軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

46 龍馬と龍王

プロリンダンジョンを周回し続けて1ヶ月と少し。

なんと必要分のミスリルをもう集め終わってしまった。

かなり余裕をもってやっていたはずなのだが、それでこの結果だ。ちょろいと言わざるを得ない。

経験値の方もクソほど溜まった。

俺はその大方を溜め込んでいるが、シルビアやエコなんかは既存スキルをほとんど九段まで上げていた。

ユカリも《作製》と《付与魔術》を九段まで上げている。《作製》とは素材を用いて装備品を作る鍛冶の代名詞とも呼べるスキルだ。また付与については、ユカリの《解体》スキルが高段まで上がったら腰を据えてじっくりやってもらおうと考えている。作製と付与と解体、この3つが揃っていなければ決して付与に手を出してはいけない。前世では常識だった。

さて。

ここにきていきなり暇になった俺たちは、良い機会だと、いよいよアレに手を出すことにした。

「もう折角だから覚えられるだけ覚えるぞ」

皆にそう伝えると、シルビアとエコは緊張の面持ちで頷いた。

覚えられるだけ覚える――それはつまり、今あるメインスキルの龍馬と龍王を使う使わないに関わらず覚えてしまうということ。

シルビアの場合は《龍馬弓術》と《龍王弓術》を。エコの場合は《龍馬盾術》と《龍王盾術》を。そして俺の場合は《龍馬弓術》と《龍王弓術》に加え《龍馬剣術》と《龍王剣術》の4つを。

必要になってからいちいち習得しに行くのでは面倒なので、この機会にとりあえず覚えられるだけ覚えておいて、16級で止めておく予定である。ただ《龍王剣術》だけは実用性があるので習得したら上げる予定だ。

「して、セカンド殿。肝心の習得方法は如何に?」

シルビアがわくわく顔で質問してくる。こいつ【弓術】が残すところこの二つだけだからって気合入りまくりだな。

「まず龍馬弓術から説明する。これは簡単に言うと、ドラゴンを倒せばいい」

「どららぁっ……!?」

ナイスリアクション。だがイジっていたら話が進まないのでスルーして言葉を続ける。

「重要なのは倒し方だ。龍馬弓術の場合、最後の一撃を角行弓術で。それまでの間に歩兵弓術~飛車弓術の7種スキルで最低一度ずつ攻撃する必要がある」

「……ご主人様。ドラゴンとの闘いの中でそのような無駄な行動が可能なのですか?」

ユカリの素朴な疑問。尤もである。

「ああ、やり方さえ分かっていれば余裕だ。それにこれだけでは龍馬弓術は習得できないぞ」

「なんだと!? まだあるのか!?」

シルビアは勘弁してくれと天を仰いだ。龍馬の説明だけでこれだと先が思いやられるな。

「今言った一連の流れを5種類のドラゴン相手にやれば覚えられる」

「 」

ガーンという音が聞こえてきそうな顔だ。シルビアだけでなくエコとユカリも若干引き気味である。

まあ、だるいよなぁ。メヴィオンのドラゴンは当然1種類だけではない。ピンからキリまで20種類以上はいる。その中で弱い方から5種類を見つけだして条件を満たそうってんだから、面倒くさいことこの上ない。それを考えると龍王の方が幾分かマシだ。

「龍王弓術の場合は、種類問わず10匹のドラゴンを飛車弓術“だけ”で倒せばいい。まあ、こっちの方が簡単だな」

「かかかか簡単なわけあるかぁっ!!」

シルビア大噴火。と思いきや「夢のまた夢ではないか!」と嘆き「嗚呼、気が遠くなる……」と頭を抱えて机に伏してしまった。あまりの面倒くささに心が折れたのだろう。あらら。

「あー、剣術も同じ条件だ。つまり俺とシルビアはしばらくドラゴン狩りになる。手伝ってやるから大丈夫だ、心配すんな」

俺がフォローすると、シルビアは「ほ、本当か?」と顔を上げて「とか言いつつ私をドラゴンの巣に放り込むつもりなのではないか?」と疑う。俺を何だと思ってるんだこいつは。そんなわけないだろ(フラグ)

「あたしは? あたしは?」

「エコの場合は少し特殊だな。龍馬盾術は、歩兵盾術~飛車盾術で最低一度ずつ攻撃を受けたドラゴンがチームメンバーに殺されればOK。これを5種類のドラゴンでやる。龍王盾術は、ドラゴンを相手に飛車盾術で100回連続パリィだ。少々キツイが俺が教えてやる」

