軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最初で最後の告白を 4

「……好きだよ。どうしようもないくらい好きだ」

その言葉が耳に届いた瞬間、視界がぼやけた。同時に自分が不安を抱いていたことにも気が付く。

ユリウスに好かれていると分かっていても、告白をするのは怖くて仕方なかったのだと。

「大好き」

「私もだよ」

「……ごめん、好きしかもう出てこない」

その言葉が一番、ユリウスの喜びが伝わってきて、私の気持ちもちゃんと届いたのだろう。

嬉しくて安心して、肩の力が抜けていく。そのままユリウスに体重を預けると、よりきつく抱きしめられた。

「だめだ、本当に嬉しい。多少は異性として好かれてる気がしてたけど、告白までしてもらえるとは思ってなかったから」

「ユリウスが思ってるより、ずっと好きだと思うよ」

「少し泣きそう」

「ふふ」

いつだって余裕たっぷりなユリウスのこんな姿を見られるのは、きっと私だけだ。

そう思うと余計に愛しさが込み上げてきて、私も背中に回す腕に力を込めた。

「いつから俺のこと、好きだったの?」

「はっきり自覚したのは誕生日の時かな、でももっと前から好きだったと思う」

誕生日の夜の「大好き」も告白のつもりだったと話すと、ユリウスは大きな溜め息を吐いた。

「……もったいないな」

「もったいない?」

「人生のうちレーネの恋人でいられる日数を損した」

「なにそれ」

笑ってしまいながらも、私はあの日失敗して良かったと思っている。今こうして、自分の気持ちをしっかりと伝えられる告白ができたのだから。

そしてふと、ひとつのワードに引っ掛かりを覚えた。

「こ、恋人……」

「違った?」

「い、いえ! そうだと思います!」

両思いでお互いに好きだと伝えたのだから、恋人関係になることは分かっている。

それでもなんだか落ち着かなくて、照れてしまう。

「じゃあ今日から恋人ね」

「うっ……」

これ以上の甘い空気に耐えきれそうになかった恋愛素人の私は「そうだ」とユリウスから離れた。

「指輪付けてみようよ! 私が嵌めてあげる」

「ありがとう。それにしても男前すぎない? 俺がしたかったことも先越されちゃったんだけど」

困ったように笑い、ユリウスは箱から小さい方の指輪を取り出す。

「先に俺からレーネに付けさせて」

「じ、じゃあお願いします。右手はもう指輪がついてるから、左手になっちゃうんだけど……」

私の右手の薬指には宿泊研修からずっと嵌まったままの呪いの指輪があるため、自然と左手の薬指になってしまう。アンナさんはレアアイテムと言っていたけれど、未だに謎に包まれている。

ゆっくりと優しい手つきで、指輪が指先から通されていく。なんだか結婚式みたいで恥ずかしいと思っていると、ユリウスは柔らかく目を細めた。

「ちゃんと責任は取るから」

「……っ」

ユリウスも本当に私とこの先ずっと一緒にいてくれるつもりだというのが、熱を帯びた瞳から伝わってきて、心臓がぎゅっと締め付けられる。

自身の薬指で輝く指輪を見ていると、多幸感が全身に広がっていくのを感じた。

私も小箱から指輪を取り出し、ユリウスの綺麗な指にそっと嵌める。

「わあ、良かった! ぴったり──」

ほっとしたのも束の間、ユリウスが真剣な表情で私を見つめていることに気が付いた。

「ユリウス?」

「……俺、本当にもう一生離してあげないよ。レーネに他に好きな男ができたとしても、絶対に」

「もう、そんな日は来ないから安心して」

「浮気したら、相手を殺すから」

「私の話、聞いてた?」

ユリウスには時間をかけて伝えるとして、私の中にはこの先、ユリウス以上の人なんて見つからないという確信があった。

こんな風に誰かを好きになることも、きっとない。

それからユリウスは指に嵌められた指輪を眺めていたけれど、やがて顔を上げた。

「ねえ、キスしてもいい?」

「えっ」

縋るような眼差しを向けられ、これまでのものとは違うと察してしまう。

「そ、そういった接触は、少し待ってもらえたら……」

プロポーズまがいのことはしたものの、まだそこまでの心の準備はできていない。もちろん嫌ではないと必死に伝えれば、ユリウスはくすりと笑う。

「分かった。じゃあこれだけ」

「……っ」

そして、私の頬に軽く唇を押し当てた。ユリウスの声音も手つきも、何もかもが今までよりもずっと優しくて甘くて、ふわふわする。

本当に両思いになったのだと実感して、恥ずかしくてくすぐったくなった。

「わっ」

不意にユリウスに抱き上げられ、慌ててしがみつく。顔と顔が近づき、大好きなアイスブルーの瞳と視線が絡んだ。

「ありがとう。レーネのお蔭で、人生で一番幸せな誕生日になったよ」

眩しい笑顔からは、ユリウスが心からそう思ってくれているのが伝わってくる。

先日の「誕生日なんてこなくていい」という言葉を思い出し、嬉しくてまた少し涙腺が緩んだ。

それでも涙を堪えて、めいっぱい幸せな笑みを返す。

「良かった! 毎年、一緒に一番を更新していこうね」

するとユリウスは一瞬、切れ長の目を見開いた後、眉尻を下げて微笑んだ。

「……レーネのそういうところを、俺は好きになったんだろうな」

──来年も再来年もずっとずっと、ユリウスにとって誕生日が特別なものであってほしい。

そんな思いを胸に、ユリウスに思い切り抱きついた。