軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

208 壇上這う余人だ

午後、いよいよ閉会式が始まる。

闘技場中央にずらりと並んだタイトル戦出場者たち。そして、超満員の観客席。

……ああ、好きだ、この雰囲気。

皆が緊張に表情を硬くしている。俺はもう慣れてしまったが、その緊張感を忘れたわけではない。

壇上にあがり、キャスタル王国国王のマインから表彰を受ける。たったそれだけのことなのに、何故これほど緊張するのか。俺はなんとなく知っている。

皆の反応が、楽しみでもあり、不安でもあるのだろう。タイトルを獲得できたと一人で勝ち誇っていても意味がない。多くの人々に評価されて初めて「タイトル保持者」になれるのだ。

とはいえ、もう既に覆しようのない結果が出てしまっている。後は、皆が認めてくれるかどうかの、証明だけ。拍手と歓声という、実にわかりやすい証明だ。

「シルビア・ヴァージニア 鬼穿将(きせんしょう) 」

そら、呼ばれたぞ。

「は、はい……!」

シルビアは右手と右足を一緒に動かし始めて、ブリキのおもちゃのように歩み出た。

マインは微笑を一つ、クラウスが持ってきた賞状を受け取り、それをシルビアへ向けて読み上げる。

……ずっと、俺はこの瞬間が死ぬほど嫌いだった。

俺ではない誰かがタイトル保持者として賞賛される。それが実に我慢ならなかった。

だが、どうだろう。シルビア・ヴァージニア鬼穿将――不思議と、嫌じゃない。

いいや、むしろ嬉しいくらいだった。苦楽を共にした仲間が、ストイックに頑張ってきたあいつが、ついにタイトルを獲得したんだ。それは凄いことなんだ。いくら褒めても称えても足りることなどない。

なんだろうな、この感情。初めて経験するものだ。口角が勝手に上がってしまう。

「――よってその栄誉を讃え之を表彰す。キャスタル王国第十八代国王マイン・キャスタル。おめでとう、シルビア・ヴァージニア鬼穿将」

読み上げが終わり、そして、シルビアが賞状を受け取る。

途端、堰を切ったように拍手喝采が渦を巻いた。

マインによって胸元に鬼穿将のバッジを付けてもらったシルビアは、マインと観客に礼をすると、賞状を左側に挟み、壇上を後にしながら右手で目頭を拭った。

ふと、観客席に父親のノワールさんを発見する。号泣だった。呆れ顔のアレックスさんと大笑いのクラリスさんに両脇から背中を撫でられている。シルビアの涙腺は、どうやら父親似のようだ。

「エコ・リーフレット 金剛(こんごう) 」

興奮冷めやらぬうち、次の名前が呼ばれる。

「はーい!」

うちの猫ちゃんは、元気いっぱいに返事をして、てくてくと歩み出た。

エコ・リーフレット金剛。ああ、何度耳にしても心地良い。あのエコ・リーフレットは、盾術最高峰「金剛」なのだ。「落ちこぼれ獣人」と蔑まれていた彼女が、今や。

「――よってその栄誉を讃え之を表彰す。キャスタル王国第十八代国王マイン・キャスタル。おめでとう、エコ・リーフレット金剛」

「ありがとう!」

彼女は、きちんとお礼を言える良い子である。国王相手にタメ口なのはご愛嬌だ。

昨日の夕方、ユカリと一緒に一生懸命練習していた賞状の受け取り方を皆に披露した後、マインに金剛のバッジを付けてもらう。

観客は惜しみない拍手と歓声を送ってくれる。彼女が獣人だからと金剛の獲得を認めないような者は、この場にはいなかった。

父親のショウさんは、エコの凄さを理解してくれただろうか。エコはこんなにも大勢の人から評価されているのだ。そろそろ村にエコの銅像を建てることを検討すべき頃合だろう。いやマジで。

「カサブランカ 影王(えいおう) 」

おっと、今度は知らない名前が呼ばれた。

嫌だ嫌だ、見たくない聞きたくない。アーアーアー。

「…………あ?」

ちらりと見えた、マインに歩み寄る男の姿。俺はつい、声をあげてしまった。

カサブランカと呼ばれた男は、黒い布で顔や体を隠していたのだ。

影王は【暗殺術】のタイトル。まあ、暗殺者だから顔バレはなあ……と、納得しかけたが、いやいや、おかしいだろうそれは。

何故って、あの男、 装備(・・) を外していない。あいつが身につけている黒衣は、暗殺者の専用装備。その下には多数の武器を仕込むことができる。

キャスタル国王へと最も接近するこの機会に、装備を外さないのは如何なものか。

……待て。よく考えろ。王への謁見の時でさえ近付けないほどの近距離に、唯一接近できる機会は、実はこの瞬間のみなのではないか?

