軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

まさか続きの個人戦編 1

そしていよいよ、個人戦の日がやってきてしまった。

準決勝と決勝戦以外の試合は三試合ずつ同時に行われるため、どうか私以外の試合が大盛り上がりして、観客の注目がそちらへ向くことを心から願っている。

「どうしよう、緊張で死にそうになってきた」

「レーネはこれまで頑張ってきたから大丈夫だよ、やれるだけのことをやっておいで」

ずっと一緒に練習をしていたユリウスがそう言ってくれたお蔭で、だいぶ心を落ち着けることができた気がする。

今更焦ったり緊張したりしても強くなれるわけではないし、全力を出すことだけを意識して、最初で最後のこの舞台を楽しみたいと思っていた。

「あ、もう対戦表が張り出されてる」

対戦相手は当日の朝、競技場前の掲示板に張り出されることになっている。確認してみたところ私の相手はパーフェクト学園三年生、それもAランクの女子生徒だった。

それからはユリウスと一緒に軽く準備運動や作戦の再確認をしているうちに、あっという間に私の出番がやってきた。

「頑張ってね」

「ありがとう、行ってきます!」

私は午前中の三試合目で、緊張してしまいながら競技場の中心にあるステージへと向かう。

既にそこには相手選手の姿があり、まっすぐに切り揃えられた栗色の髪が似合うクールビューティーなお姉さんで、かなり強そうなオーラが漂っている。

けれど、ランクが高いからと言って対人戦闘が必ずしも優れているわけではない。ユリウス相手にこれまで猛練習してきたこともあって、実践経験なら劣らない自信はある。

審判の指示に従ってステージに上がると、観客席で応援してくれている友人達の姿が見えた。

「……よし、頑張ろう」

改めて気合を入れながら、手元のTKGを握りしめる。相手は武器を使わないタイプのようで、自分の魔法のみで攻撃をするようだった。

やがて試合開始の合図が鳴り響き、すぐに相手と距離を取って弓を構える。そして連続で軽く矢を放ったところ、相手はすぐに防御魔法を展開して弾いた。

『まずは相手の防御魔法の展開速度と有効範囲、強度を確認すること』

ユリウスの教えを思い出しながらしっかりと見定めつつ、次の攻撃の準備をする。

とにかく相手にペースを握られないよう、距離を詰められないように意識しながら、次々と攻撃を放っていく。相手も時折、遠距離攻撃を放ってくるのを避け、そしてまた攻撃を放つ。

──油断しているわけでも慢心しているわけでもない。

それでも一番に感じたのは「何もかもが遅い」ということだった。

ユリウスという優れた魔法使いを相手に日々練習していたことで、反応速度が上がり、相手の全ての行動が遅く感じられるのだと気付く。

そして私の行動速度も自然と上がっていたようで、確実に攻める側へ回ることができていた。

「──っ」

放った矢が相手の左足に当たり、かなりの痛みが走ったのが窺えた。このステージ上では実際に怪我はしないと分かっていても、つい攻撃の手を緩めそうになる。

けれど私は相手に情けをかけられるほどの立場じゃないことも、試合の中で十分理解していた。

速度は遅く感じられても、流石のAランクで相手の防御魔法の範囲も強度もかなり高い。それでいて攻撃力もかなり高いため、一度でもまともに食らえばやられてしまうだろう。

「……あと少し……」

相手の数手先を読みながら、攻撃と防御を繰り返す。

『今のレーネの強みは魔力量の多さだよ。高ランクの生徒にも劣らない』

『それでいて今回のように範囲が決まっている場合、かなりのアドバンテージになる』

『相手を戦闘不能にすることだけが勝つ方法じゃないから』

脳裏にユリウスの言葉が蘇る。

『相手が避けきれないほど、広範囲の攻撃を放てばいい』

『そのためにレーネに必要なのは、魔力を込めるための準備時間になる』

相手のペースが崩れていき、少しずつ魔法を繰り出すまでの時間が伸びているのを感じていた。

そして私はもう、自分に必要な時間を把握している。

「──今だ」

やがて生まれた相手の攻撃から防御までの隙に、再度TKGを構え、一気に全力で魔力を込めながら弓を引き絞る。魔力を込める速度を上げる特訓だって、幾度となく繰り返してきた。

私の魔力により、水と風を纏った矢はどんどん巨大化していく。私は普通に水魔法と風魔法の攻撃を放つより、TKGを通した方が格段に威力は跳ね上がるのは実証済みだ。

「……嘘、でしょう」

相手はそんな私を見て、切れ長の両目を見開く。これまでの攻撃は全てあえて一定の威力と速度以下を保っていたため、私の全力があれだと思い込んでいたに違いない。

だからこそ相手も、それに合わせた程度の防御魔法の準備しかしていないはず。今回の個人戦で一度だけでも勝つための作戦だからこそ、もう使えないことも分かっている。

「くっ……!」

すぐに相手も我に返り、全力で防御魔法を展開しようと両手を前に出す。

けれどそれよりもほんの少しだけ速く、私は巨大化した矢を放った。

「きゃあああっ!」

防ぎきれなかった相手はそのまま風と水の勢いに押され、ステージ上から落ちていく。

同時に試合終了のピーッという笛の音が鳴り響き、直後会場内は大きな歓声に包まれた。