軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

狩猟大会 1

そして、いよいよ狩猟大会当日を迎えた。

ベルマン山に現地集合の予定のため、私はばっちり身支度を整え、今はユリウスと共に馬車に揺られている。

「わあ、いい天気! 絶好の狩り日和だね」

「そうだね。これなら問題なさそうだ」

窓の外の空は青く澄み切っていて、雲ひとつない。雪山でも過ごしやすそうだと、ほっとする。

「すっごく楽しみ。早起きしてお昼も作ってきたし」

「ありがとう。俺も楽しみだな」

実はみんなで一緒に外で食べられるようにと、お弁当を作ってきたのだ。

予定では昼頃に狩りを終えることになっているし、午後からはピクニック気分でのんびり過ごしたい。

料理長と本気で作ったお弁当には、自信がある。とは言え、ミレーヌ様やアーノルドさんは生粋の上位貴族のため口に合うかどうか、少しドキドキしていた。

ドキドキと言えば、隣に座るユリウスだ。じっと見つめていると視線に気付いたらしく、軽く首を傾げた。

「そんなに見つめて、どうかした?」

「今日もびっくりレベルで格好いいなあと思いまして」

狩猟服に身を包み、豪華なファーのついたコートを肩からかける姿は、王族かというほどに輝いている。

その上、今日はつばの広い黒い帽子を被っており、どの角度から見ても意味が分からないくらい格好良い。

「ありがとう、レーネもよく似合っててかわいいよ」

「ふふ、ミレーヌ様にいただいたんだ」

ちなみに私もファーのついたベレー帽的なものを被っており、とてもかわいい。狩猟服もミレーヌ様にいただいたもので、全身お洒落上級者すぎて浮かれてしまう。

他の三人も間違いなく眩しいだろうし、ちょっとしたファッションショーができそうだ。

「一昨日の食事会も楽しかったよね。吉田に冷静に怒られるアーノルドさん、面白すぎたもん」

「あの二人、正反対でいいコンビになると思うな」

そう、一昨日は例の五人でのお食事会が行われ、それはもう楽しい時間を過ごしていた。

このメンバーなら、今日は最高の1日になる。そんな確信があった。

やがて馬車が停まりTKGを背負って降りると、目の前に聳え立つベルマン山を見上げた。

予想よりも高く大きく、白に染まった美しい姿に「おお……」と感嘆の声が漏れる。

ユリウスに手を引かれ、山を登って行きなだらかな場所に出ると、そこは大勢の人々で溢れていた。

狩猟服に身を包んだ男性達と、美しく着飾った女性達により、真冬の雪山とは思えないくらいの華やかさだ。お祭りみたいな賑やかな雰囲気に、胸が弾む。

「すごい、外なのに全然寒くない」

「ね。俺もこれがなかったら、絶対に参加してないよ」

流石ミレーヌ様の防寒のための魔法がかかった超高級服だと、感動する。上にコートは羽織っているけれど、なくても問題がない気さえした。

まずは主催者であるシアースミス公爵に挨拶をするというユリウスについていき、人混みの中を歩いていく。

「まあ、ユリウス様だわ! 今日もなんて素敵なの」

「最近あまり社交の場でもお見かけしないものね」

やはりユリウスは目立っており、すれ違う同世代らしい貴族令嬢達のそんな声も聞こえてくる。初めて見る顔ぶれも多く、学園外にもファンは多いみたいだった。

この世界での社交デビューは16歳で、来月に誕生日を控える私は来年デビュタントを迎えることになる。

ジェニーと一緒だろうし、色々比較されるはず。マナーやダンスなんかもしっかり学ばなければと思うと、来年も忙しくなりそうだ。

「それで、一緒にいらっしゃるのはどなた?」

「初めてお見かけする顔だわ。ずいぶん親しげね」

こうして噂されることにも慣れているのか、ユリウスは全く気にする様子もない。私も気にせず歩いているとふと、人混みの中に見覚えのある紺色を見つけた。

「あっ、吉田! おはよう!」

「来たか」

狩猟服というより騎士服に近い服装をした吉田は、しっかりイケメンだった。その腰には剣が差されている。

「はっ……まさかそれはエクセレントナイト──いや今は朝だからモーニングソード?」

「そのナイトではない、騎士の方だ」

「かっこいいね! 吉田によく似合ってる!」

そうして話をしていると「おや、君は」という低い声が降ってくる。ぱっと顔を上げるとそこには、夏休みぶりの吉田父の姿があった。

先日はお忍び旅行中のため私服だったものの、今日は騎士団の制服を着ているせいか、全く雰囲気が違う。

騎士団長ともなると、制服の豪華さも周りにいる人々とは違い、とてつもない風格とオーラを纏っていた。

「おはようございます、今日はマクシミリアンくんをお借りします!」

「ああ、おはよう。こちらこそ息子をよろしく頼むよ」

「はい! 一生大切にします」

「そこまでは俺がよろしく頼まないんだが」

けれど、相変わらず物腰も声音も柔らかく穏やかで、つられて笑顔になってしまうような素敵な人柄だった。

「学園でのマクシミリアンはどうだい?」

「とてもしっかりしていて優しくて、みんなから好かれています。私ももちろん大好きです!」

「……お前は本当、恥ずかしい奴だな」

素直な気持ちを伝えると、吉田は照れたのか顔を逸らしてメガネを押し上げている。

「この間も私が悲しい時、いち早く気づいて王子様みたいに連れ出してくれて、励ましてくれたんです!」

「余計な話をせんでいい。そして盛るな」

吉田父は嬉しそうに何度も相槌を打ちながら話を聞いてくれていたけれど、やがて「ああ」と何かを思い出したように口を開いた。

「先日、学園から帰宅後、元気がなかったのは君に悲しいことがあったからなんだね」

「えっ……? よ、吉田…………」