あのカサブランカという男が、この機会を虎視眈々と狙っていたのだとすれば?

「(来い、アンゴルモア)」

「(……ほう。仕事であるか?)」

「(お前の大好きな時間だ)」

「(フハハッ、弱い者いじめか!)」

俺はアンゴルモアを“マナーモード”で召喚し、しばらく様子を見た。

そして――予想が、当たる。

「貴様ッ!」

最初に気が付いたのは、マインの護衛をしていたクラウスだった。

流石は名うての剣術師。反応も早ければ、剣筋も鋭い。

だが、暗殺者のそれには及ばない。

袖奥から静かに滑らせた小さなナイフで、二メートルと離れていない対象の喉を掻き切る。たったそれだけ。一秒もかからない。

成功は確実……と、そう思っていたことだろう。

「――ひれ伏せぃッ!!」

一喝。

瞬間、暴風が吹き荒れ、壇上にいる全員がガクリと崩れ落ち、地面へと両手両膝をついた。キャスタル王国国王マイン・キャスタルでさえも。

「ハァーッハッハッハ! 愉快痛快爽快よ!」

精霊大王アンゴルモアは、実に楽しそうな極悪ヅラをして、マインたちの頭上をぐるんぐるんと煽るように飛び回った。

カサブランカは、風に押し潰されながら、這ってでも尚、マインを殺そうと腕を伸ばしている。凄まじい執念。だが、もはやこれまで。

「よし、もういいぞ」

「御意」

俺はカサブランカに接近して【金将糸操術】で念入りに拘束、アンゴルモアに“這い蹲らせる風”の行使をやめさせる。

「た、助かりました……っ!」

大勢の前で這い蹲らされたにもかかわらず、マインがお礼を口にした。この器の大きさ、まさに王。俺が「いいってことよ」と返すと、マインははにかんで頷いた。

「はい、御開帳~」

「――っ!」

皆も気になるだろうから、カサブランカ影王の頭装備を剥ぎ取ってやる。

さて、やらかし暗殺者の素顔は……。

「……何者です」

マインが真剣な顔で問いかける。

どうやら黒衣の中身はカサブランカではなかったらしい。流石に国王はカサブランカの顔を知っていたようだ。

「 」

――が、敵の方が一枚上手だったな。

こいつ、既に死んでやがる。

揺さぶってみても、ぴくりとも動かない。

「……奥歯に毒を仕込んでいたようです」

《金将糸操術》が解け、地面に投げ出された暗殺者の男。それを観察していたクラウスが、冷静な分析を口にする。

即効性と致死性のある毒アイテムといえば、パッと三つほど思い浮かぶが、奥歯に仕込めるくらい小さなものとなると……アレかなあ。

「ともあれ、大事に及ばずよかったな」

「…………」

アンゴルモアを《送還》しながら言うと、クラウスは無言でぎゅっと拳を握り締めた。

いや、それは違うな。

「お前はよく気付いていた。悔しがることはない」

「しかし、事実、陛下の身に」

「信頼で成り立っていたんだ。今、この場で、タイトル戦出場者の何人かが叛旗を翻したら、止められる騎士はいるのか?」

「それは……っ」

「数で護衛するというお前らの考え方は確かに有効だ。タイトル戦出場者といえど数には勝てない。だが、ああまで接近してしまっては、話は別だ。出場者一人でも脅威たり得る」

「……ゆえに、信頼ですか」

「それも、今し方、崩れ去った。信頼は盲信だったわけだ」

大きな見直しの必要がありそうだ。

マインが倒れて大喜びするやつらは、減ったとはいえ、まだまだいるだろうから。

こりゃあ、中止も仕方ないか。

「――続けましょう」

……という結論に至ったところで、マインがそんなことを言う。

本気か?

