軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

07 第三騎士団の危機

一週間が経った。

俺の経験値稼ぎは順調で、ポーション専門店の店員と世間話をするくらいにはダイクエ戦法をこなしており、残りの500本をやり切れば一万本分投げた計算になる。

スキルランク上げの方も順調だ。《飛車弓術》は未だに習得できていないが、それ以外の【弓術】スキルはまあまあ上がっている。《香車弓術》《桂馬弓術》《銀将弓術》は五段で止めておいた。効果はそれぞれ「110%の貫通攻撃」「狙撃成功率90%」「200%の単体攻撃」である。《金将弓術》と《角行弓術》は三段で止めてある。効果はそれぞれ「80%の範囲攻撃+ノックバック」「180%の貫通攻撃」だ。

ここまで上げてもまだかなりの経験値が残っているので、ダイクエ戦法が如何に反則か分かる。そして、メヴィオンプレイヤーの平均レベルが如何に高いかも分かるだろう。

また、弓術スキルをかなり上げたことで、ステータスの中でDEXがかなり突出してきた。AGIもそこそこ上がっている。

DEXは器用さを司るステータスだが、【弓術】においては火力に直結する数字である。また生産成功率にも関係するため、上がれば上がるだけ良い。AGIは素早さを司るステータスで、これも上がれば上がるだけ戦闘が有利になる。

「そろそろ剣術かなー」

そんなことを考えながら、今日も今日とて大洞窟への道を行く。

セブンステイオーも俺の呟きに「ブヒィン!」と同意してくれているので、《飛車弓術》の習得はとりあえず置いておき、ダイクエ戦法が一通り終わったら【剣術】スキルを上げていくことに決めた。

「ぐはぁ!」

鉱山に差し掛かった時。林を挟んだ向こう側から、切羽詰まった声が聞こえた。

もしや。

俺は若干の期待を胸に、セブンステイオーから降りると、ロングボウを構えて林に飛び込んだ。

「くそっ、撤退だ! 退路を切り開――ぐあっ!?」

……人と魔物。

荒い呼吸。

金属がぶつかる音。

血の匂い。

悲鳴。

それは俺が知っている『メヴィウス・オンライン』の光景ではなかった。

約20メートル前方では、第三騎士団だと思われる騎士たちが魔物に囲まれていた。

魔物の名はスカーレットマンティス――毒々しい赤色をした巨大なカマキリだ。その数は6匹。

第三騎士団は苦戦している。地面に倒れて動かない者が5人。剣を構え輪形に陣を取っている者が5人。このままでは嬲り殺されると傍目でもわかる。

「…………」

この時、俺は憤怒した。

「これで飛車弓術を覚えられるかもしれない」と一瞬でも歓喜した自分に。

「確実性を上げるために残りの5人のHPが削られるまで待つか?」などと考えた自分に。

違うだろ?

人が死んでるんだ。あれはプレイヤーじゃない。人だ。

俺と一緒だ。

あの人たちは、人生を賭したものを志半ばで奪われたんだ。

そして今、更に奪われようとしている。

……俺は「プッツン」したことを自覚した。

だがもう止まらない。

許していいことじゃない。

あの絶望は、我慢ならないんだよ。

「伏せろッ!!」

俺は力いっぱい叫んだ。

第三騎士団の5人は、弓を構える俺を見るや否や指示通りに伏せてくれた。

バシュッ! ――溢れ出る真紅のオーラに彩られた《香車弓術》の矢が、直線上にいた3匹のスカーレットマンティスを貫く。

スカーレットマンティスたちは体に大きな風穴を空け、ばたりと絶命した。

《香車弓術》五段の貫通力は並大抵のものではないのだと、この時初めて知った。

「ギギギギ」

威嚇するような声をあげ、俺をターゲットする残りの3匹。

距離は20メートル。敵の意識がこちらに向いたことで、どうやら騎士たちは危機を脱したようだ。

…………。

………………あれっ。

結果オーライ、か?

あまりにも「すんなり」だったからか、俺は急激に頭が冷えた。

となれば、これ以上の好機はない。俺は気を取り直して、ここぞとばかりに《桂馬弓術》に《銀将弓術》を上乗せして構える。

ドバンッ――という重低音とともに、大きな白銀のオーラを纏わせた矢が射出される。

先頭のスカーレットマンティスに着弾した瞬間、白銀の光が爆発し、その大きな体躯の8割方が木っ端微塵に飛び散った。スカーレットマンティスに五段の《銀将弓術》はかなりのオーバーキルのようだ。

間髪を容れず2発目。2匹目も同じ運命をたどる。

そして最後の1匹。こいつにだけクリティカルヒットが出て全身が吹き飛んだ。虹色のエフェクトが一瞬だけ煌く。与えたダメージは「1566」と出ている。クッソ低い……まあこの武器でこのステータスでこのランクなら、こんなものだろうか。まだまだ先は長い気がしてきた。

さて、それでは本題の……

「よし!」

覚えていた! 《飛車弓術》ゲット!

一時は諦めたが何とかなった! 我ながら完璧な判断だったな。一石二鳥とはまさにこのことだろう。

……そこでふと我に返る。騎士たちはどうなった?

「すまない、ありがとう。助か――あっ」

周囲を警戒しながらこちらに来た第三騎士団の5人。お礼を言った騎士は、聞き覚えのある凛とした声をしていた。

「セカンド……殿。この度の助太刀、感謝の言葉もない」

女騎士シルビアは、兜を取って顔を見せると、頭を下げた。

心なしか元気がない。当然か。仲間が殺されたんだからな。

「まあ気にするな。彼らを連れて帰ろう」

俺がそう言うと、シルビア他4人の騎士たちはビシッと綺麗な敬礼をして、仲間の亡骸へと向かっていった。

……俺も浮かれている場合じゃないな。

俺は両手で顔をパンと叩いて引き締め、彼女たちの手伝いをするため、その後に付いて行った。