軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

きょうだい 4

翌日の放課後、全ての試験を終えた私は教室で吉田の隣の席に座り、吉田と向かい合っていた。

「よ、吉田……これって青色だよね……?」

「ああ」

「ねえ吉田、これ本当に青? 緑じゃないよね?」

「ああ」

「ブ、ブルー?」

「ああ。そうだ」

今しがた色の変わった自身の胸元のブローチを指差しながら、壊れたラジオのように「これは青色か?」という問いを何度も何度も繰り返す。

いい加減にしろと怒るのが普通だろうに、吉田は穏やかな様子で何度も肯定してくれる。

そうしてようやく、私は目の前のブローチの色の変化が現実だと実感した。

「よ、よしだ……」

「お前はCランクだ、安心しろ。よくやったな」

「う、うわああん……」

きっと大丈夫だと分かっていても、本当にCランクになれたと思うと嬉しくて安心して、感極まってしまう。

頑張って良かったと、視界が揺れる。吉田のハンカチで涙と鼻水を拭っていると、みんなも側に来てくれた。

「レーネ、おめでとう! 本当に良かったわ」

「レーネちゃん、頑張ってたもんね! おめでとう」

「…………」

「み、みんなもありがとう! あと、おめでとう!」

お祝いの言葉をくれるテレーゼとラインハルト、小さく微笑み頷いてくれる王子。もちろん三人とも高ランクをキープしていて、流石だとしか言いようがない。

前回のランク試験の結果もあってか、みんなも私のブローチを見て安堵の表情を浮かべていた。優しい友人達のことが本当に大切で大好きだと、心から思う。

「レーネ!」

そんな中、どたばたと足音が近づいてきて、ヴィリーに飛びつくように抱きつかれたことで、視界が燃えるような赤でいっぱいになった。

ふわりとお菓子みたいな甘い香りが、鼻をくすぐる。

ヴィリーは私の両腕を掴んでパッと離れると、自身の胸元へ視線を向けた。

「なあ見てくれよ! これ!」

「う、うわあああ!」

彼の胸元ではBランクの証である紫色のブローチが輝いていて、口からは上擦った声が漏れる。

一緒に頑張ってきた仲間であるヴィリーのランクも上がったのが、自分のことのように嬉しい。

「本当に良かったね、おめでとう!」

「お前もCランクになってんじゃん! 良かったな!」

「うん、お互いやったね!」

これからも一緒に頑張っていこうと熱い友情のハグを返した後、ヴィリーは他クラスの友達にも報告してくると言って教室を飛び出して行った。

嵐みたいだと笑みがこぼれながら、隣で帰る支度をする吉田に向かって両手を広げる。

「吉田もする?」

「いらん」

「ですよね……って、ええっ!?」

そうして私はようやく、吉田の変化に気が付く。

親の顔よりも見慣れたはずの吉田の姿がいつもよりも輝いて見えるのは、まさか。

「よ、吉田……Sランクおめでとう!」

「今更か」

なんと吉田の胸元のブローチはこれまで通りの銀色ではなく、金色に輝いている。

自分のことで精一杯だったのと、吉田があまりにもいつも通りの様子だったから気付くのが遅れてしまった。

──Aランクだってもちろんすごいけれど、Sランクとの間には大きな差があると聞いている。

ハートフル学園は相対評価のため各ランクの人数が限られていて、中でもSランクの人数は驚くほど少ない。

周りにSランクが多いせいで感覚が麻痺しそうになるけれど、とにかくSランクというのは限りなく貴重で、とてもすごいことだった。

だからこそ、吉田がSランクになったことに、私は興奮や感動を抑えられなくなる。

「吉田、本当にすごいね! おめでとう! 私まですっごく嬉しい! とってもすごいよ!」

語彙力を失ってしまいながらも嬉しいという気持ちを必死に伝えると、吉田はふっと口元を緩めた。

私は吉田のこのどこか呆れたような、けれど優しさに満ちた笑顔が好きだった。

「ありがとう」

素直にお礼を言われ、何故か感極まってしまう。

「……お前達を見ていたら、俺も頑張ろうと──って、何故また泣くんだ」

「そ、そんな……ツンがない吉田とかもうただのスパダリじゃん……やめてよ……」

「何を言っているんだお前は」

やはりこの世界に来てから私は、涙腺が弱くなってしまった気がする。

くっしゃくしゃになった吉田のハンカチで再び涙を拭っていると、ドアの辺りがきゃあっと騒がしくなった。

視線を向けると予想通りルカの姿があり、こちらへまっすぐ向かってくる。

「良かった、Cランクになれたんだね! 俺のせいで駄目だったらどうしようかと思った」

私のブローチへ視線を向けてほっとした表情を浮かべたルカは、かなり心配してくれていたらしい。

確かに昨日の出来事により前日の勉強はさっぱりできなかったけれど、これまでしっかり努力してきた分、一日くらいは問題なかった。

「ルカはSランクだったんだね! すごいよ」

「まあね」

ルカは本気でこれくらいは当たり前だと思っているようで、取り立てて喜ぶ様子もない。

そんな中、上機嫌のヴィリーが教室へ戻ってきて、私の友人達が揃ったことを確認したルカは、きゅっと私の手を掴んだ。

「姉さん、今でいいかな」

「うん。いいと思う」

ルカがみんなに嘘を吐き、迷惑をかけたことを謝ろうとしているのだと察した。

自らの行いを告白して謝るというのはとても勇気がいることだし、早速行動しようとするルカは偉い。頑張ってねという気持ちを込めて、ルカの手を握り返す。

「姉さん?」

すると私達のやりとりが聞こえていたらしいヴィリーが、不思議そうに首を傾げる。

ちょうどいいタイミングだと思い、まずはルカが話をしやすいよう私が流れを作ろうと口を開いた。

「みんなに聞いてほしいことがあるんだけど……実は私とルカ、実の姉弟なんだ」

「えっ?」

綺麗に、数人の戸惑いの声が重なる。