「しかし、陛下!」

「続けます」

「なりません! 陛下は今、何者かに命を狙われているのです!」

「クラウス、黙りなさい。ボクは続けます」

「…………!」

マインは頑としてクラウスの言うことを聞かない。周りの騎士たちも、クラウスと共に無言の抗議をしている。

だが、マインは微塵も臆することなく、こう言ってのけた。

「危機こそ好機なり。今こそ、国民へ国王としての胆力を見せつける時。ボクには、身命を賭して試合へと挑んだタイトル戦出場者を祝福する義務があります。ここは一歩も譲らない……!」

そこには、もう、兄に怯える軟弱な弟の姿はなかった。

俺たちだけじゃなかったんだ。こいつもまた、この半年で大きく成長していた。

……強くなったなあ、お前。

「それに、親友も、いますから」

親友、か。

「もしかしたら、半年前のスリムのように、レイスで俺の姿に化けている暗殺者かもしれないぞ?」

「えい! ほら、これで大丈夫ですよ」

俺が脅かすと、マインはインベントリから針を取り出して、俺の手の甲にちょこっと刺した。

なるほど! こういう対策があったか。俺がレイスで化けていたとしたら、今の一刺しで 変化(へんげ) は解けている。

「抜け目ないな」

おまけに、少なからずあった遠慮もなくなっていた。以前なら、ビビっちまって俺に針なんか刺せなかっただろうに。

「一緒にいてくれますか……?」

「いいってことよ、親友」

「!」

同じ言葉をもう一度。今度は、後ろに単語を付けて。

マインは目を丸くしてから、満面の笑みを見せて頷いた。

俺が一歩下がると、マインは横へ向けて手を一振りする。直後、護衛の騎士たちは大きく三歩離れた。

「セカンド・ファーステスト 一閃座(いっせんざ) 、 叡将(えいしょう) 、 霊王(れいおう) 、 四鎗聖(しそうせい) 、 千手将(せんじゅしょう) 、 天網座(てんもうざ) 、 闘神位(とうしんい) 、 毘沙門(びしゃもん) 」

マイクを通して、マインにより俺の名前が呼ばれると、観客は俄かに騒然とした。

あんなことがあったのに続けるのか、という驚きだろう。

だが、そのざわつきは、次第に喝采と化す。

祝福。ああ、そうだろう。その言葉が的確だ。

皆が八冠の誕生を祝っていた。

国王の暗殺未遂などなんのその。皆、立ち上がり、声を出し、手を叩き、そんな不安なんて吹き飛ばしてやればいいのだ。

どうせマルベル帝国だろう。任せとけって、俺がなんとかしてやるから。

「――よってその栄誉を讃え之を表彰す。キャスタル王国第十八代国王マイン・キャスタル。おめでとう、セカンド八冠!」

賞状が手渡された瞬間、拍手と歓声が爆発する。

未だかつてない大喝采だった。半年前の何倍にも感じるほどの大きさだ。

凄い一体感を感じる。増えてきている、確実に、着実に、タイトル戦に熱中するファンの数が。

「それでは付けますね」

大歓声の中、マインが上目遣いにそう言って、俺の胸元に八つのバッジを付けてくれた。

そして、バッジを全て付け終えると、例のごとく俺を隣へと並ばせる。

「静粛に! これよりセカンド八冠より一言頂戴する。ご清聴願う」

おおっと、想定外の事態が巻き起こった。

俺、今回は「一言喋らせて」なんて頼んでいないぞ。

「どうぞ」

マインが期待のこもった目でマイクを渡してくる。

……そうだなあ。じゃあ、正直なところを言葉にしておくか。

俺は一呼吸置いてから、あっさりと沈黙を破った。

「――半年前の自分をどう思う」

出場者に問いかける。

その答えはもう、十分に知っていた。

「ああ、今お前らが考えている通りだ。比べ物にならないほど成長している。具体的に言えば、これでいいか、が減った。妥協を許せなくなったんだ」

半年前の「このくらいやっとけばいいか」という、おざなりな考えが綺麗サッパリなくなっている。

各々が半年間に持てる全てを賭けて挑みに来たのだ。最高だろう、それって。

そして、今になって気付く。俺はたったそれだけのことで、彼ら彼女らを大好きになってしまう、とても単純な男だった。

「もう何も心配していない。俺みたいなクソガキに煽られなきゃあ本気の一つも出せないような腑抜けは消え失せた。代わりに、死に物狂いで己の限界を超えようとする本気の戦士だけが残った」

