軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

学園祭へ向けて 3

教室移動も多く授業の合間にラインハルトを誘えなかった私は昼食後、カフェテリアに彼を呼び出していた。

ラインハルトは私の好みの紅茶をさっと頼み支払い、運んでくれ、紳士イケメンぷりを発揮している。

「レーネちゃんと出店? もちろんやるよ」

「本当に? ありがとう!」

「こちらこそ誘ってくれてありがとう」

出店を一緒にやろうと早速誘ったところ、満面の笑みを浮かべ快諾してくれてほっとする。

するとラインハルトは、私が何気なくテーブルに置いていた手に自身の手を重ねた。

「ランク試験の加点が必要なんだよね? 僕、どんなことをしてでも役に立ってみせるから」

「えっ? あっ、ありがとう! 私も頑張るね」

何やら彼からは、ものすごいやる気を感じる。

嬉しいもののあまり気負わないでほしいと言えば「大丈夫だよ」と、やはり眩しい笑顔を向けられた。本当に大丈夫だろうか。

「でも、何をしようかな? 売り上げが最も多かった上位3チームだから、とにかくお金を使ってもらわないといけないし」

さすが貴族の生徒が多いファンタジー学園だ。「一番お金を使わせたら勝ち」という学生イベントらしからぬシステムが恐ろしい。

生徒の家族など一般のお客さんもかなり入るようで、果たして一位になるにはどれほどの売り上げが必要なのか、想像もつかない。

「普通のカフェとかじゃ儲かりづらいよね」

「うん、単価の高いものが良さそうだね」

「確かに。でも、何があるかな……学園祭だし……」

うーんうーんと必死に案を考えていたところ、不意に見知らぬ男子生徒が私達の座る席へとやってきた。

どうやらラインハルトのクラスメイトらしく、彼に用事があるらしい。

「ノークス様、次の授業の先生が呼んでいましたよ」

「……分かった。ごめんね、レーネちゃん。また後でゆっくり話をしたいな」

「もちろん! 行ってらっしゃい」

離れがたいと顔に書いてあるラインハルトを見送り、一人になった私は再びどうしようかと頬杖をつく。

やはり言い出した私が良い案をしっかり出さねばと、頭を悩ませていた時だった。

「どうしたの? レーネちゃん」

そんな声に顔を上げると、そこにはユリウスとアーノルドさん、ミレーヌ様の姿があった。

今日も顔面偏差値が天元突破している三人に囲まれ、私の角膜は焼き切れそうになる。

昨年の学園祭のミスターミスコン優勝をしたというユリウスとミレーヌ様は、並ぶと絵になりすぎていた。

「うっ……じ、実は学園祭のことで悩んでいまして」

「ああ、上位はランク試験に加点されるんだっけ。レーネは絶対に参加すると思ってたよ」

向かいの席が空いているというのに、当然のようにユリウスは私が座っていた椅子にずいと腰を下ろし、二人で半分ずつ使う形になる。

やはりまだ血が繋がっていない事件のせいで、どきりとしてしまう。動揺を顔に出すまいと、私はぬるくなり始めていたティーカップに口をつけた。

すると今度は肩に腕を回され、思い切り吹き出しそうになる。このシスコン兄、今日も距離が近すぎる。

「へえ、レーネちゃんは参加するんだ。何をするの?」

「その内容が決まらず、悩んでおりまして……」

「メンバーは?」

「今のところ6人だけ集まりました。そもそも10人以上というのも難しくて」

私に質問を続けるアーノルドさんは「そっかそっか」と呟くと、にっこりと微笑んだ。

「じゃあ、これで9人になるね」

「えっ?」

そう言った彼は、ミレーヌ様とユリウスへと視線を向けた。ユリウスはさておき、まさかミレーヌ様までカウントしているのだろうか。

「あら、私も混ぜてくれるの? 嫌じゃない?」

「い、いえ! むしろミレーヌ様こそいいんですか?」

「ええ。とても楽しそうだわ」

髪色と同じ美しい金色の睫毛に縁取られた目を柔らかく細め、ミレーヌ様はふわりと微笑む。

思わず「お姉様……!」と言いたくなりながら見惚れていると、ユリウスが「こら」と私の目を片手で覆う。

「俺以外に見惚れんのやめてくれない? 浮気者」

「あらやだ、同性にまで嫉妬するなんて」

ユリウスの手を退けると、呆れたように笑うミレーヌ様と目が合った。

正統派美少女のテレーゼとはまた違う色気のある美女で、恐ろしいほどモテるに違いない。

「じゃ、あと一人だね」

「本当にみなさんも参加してくれるんですか?」

「うん。楽しそうだし、学年も問わないって決めてくれた学園側に感謝しないと」

この3人が参加してくれるとなると、かなり心強い。むしろユリウス達の存在だけで、いくらでも集客できる気がする。

「あと一人必要なら俺が連れてこようか? ジェレミーって奴がいるんだ。秋休みの旅行も一緒に行ってた」

「ああ、あの茶髪の」

「そうそう」

エレパレスで地獄のエンカウントをしてしまった際、確かユリウスの後ろに茶髪の可愛い系のイケメンがいたことを思い出す。

1年の友人達も他メンバーは私に任せてくれると言っていたし、兄の友人なら色々と安心だろう。ぜひお願いすることにする。

「ありがとうございます! みなさんが一緒に参加してくれるなんて、とても心強いです」

「まあ、レーネちゃんは可愛いわね。このままユリウスには似ないで育ってね」

「うるさいな」

こんなやりとりをするあたり、やはりユリウスとミレーヌ様はかなり気安い仲のようだ。

「もしよければ今日の放課後、早速集まりませんか? 準備期間も限られていますし」

「もちろん。僕は去年の学祭、家の用事で参加できなかったから楽しみだなあ」

アーノルドさんだけでなく、二人も頷いてくれてほっとする。この後、他のメンバーにも伝えなければ。

「俺もレーネとの学祭、楽しみにしてる」

「うん! 楽しい思い出たくさん作ろうね」

「そうだね」

ユリウスはくしゃりと私の頭を撫で、微笑む。

そんな私達にアーノルドさんとミレーヌ様は、本当に仲が良いねと生温かい視線を向けている。一方の私は、口から心臓を吐き出しそうになっていたけれど。

とにかく予想よりもずっと順調に進みそうで、私はこれからの学祭準備に胸を弾ませた。