軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

狩猟大会に向けて 2

ミレーヌ様を見送った後、私は弓の練習のため、ユリウスと卵かけごはんと共に早速庭へ出た。

「わ、寒いね。少し雪も積もってるし」

「うん。もう完全に冬だ」

四季は元の世界と全く同じらしい。いきなり滑って転びかけた私を、ユリウスはすぐに支えてくれた。

人気のない場所へ移動し、大きな木に向かって弓を構えてみる。弦に指をかけると青白い矢が現れ、触れた感覚も普通の矢とほぼ変わらない。

「うわあ、すごい……魔法みたい!」

「魔法だね。じゃあ、あの木の実を狙ってみようか」

そのまま矢を放つと、矢はしっかりユリウスの指定した赤い木の実に突き刺さっていた。

「えっ……」

それだけでなく木自体にも大きな穴が空いていて、想像以上の威力に驚きを隠せない。TKG、超すごい。ようやくヒロイン感が出てきた気さえする。

「へえ、本当に上手だね。これなら俺が教えることなんてほとんど無さそうだ」

ユリウスも感心した声を出しており、これまで悲惨な姿しか見せてきていないため、嬉しくなった。

「あとは単純に弓に慣れるのと、狩りのためにも動く的に当てる練習くらいかな」

「確かに。私、動いてるものを狙ったことがないんだ」

「じゃ、適当な練習相手を作るね」

ユリウスはそう言うと、庭に積もっていた雪から兎を作り出した。雪から兎を作るとは一体。

間違いなく学生のレベルを超えた、高度なことをしている。詳しく聞いても絶対に私には理解できないし、すんなり受け入れて練習させてもらうことにする。

「くっ、この、ちょこまかと……!」

「あはは。難しいよね」

やはり動くもの相手では、全く勝手が違う。しかも小さくて素早く動くため、より難易度が高い。

いつしか夢中になってしまっていたらしく、ようやく矢が掠るようになった頃には、日が暮れ始めていた。

慌てて振り返れば、ユリウスは近くのベンチに座り、ずっと私の様子を見守ってくれていたようだった。

「お疲れ様。この短時間でかなり上達したね」

「ご、ごめん! 寒かったよね!」

「大丈夫だよ」

ユリウスは寒いのが苦手だと言っていたのに、やってしまったと反省しながら駆け寄る。

必死に練習していた私は暑いくらいだったものの、ユリウスの手はすっかり冷たくなっていて、私は自身の両手でぎゅっと包み込んだ。

「早く戻らないと……はー」

口元へ持っていき、温めるように手に息を吐くとユリウスは「は」と、不思議な声を出した。

「え、なに、それ」

「こうするとあったかくない?」

小さい頃、全力で雪遊びをしていた私によく母がしてくれたことを思い出す。

この世界ではあまりしないのかなと顔を上げると、ユリウスの顔は少しだけ赤く染まっていた。

「……それ、俺以外に二度としないでね」

「うん?」

「俺、なるべく他人の手を切り落としたくはないから」

「待って、何の話?」

いきなり物騒でびっくりする。その後しっかりと約束させられた私は、「あったかい」「ありがとう」とやけに上機嫌なユリウスに手を引かれ、屋敷へと戻った。

◇◇◇

週明け、元気に登校した私はみんなに全力で謝罪し、今週のどこかでお疲れ様会をしようと誘って回った。

みんな心配してくれていたようで、余計に申し訳なくなる。ラインハルトは気付いてあげられなくてごめんと今にも泣き出しそうな様子で、宥めるのが大変だった。

そして放課後の今は、吉田とカフェテリアでお茶をしている。吉田には礼などいらないと言われたものの、お茶とケーキを奢らせてほしいと無理やり頼んだのだ。

「あの瞬間、持つべきものは吉田だと思ったもん。本当にありがとう! 私、すごく救われたよ」

「……そうか」

クールな顔をしてココアをお供に苺がたっぷり乗ったケーキを食べている吉田、かわいい。

「それにしても、もうすぐ冬休みなんだね。ついこの間秋休みだったのに早くない?」

「確かに早いな。今年がもうすぐ終わるのか」

「このペースじゃ、あっという間におばあちゃんになりそうで怖いんですけど……」

「お前の介護なんて考えたくもないな」

「えっ、一生一緒にいるってこと? プロポーズ?」

「帰っていいか?」

その後、話題は冬休みから狩猟大会へ移った。次は4人で遊ぼうと誘えば、すんなり「ああ」と返事をされ、吉田との距離が着実に縮まっているのを感じる。

「そういや、前に話していた弓はどうなったんだ」

「実はもう届いたんだけど、超かっこいいんだよ!」

「名前はもう付けたのか?」

「あ、うん……実はTKGって言うんだ……」

「なんだ、お前にしてはかなり良いセンスじゃないか」

「えっ……」

やはりこの世界では、ちょっと粋な名前らしい。

戸惑いつつもほっとした私は、会話の流れから何気なく吉田の剣の名前を尋ね、グラスに口をつける。

「俺はエクセレントナイトソードだが」

つらっと告げられた瞬間、口に含んでいたオレンジジュースが勢いよく鼻に入った。

「ゲホッゴホッ、いった……エ、エクセレ……?」

「エクセレントナイトソードだ」

「えっ……ダッ……」

「だ?」

完全に反射で口から「ダ」という声が漏れ出てしまったものの、恩人に対してダサいなどと絶対に言ってはいけない。吉田は間違いなく格好いいと思っているのだ。

ボートの件といい、吉田はこういうところがあった。小学生男児のセンスなんて、思ってもいけない。何より卵かけごはんの主の私は、誰よりもその権利がない。

私は笑顔をつくると、グッと親指を立てた。

「だ、だーよしも、いいセンスしてるね!」

「そうだろう。三日三晩悩んだんだ」

「そっか…………」

だーよしのダサさすら丸ごと愛していこうと決意していると、不意にぎゅっと後ろから抱きしめられた。

この甘い香りには、覚えがある。そもそも私にこんなことをするのは、二人しかいない。

「レーネちゃん、酷いなあ。俺だけ仲間外れにして」

振り返れば予想通り、ユリウスに思い切り殴られるアーノルドさん、そしてミレーヌ様の姿があった。