軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

もう少しだけ待ってほしい 2

とはいえ、私の挙動不審さも大概で、このままではユリウスに嫌な思いをさせてしまう。そう考えた私は恥を捨てて、正直に言うことにした。

「ごめんなさい! 恋人になったのを意識しすぎて恥ずかしくて、まともに顔を見られません! も、もちろんユリウスのことは好きです!」

座った状態で頭を下げながら、胸の内をぶちまける。

すると直後、ユリウスの笑い声が室内に響いた。

「あはは、かわいすぎない? そんな気はしてたけど、そこまでストレートに言われるとは思わなかったよ」

恥ずかしさはあるものの、不快になることはなかったようでほっとする。

「俺、レーネの正直なところがやっぱり好きだな」

「愚か者ですみません……」

「いいよ、ちゃんと俺のこと好きって言ってくれたし。俺も昨日の出来事が都合の良い妄想だったらどうしようって、不安になってたんだ」

ティーカップを手に困ったように微笑むユリウスが、そんなことを思っていたなんて想像もしていなかった。

「なんか、意外だった。ユリウスもそんなことを気にしたりするんだなあって」

「初恋だからね」

「…………っ」

いちいち破壊力が強すぎて、胸の辺りを思わず押さえてしまう。恋愛、心臓への負担がありすぎる。

「ゆっくり進んでいこう? 俺はレーネが好きだって言ってくれただけで嬉しいし」

「あ、ありがとう……!」

そう言ってもらえて安堵しつつ、今後は私なりのペースで頑張っていこうと誓った──けれど。

それからしばらく一緒に過ごしたものの一向にドキドキは収まらず、冒頭に至る。

「やっぱり寂しいんだけど、もう少し構ってほしいな」

「あの、しりとりくらいなら……」

「健全すぎない?」

二次元にしか恋をしたことがないまま二十歳を超え、拗らせてしまっている以上、なかなか難しいもので。

心の底から申し訳ないとは思いつつ、今日だけはどうか許してほしい。

「じゃあこっち向かなくていいから、抱っこさせて」

「……だっこ?」

「そう」

私が返事をする前にユリウスは私の身体に腕を回し、ひょいと抱き上げた。

「ま、待って」

「無理」

ユリウスの膝の上に座る体勢になっており、後ろから抱きしめられる体勢になる。確かに顔は見ずに済んでいるけれど、間違いなく顔を見るよりも恥ずかしい。

「……あー、ほんと好きだな」

後ろから肩に顔を埋められ、そんなことを呟かれてはもう、限界だった。ユリウスの呼吸、指先まで全てが気になって、全身が熱を帯びていく。

これまでだって好きだと言われたことも、こうして抱きしめられたことも何度もあったけれど、今までとはやっぱり違う。

関係に名前が付くだけでこんなにも変わるのだと、身をもって初めて知った。

落ち着かなくて、働かない頭で必死に話題を探す。

「つ、付き合うって何をするのかな」

「何をするんだろうね。レーネは何をしたい?」

「なんだろう……デートとか?」

「いいね、たくさんしよっか」

「あと、イベントは一緒に過ごすとか」

「うん。そうしよう」

私のありふれたような案にも、ユリウスはひどく優しい声音で肯定してくれる。

その様子からも好かれているというのが実感できて、また胸が高鳴るのが分かった。

「ユリウスは何かしたいこと、ないの?」

「俺? 俺はレーネといられたら何でもいいよ」

「私だけの案だと不安だし、ユリウスも考えておいて」

「分かった」

ユリウスの声音はとても楽しげなもので、私も嬉しくなる。恋人という関係になったことで、これまで以上に楽しく過ごせたらいいなと思う。

「本当にごめんね、経験不足のせいで安っぽいツンデレみたいな態度になってしまって……そのうち慣れると思うから、もうちょっと待ってね」

「いいよ。俺と全部経験すればいいから」

ユリウスはさらりと言ってのけたけれど、かなりの爆弾発言な気がする。

とにかく習うより慣れろだと思い、自分の身体に回されている腕に、そっと手を重ねてみる。

すると抱きしめられる腕に力が込められ、耳元でユリウスがくすっと笑ったのが分かった。

「えらいね、その調子」

この程度で褒められるなんて、生まれたての赤ん坊か私くらいではないだろうか。

やっぱりユリウスは優しいなと思っていると、片手で首筋につんと触れられた。

「それにレーネちゃん、お洒落してくれたんだね。髪を上げてるのもかわいい」

「べ、別にいつも通りですけれども」

「嘘つき」

毎日顔を合わせているユリウスを欺けるはずもなく、あっさりとバレてしまう。とても恥ずかしいものの、ユリウスは嬉しそうで、大人しく頷いておく。

「俺もレーネにかっこいいって思ってもらえるように頑張らないと」

「それ以上とかあるの? 人間の限界を超えてない?」

「髪型とか、たまには変えてみようかな」

そう言って前髪をかき上げて見せる姿からは、とんでもない色気が溢れ出ていて、今の私にはあまりにも毒だった。口から血を吐き出しそうになる。

慌てて顔を逸らすと、逃げるなとでも言いたげに頬を掴まれた。