「りょーかいっ! あたしがんばるよー!」

「おう頑張れ」

エコは元気いっぱいで大変よろしい。

「俺たちがドラゴン狩りに行ってる間、ユカリには伯爵とのあれこれを頼んでいいか?」

「はい。お任せくださいご主人様」

ユカリは相変わらずの無表情だが、どこか意気揚々としている風にも見える。長いこと一緒にいるうちにだんだんその冷淡な表情の裏を感じ取れるようになってきた気がしてちょっぴり嬉しい。

「よし。それじゃあ行動開始だ」

こうして、俺たちのプロリン周回はぬるりと幕を閉じた。

「どらごんってどこにいるの?」

道すがらエコが聞いてきた。

バッドゴルドから北へ。俺たちは“峡谷”を目指して進んでいる。

「メティオダンジョンにわんさかいるぞ」

「へぇーっ」

乙等級ダンジョン『メティオ』は屋外ダンジョンだ。峡谷の形をしており、ボス含め7種類のドラゴンが出現する。いわばドラゴンの巣窟である。

「待て。まさか今メティオと言ったか?」

「ああ」

「……まだ攻略されていないのだが?」

「でしょうね」

メティオダンジョンは乙等級最難関だからな。プロリンがまだならメティオもまだだと思ったよ。単純な難易度で言ったら甲等級のアルギンダンジョンより難しいかもしれないってレベルだ。

「そんな危険な所へ? 私たちは? ドラゴンを倒しに?」

「そうなるな」

「だっ……大丈夫なのか?」

「問題ない。メティオは出現する魔物の数が少ないからな、常に3対1で戦えるぞ」

その代わりドラゴンしか出現しない。量より質で、一匹一匹がかなりの強さである。

「そ、そうか」

「心配するな、死ぬようなことはねーよ」

シルビアはかなり緊張している様子だ。「う、うむ」と頷いて前を向いたが、どこか落ち着きがない。ドラゴンに何か嫌な思い出でもあるのだろうか? 気になってそう聞くと、別にないと返答がきた。じゃあなんで?

「しばらくゴレムばかりを相手にしていただろう。久々の初見戦闘に不安がないと言えば嘘になる。それにドラゴンは強さの象徴のような魔物だ。緊張しない方がおかしいぞ……といってもセカンド殿の辞書にはそんな文字は存在しないようだがな!」

なるほど。緊張云々はさて置き、初見の戦闘に気を引き締めるのは良いことだ。俺は「偉いぞ」と言ってサムズアップしておいた。シルビアは「なんだか緊張しているのが馬鹿らしくなってきた」と呆れ笑いしていた。

一方でエコは全くの平常心である。この余裕は高VITゆえか、それとも単に性格か。何にせよ頼もしい限りだ。俺のサムズアップもこれでもかと言わんばかりにピンとしている。

そうこうしているうちに、メティオダンジョンへと到着した。

頂上が見えないほど険しい崖に挟まれたV字谷。谷底には静かに沢が流れている。

「おっ、いたいた」

さっそくドラゴンを発見した。

運の良いことに、それは6種類出現するドラゴンのうちで最も弱い「白龍」。龍という名前が付いているが紛れもなくドラゴン種である。

「でかい!」

エコが目をまん丸にして声をあげた。確かに大きい。全長10メートルはあるだろう。ゴツゴツした白い鱗が綺麗だ。

「あ、あああアレとやるのか!?」

シルビアは完全に腰が引けていた。

「ああ。最初は俺が手本を見せるからよく見ておけよ」

俺はロングボウを構えて射程距離を考えながら白龍へと接近する。

そして《精霊召喚》でアンゴルモアを召喚した。

「(――おお、龍ではないか)」

なんとも淡白なリアクションが念話で伝わってくる。

「(憑依だ)」

「(御意)」

俺は《精霊憑依》を発動した。アンゴルモアが虹の光となって俺と一体化していく。

あーッス! あーこれ、あー最高最高。何度やってもこれは素晴らしい。最高の全能感。究極のエクスタシー。

現在《精霊憑依》のランクは五段、ステータス4倍・憑依時間270秒、クールタイム290秒である。以前より強く、長く、多くこのエクスタシーを感じられるようになった。最早やみつきである。

