軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

少しずつ、少しずつ 1

ユッテちゃんやクラスの女の子達とも女子会をする約束をし、私は初めての冬休みを迎えた。

今日も朝から冬休みの宿題をし、午後からは弓の練習と真面目すぎる1日を過ごしている。

弓の練習は時間を忘れるくらい楽しくて、どんどんTKGとの絆が深まっていくのを感じていた。

「ほっ! ……わあ、今のすごく良い感じ!」

自分で言うのも何だけれど、弓に関してはなかなか良い筋をしている気がする。今ではユリウスが作ってくれた雪製の兎も、簡単に射ることができるようになった。

狩猟大会も問題ないだろうとユリウスのお墨付きもいただいており、当日が今から楽しみで仕方ない。

1週間後が大会で、5日後には街中の超高級レストランに集まり、五人で食事をすることになっている。

『アーノルドさんはどんな武器を使うんですか?』

『俺は鞭だよ』

『すみません、私とんでもない聞き間違えをしちゃったみたいで……鞭って聞こえたんですが』

『うん、合ってるよ。棘がたくさんついてるんだ』

『…………』

ちなみに先日、アーノルドさんとこんな会話をした。

甘い笑顔で棘まみれの鞭を扱う姿を想像すると、ある意味解釈一致すぎて、あり寄りの大ありだと思えてしまうから恐ろしい。間違いなく似合う。

そもそも世の中にはたくさんの武器があるのに、なぜ鞭を選択したのか気になって仕方ない。

「よし、今日はここまでにしようかな」

ありがとうとTKGにお礼を言い、屋敷へと戻る。

そうして自室に向かう途中、今日はユリウスと顔を合わせていないことに気付く。お喋りをしながら一緒に3時のおやつを食べようと誘うことにした、けれど。

「ああ、レーネ。どうかした?」

「え、ええとですね……」

ユリウスの部屋を訪ねると、なんと部屋の中には見知らぬミルクティー色の髪をした美女の姿があった。

年は私より5つは上だろうか。黒地に金の刺繍がされた異国風のドレスを身に纏った美女は長い足を組み、まるで自宅のようにくつろいでいる。

ユリウスが自宅に誰かを、それも女性を招いているのは初めて見た気がする。

部屋の入り口に立ち尽くす私に気付いた美女は、長い睫毛に縁取られた目をぱちぱちと瞬いた。

「えっ、なに? 誰?」

「妹」

ユリウスがはっきりそう言ってのけたことで、何故か胸がぎゅっと締め付けられるように痛む。

一方、美女は「あー」と納得した様子で頷いていた。

「二人いるんだっけ。全然似てないな」

「まあね」

「でも、かわいーじゃん」

サバサバ系らしく声もハスキーで、ミレーヌ様とは正反対の雰囲気だ。貴族令嬢という感じでもないし、どういう関係なのか気になってしまう。

「ごめんね。あとで部屋に行くから」

「わ、わかった」

美女に小さく頭を下げると「またねー」と笑顔で手を振ってくれる。うっかりドキッとしてしまいつつ、私はぱたぱたと逃げるように自室へ戻った。

そのままベッドに倒れ込み、夏休みに吉田と激ダサボートに乗りゲットしたクマのぬいぐるみを抱きしめる。

「……なんだろう、これ」

胸がもやもやちくちくして、落ち着かない。運動をしすぎて、体調が悪くなってしまったのだろうか。

とにかく昼寝でもして少し身体を休めようと、私はそのまま目を閉じ、眠りについた。

優しい手の温もりを感じながら、ゆっくりと意識が浮上する。瞼を開ければベッドに腰掛け、私に手を伸ばしているユリウスと視線が絡んだ。

側に座り、私の頭を撫でてくれていたようだった。

「ごめん、起こしちゃった?」

「ううん」

「寝顔がかわいいから、つい触れたくなって」

よくそんなことをつらっと言えるなと思いながらも、笑みが溢れた。ドア越しに声をかけて反応がない時は部屋に入ってきていいと、いつも言ってある。

窓から差し込む光はオレンジ色を帯びていて、結構な時間眠ってしまっていたらしい。

「さっきの人は?」

「もう帰ったよ」

あの美女は誰とか、どういう関係なのとか、聞きたいことはいっぱいあるのに、妙な気まずさや抵抗感のようなものを覚えてしまい、言葉が出てこない。

ぐっすり寝たはずなのに、先ほどのもやもやもちくちくも無くなっていない。

気が付けば私はユリウスのシャツの裾をぎゅっと掴んでいて、ユリウスは首を傾げた。

「レーネ? どうかした?」

「……な、なんでもない」

「絶対なんでもある顔してるよ。俺、何かしたかな」

心配げな顔をするユリウスは「何か嫌なことがあったなら教えて」と、優しい声音で尋ねてくれる。

そう言われて初めて、私にとって先ほどの出来事すべてが「嫌なこと」だったのだと気が付いた。

「なんかね、さっきの全部いやだったみたい」

「さっきの?」

「ユリウスが女の人を部屋に呼んでたのも、私のことを妹って言ってたのも、全部いやだった」

正直に話せば、ユリウスのアイスブルーの両目が驚いたように見開かれる。

やがてユリウスは片手で口元を覆うと「本当に?」と呟いた。動揺しているのが、はっきりと見てとれる。

頷いた私がその理由に気づくのと、ユリウスが再び口を開くのはほぼ同時だった。

「……やきもち妬いてくれたんだ?」