軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

交流会・涙の水竜ボス討伐編 5

「アンナさん、今日はほんっとうにありがとう! お蔭で無事に指輪も手に入れられました」

「ううん、杏奈は普段レーネちゃんと違ってぬるま湯に浸かって暮らしてるから、今日はドキドキの大冒険って感じで超楽しかったよ! またやりたいなあ」

帰り道、馬車に揺られながら隣に座るアンナさんは、興奮した様子で両手を握りしめている。

私的には二度とごめんだという気持ちだけれど、アンナさんが楽しめたのなら何よりだ。

「まあ、あのレベルの魔物と戦う機会ってあんまりねえし、悪くはなかったな」

吉田と並んで座っているセシルも満更でもなかったようで、頬杖をつき、薄く微笑みながら窓の外を眺めている。

夕陽に染まるその横顔は絵画かと思うほど綺麗で、鼻や口元はほんの少しだけユリウスに似ている気がしたけれど、口に出すと怒られそうなので黙っておく。

「セシル、本当にありがとう。セシルがいなかったら、絶対に無理だったと思う」

「は? 何だよいきなり改まって」

セシルは優秀だと聞いていたけれど、同い年とは思えないほど魔法使いとして優れており、とても頼れる存在だと今回の一件で知ることができた。

魔法の技術はもちろん、どんな状況にも冷静に対応しつつ常に私達全員のことまで気にかけてくれていて、胸を打たれた。途中、何度セシルの言葉に励まされたか分からない。

「セシルって本当にすごいんだね! 最後なんてすごすぎてよく分からなかったもん!」

初対面でブスだとかバカだとか暴言を吐かれたことで印象は最悪だったものの、今は心から感謝をしているし、尊敬もしている。元のレーネにも現在のセシルを見せてあげたいと、改めて思う。

「フン、今さら気付いたのかよ」

「だって記憶喪失後にあの出会い方は、内面を知ろうとする気どころか関わる気も無くすよ」

「急に真っ当な指摘をするな。……まあ、俺はすごいからな。また何かあれば言え」

「うん、ありがとう! 今度、絶対にお礼をさせてね!」

セシルは不器用で口も態度も悪いけれど、根は優しくて面倒見の良い子なのだろう。そしてセシルの隣に座り、少しだけ眠そうにしている吉田にもたくさん助けてもらった。

「吉田も本当にありがとう! こんな訳の分からないことに付き合わせてごめんね」

「いつものことだろう、今更だ」

まるで大したことではないように言う吉田の優しさに、私はいつも救われている。何よりあの沼に行った理由も、増えた指輪に関しても二人が触れることはなく、とてもありがたかった。

なお、現在は指輪が二つ並んでいる状態だけれど、まだギリギリ悪目立ちするレベルではない。

三つになったあたりから、一気にセンスのないダサい下品な人になっていくに違いない。辛い。

「つーか吉田もSランクなだけあって、結構やるじゃん。すごいやる気だったみたいだしな」

「やる気? どういう意味だ?」

「あっ、みんな見て! 夕焼けがすっごく綺麗だよ!」

「は? 別によく見れるだろ、あれくらい」

魔道具を通して吉田の意志を全く汲み取れなかった結果、セシルに適当なことを言っていたのがバレてしまうため、慌てて誤魔化しておく。

「でも、またこの四人で何かできたらいいな! 最後は息ぴったりだったよね」

「次はまともな場所での集まりにしてくれ」

「えー! 杏奈はまたハラハラできる場所がいいなあ」

「やっぱアンナは省こうぜ」

そんな話をしているうちに、ゆるやかな眠気が襲ってきた。ふわあと大きな欠伸をすると、見事に全員にうつり、三人もそれぞれ欠伸をしている。

あれほど泳いで魔法を使って戦ったのだから、疲れ果てて眠くなるのも当然だろう。

そして学園のあたりに到着する頃には、いつの間にか全員で仲良く爆睡してしまっていた。

◇◇◇

三人を送って屋敷へ帰宅すると、玄関ホールには待ち構えていたようにユリウスが立っていた。

口角は上がっているものの、切れ長の目は全く笑っておらず、嫌な予感しかしない。

「おかえり、レーネちゃん。ずいぶん遅かったね?」

「あっ……ただいま帰りました……」

「風呂から上がったら、俺の部屋にまっすぐおいで」

「ハイ」

いつも私は夜寝る前にお風呂に入っていて、ユリウスもそれを知っているはず。

けれど今日は帰宅後すぐに入ろうとしていることがバレており、予感は確信へと変わっていく。

湖に長く浸かっていたことで軋んでいる髪をしっかり洗い、丁寧にトリートメントした後、私は死刑台に登るような気持ちでユリウスの部屋を訪れた。

部屋の中に通された後は隣に座るよう促され、ソファの上で正座をしておく。

「今日、俺達のグループがどんな結果だったか知ってる?」

「…………」

同じ場所にいたとはいえ、自分達のことで精一杯で、もちろん競技の結果など知る由もない。

競技場で応援していた設定は崩壊してしまった──というより、この質問をされた時点で全て筒抜けなのだと悟った。