大丈夫だ。この世界の、タイトル戦の未来は、きっと明るい。

「ようこそ、心から歓迎する。そして、決して絶望しないでほしい。それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも……俺に勝てないことに」

わかるよ。どれだけ頑張ったって足りないんだ。死ぬ気でやって「これが限界だろう」と思ってしまう、その何倍も先に相手はいる。

本気を出してからが世界だ。妥協が許されないのはスタート地点までだ。よーいドンで世界へと走り出したら、妥協のだの字を考える一瞬の脳の活動ですら許されない。

「お前らがこの先どれだけ地獄を経験するのか知らんけど、俺はずっと待ってるから、安心して追ってきてほしい。以上だ」

スピーチ終了。

前ほど引かれるようなことを言っていないからか、今回は結構な拍手をもらえた。

しかしタイトル戦出場者たちの顔は心なしか引き攣っているようにも見える。おかしいなあ、かなり褒めたはずなんだけどなあ。

「以上でタイトル防衛・獲得の表彰を終わります。続いて、今タイトル戦より創設された各賞の表彰に移ります」

クラウスによる進行で、次なるイベントが始まる。

おお! そういえばそういうのもあったか。楽しみだ。誰が何賞をもらえるんだろうな?

俺はクラウスによる各賞の創設に至った理由の説明なんかを聞き流しながら、隣に立つマインの様子を見やった。

すると、マインもまた同じタイミングでこちらを見上げた。

「緊張してんのか?」

「まさか……と言いたいところですけど、少し」

「お前が決めたのか?」

「はい」

だから自信がなくて緊張してるのか。

「そんなに心配するな。一生懸命考えたんだろ?」

「でもボク、戦闘の駆け引きとか、あんまり詳しくないですし」

「己の無知を知るお前は、国王であっても素直に誰かにアドバイスを求められる。そこが強みだと、うちの軍師が言ってたぞ。今回の件、色んな人にアドバイスを求めたか?」

「う、うん、まあ」

「ほらな。じゃあ大丈夫だ。お前の強みが活きている、良い表彰になるだろう」

「……うんっ。ありがとう、セカンドさん」

俺たちの会話が終わる頃には、表彰の準備が整っていた。

運ばれてきた表彰状は六枚。確か、新人賞と、敢闘賞と、特別賞と、名勝負賞と、最優秀賞だったか。名勝負賞は二人だから、計六枚と。

「それでは陛下よりご発表をいただきます」

クラウスの案内で、マインが壇上へ歩み出る。俺はその少し後ろで見守った。

最初は、新人賞の発表から。誰だろうな、わくわくするなあ。

「新人賞――ラズベリーベル」

やっぱりな!

予想通りで、思わずニヤッとしてしまう。

壇上へと出てきたラズも、少しだけニヤついていた。

「表彰状 第四百六十七回夏季タイトル戦 新人賞

ラズベリーベル 殿

右の者は第四百六十七回夏季タイトル戦において、初出場ながら創意工夫をもって優れた成績を収め、大いなる新風を吹き込んだ。その独創性は多くの人々を魅了し、更なる活躍と発展を期待させるものである。よってその栄誉を讃え之を表彰す。

キャスタル王国第十八代国王マイン・キャスタル」

そして……驚いた。

マインの強みが活きている表彰? そんなレベルではない。とても良く見えている。見るべきところが、しっかりと。

……こんな国王に、表彰されるのか。確信を持って言えるな。これは、幸せだ。

鳴り止まぬ拍手の中、ラズが表彰状を受け取って、壇上を後にする。

さあ、次は特別賞。

「特別賞――ノヴァ・バルテレモン」

おおっ!

