけれど。

「テレーゼ様は?」

「私、10は歳上じゃないと嫌なのよね」

「わあ……そんな感じがします……!」

そう、私もつい先日知ったのだけれど、彼女は歳上好きだったのだ。落ち着いていて大人っぽい彼女なら、ヴィリーのような同級生など、子供に見えているに違いない。

「レーネちゃん、私達二人はときめきを探そう!」

「そ、そうだね!」

物凄いやる気のユッテちゃんに両手をぎゅっと握られ、私はこの二日間、ときめきを探すことになったのだった。

◇◇◇

「あっ! 私の一番のときめき発見!」

「……頭でも打ったか?」

学年全体でのオリエンテーション的なものを終え、早速屋外での夕食作りがスタートした。

同じ班の生徒の一人が、打ち上げで使わせて頂いたレストランの家の子で、料理が得意だという彼を中心に作業していくことになった。私はヴィリーの見張りと隔離を兼ねて、彼と枝を拾いにいくことにする。

その途中、料理をしている吉田と王子を発見した。今日の王子は挨拶を返してくれて嬉しくなる。彼も宿泊研修で、実はテンションが上がっているのかもしれない。

「わあ吉田、手際良いね」

「これくらい普通だろう。お前はどこに行くんだ」

「私はこれから枝を拾いにいくよ」

「絶対に一人で行動するなよ。木の枝は手を切りやすいから

気を付けろ。枝は乾燥しているものを選べ」

「分かったよママ、ありがとう」

「ママではない」

今日も彼への愛を再確認し、私のときめきはもうこれで十分だと思いながら、吉田達と別れ林の方へと向かう。

そしてヴィリーとぽつりぽつりと会話をしながら、私は木の枝や落ち葉をせっせと集めていた。

「うっわああっ!」

「うおっ!?」

そんな中、何気なく拾った落ち葉の裏に大きなカラフルな虫が付いていて、私は悲しいくらいに可愛くない悲鳴を上げながら尻餅をつきそうになる。

するとすかさず、ヴィリーが後ろからしっかりと抱きとめてくれて。「お前、ほんと軽いな」「あとは俺がやるから、その辺に座ってろ」なんて言われてしまった。

お礼を言い、大人しく綺麗めな切り株の上に腰を下ろした私は、ぼんやりとヴィリーを見つめる。彼は色々と雑だけれど優しい。そして時々、無駄に男らしくて格好いいのだ。

先日も彼が他クラスの女子生徒に呼び出され、告白をされていたのを噂で聞いた。やはり彼はモテるらしい。

「ヴィリーっていい人だよね」

「まあな。ていうかお前、本当に何も思い出さねえの?」

「うん。さっぱり」

一番最初に頭に浮かんだ、階段から落ちていく瞬間の映像以外は何も思い出せていない。あの金髪の少女が、ジェニーだったと言われても今なら納得する。

「私とヴィリーって、元々話したことあった?」

「ああ。うちのクラスだと俺が一番、お前と話をしてたんじゃないか?」

まさかすぎるその話に、私の口からは「えっ」という間の抜けた声が漏れた。初耳だ。

「お前がいじめられてんの、何回か助けてやってたし」

「そうなんだ……」

「お礼って言って、こっそり菓子を貰ったことある」

「ええっ」

「あれ、美味かったんだよなー」

かなり内気だったらしいレーネが、そんなことをしていたなんてと驚いてしまう。もしかすると彼女は、かなりヴィリーを慕っていたのかもしれない。

「助けてくれてありがとう、覚えてなくてごめん。ヴィリーってたまに本気で腹立つけど、本当に優しいね」

「親父に美人には優しくしろって、ガキの頃からしつこく言われてたからな」

「……私のこと、美人だと思ってたの?」

「お前、かわいいじゃん。わりと好み」

当たり前のようにそんなことを言われ、ついどきりとしてしまう。ありがとう、と返せば「おー」と彼は笑って。

……私が本当に15歳だったなら、こういう人を好きになっていたのかもしれないと、なんとなく思った。

流石に精神年齢が少し上の今は、恋愛対象としては見られないけれど。もちろん、友人として彼のことは大好きだ。

「あ、ヴィリーってドミニクくんと同じ部屋だよね」

「ん? そうだけど」

「実はね、夜にリンジーちゃんとドミニクくんを二人きりにしたいんだ。協力してくれない?」

そうして私は、事前にみんなで考えていた作戦内容をヴィリーに説明し始めたのだった。