さて、発動したからには1秒たりとも無駄にはできない。今回の目的は《龍馬弓術》の習得。まずは「歩兵~飛車の7種スキルで最低一度ずつ攻撃」の条件から埋めていく。

俺は《歩兵弓術》を準備して、すぐさま射った。

「ギャオオオオオッ!?」

ブスッと白龍の太ももにぶっ刺さる。白龍は当然ながら激痛にびっくりして大声をあげた。

矢継ぎ早に《香車弓術》を発射。白龍の足を貫通する。

怒り狂った白龍がこちらへ突進してくる。そこで《金将弓術》を使ってノックバックさせ、《角行弓術》を準備、即座に放つ。

「ガァッ!」

口から空気を漏らすような感じでマヌケに鳴いたら“ブレス”の合図だ。俺は次に準備していた《桂馬弓術》をキャンセルして、白龍を中点に円を描きながら軽くランニングする。たったこれだけで白龍のブレスは簡単に回避できてしまう。

そして、ブレス後の硬直。これが総攻撃のチャンスだ。

俺はまず《飛車弓術》を、次に《銀将弓術》、最後に《桂馬弓術》を放った。これで7種全てのスキルで1回ずつ攻撃したため条件を満たした。後は《角行弓術》で止めを刺すだけである。

突進は《金将弓術》で、ブレスはスキルキャンセルしてランニング。これだけ守っていれば白龍の相手は簡単だ。残りHPが2割を切ると尻尾攻撃もしてくるようになるが、それをやらせる前に倒しきるので関係ない。

と、ここで白龍がダウンした。足ばかりを執拗に狙い続けた結果がこれだ。ダウン状態はHPが3割以下の時に脚部への累積ダメージ量がしきい値を超えることで“必ず”起こる。

「オォン! ギャォン!」

ダウンしている白龍に《角行弓術》を射りまくる。全く抵抗できない白龍くんはボッコボコだ。ちなみに、ここでは本来なら《飛車弓術》などで攻撃して効率良くダメージを稼いでおきたいところだが、白龍はHPが少ないのでダウンしたらいつ死ぬか分からない。時間を無駄にしないためにも念のため角行のみで攻撃しておく。

「ンギャッー!」

ダウン状態が解ける寸前ほどで、白龍は断末魔の咆哮をあげて倒れた。ラッシュに耐えられなかったようだ。念のため飛車を使わなくてよかった。

「……とまあこんな感じだな」

俺は憑依状態を解除して、シルビアとエコのもとへ戻った。

二人は口をぽかーっと開けたまま何も言葉を発さない。

「あ、今は見本ってことで俺一人だったが、ここからは全員でやるぞ?」

沈黙。

「白龍の攻略法は簡単だ。突進を金将で弾くことと、マヌケな鳴き声の後はブレスがくるから回避に専念すること。この2つを守るだけでいい」

無言。

「準備はいいか? よし、ならさっそく――」

「ちょ、ちょっと待てぇ!」

ここでようやくシルビアが口を開いた。

「セカンド殿? 今何を成し遂げたか分かるか? ドラゴンの“単独討伐”だぞ? とんでもない偉業だぞ? それに……」

「……こわく、ないの?」

シルビアの言葉の続きをエコが言う。

怖くないの……か。

何か勘違いされてるな。腰抜けになられても困る。ここは言っておくべきだろう。

「はっきり言おう。怖いわけないだろ」

二人が息を呑むのが分かった。

「俺たちのステータスを考えたら白龍の最強の攻撃がクリティカルで3発は入らないと死なない。それにさっきも言ったが、突進を金将で弾いて、マヌケな鳴き声で回避だ。これさえ守れりゃ偉業もクソもあるか。誰でも倒せる」

「だっ……!?」

「それにな、俺たちは世界一位を目指してんだぞ? いずれは白龍なんか一撃だ一撃。ファーステストのメンバーがこの程度の相手にビビってんじゃねえ」

「いちげき……」

「そしてごめん言ってて気付いたけど俺お前らに白龍から3発もらっても死なないとか全然説明してなかったわ」

「だよな!?」

「もーっ!」

シルビアとエコが怒る。マジでごめん。

ドヤ顔で説教してたけどそもそも俺のせいだった。恥ずかしい。

「驚き損の怒られ損じゃないか!」

「せかんど! あやまって!」

「ごめんなさい!」

その後しっかりと情報を共有してから、俺たちは本格的にドラゴン狩りを開始した。