ノヴァか。わかる。あいつ、出場者の中ではかなり明確に強かったからなあ。やはりマインは物事が良く見えているな。

「表彰状 第四百六十七回夏季タイトル戦 特別賞

ノヴァ・バルテレモン 殿

右の者は第四百六十七回夏季タイトル戦において、極めて優秀な技能を遺憾なく発揮し、飽くなき挑戦心を携え開拓に邁進する姿は、他の出場者へと善き影響を与え、タイトル戦の発展に大いに貢献した。よってその栄誉を讃え之を表彰す。

キャスタル王国第十八代国王マイン・キャスタル」

素晴らしい。

ノヴァのあの最後の相殺を、彼女の精神面と絡めて上手く言い表せていた。

マインめ、良い仕事しやがる。

さて、お次は敢闘賞だ。

「敢闘賞――シャンパーニ・ファーナ」

マジか!!

俺は思わず、マインのところまで駆け寄ってその背中をバシバシと叩きながら「お前わかってんなあ!」と言いそうになった。表彰の邪魔をしてはいけないから、なんとか我慢したが。

「表彰状 第四百六十七回夏季タイトル戦 敢闘賞

シャンパーニ・ファーナ 殿

右の者は第四百六十七回夏季タイトル戦において、日頃より研鑽の限りを尽くし、決して臆することなく困難に立ち向かい、不撓不屈の心を披露した。その穢れなき敢闘精神は、大いに他の模範となり、輝かしく道を照らすものである。よってその栄誉を讃え之を表彰す。

キャスタル王国第十八代国王マイン・キャスタル」

……ははは、はははは。

やべーな、つい、ウルっときた。

あのシャンパーニが、フルネームで呼ばれ、国王から表彰を受ける。それだけでも十分なことなのに、表彰状の文面ときたら、隅から隅まで「お前は良く頑張った!」と存分に褒め称えていた。

彼女と試合をした俺は身に染みてよくわかっている。あいつの頑張りは、輝かしく道を照らす。まさにその通りだ。そう、彼女は、シャンパーニ・ファーナは、凄い女なのだ。

「名勝負賞――天網座戦挑戦者決定トーナメント決勝、セカンド・ファーステスト対イヴ」

おっと、ついに俺の名前が呼ばれたぞ。

イヴが髪の毛で俺の目を潰してきたあの試合か! 確かに、滾るものがあったなあ。

「表彰状 第四百六十七回夏季タイトル戦 名勝負賞

セカンド・ファーステスト 殿

イヴ 殿

右の両名は第四百六十七回夏季タイトル戦において、出場者として最上の技能を篤と披露し、多くの人々に大いなる感動と興奮を与えた。その試合は新たなる時代の到来を予期させる創造性があり、後世に残すべき偉大なものである。よってその栄誉を讃え之を表彰す。

キャスタル王国第十八代国王マイン・キャスタル」

ああ、納得した。

俺にとってはこれ以上なく当てはまる文面。「この世界」の可能性、それをイヴが俺に教えてくれた試合だった。

新たなる時代の到来。違いない。俺にとっても、皆にとってもな。

さあ、そして……最後だ。

「最優秀出場者賞――セカンド・ファーステスト」

マインがそう宣言すると、観客はこの日一番の盛り上がりを見せた。

お前の名前を待っていたぞ、と。皆、そう思ってくれているのだろう。

「表彰状 第四百六十七回夏季タイトル戦 最優秀出場者賞

セカンド・ファーステスト 殿

右の者は第四百六十七回夏季タイトル戦において、明瞭に最も優れた技能を持ち、一閃座・叡将・霊王の三冠を防衛、四鎗聖・千手将・天網座・闘神位・毘沙門の五冠を獲得し、前人未到の八冠を達成した。その至高たる技巧は独自性に富み、その孤高たる精神は数多の人々を奮い立たせ、その崇高たる意志はタイトル戦への愛に溢れている。まさしく唯一無二の傑物である。よってその栄誉を讃え之を表彰す。

キャスタル王国第十八代国王マイン・キャスタル」

……ありがとう。

つい、そんな言葉が浮かんだ。

俺がタイトル戦に出て勝ち続けることを、これほど真剣に考え、これほど数々の言葉を凝らし、これほど一生懸命に評価してくれた人は、他にいないだろう。

ありがとう、マイン。

これは、素敵な賞だ。素晴らしい贈り物だ。末永く続けていくべきだと、心からそう思う。

願わくは、俺以外の誰かが受賞できるように。

向こう三十年は、譲るつもりはないがな――。