軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12 炎狼之弓

3週間が経った。

俺とシルビアは来る日も来る日もロイスダンジョンを周回し、今や1日6回は攻略できるようになっている。

ダンジョン周回で経験値はガンガン溜まり、俺もシルビアも「駆け出し中級者」から「選りすぐりの中級者」くらいにはレベルアップしたと思う。この世界の中級者がお茶っ葉だとすれば俺たちは厳選茶葉、そうめんだとすれば青色と黄色の2本ってなもんだろう。

俺の【剣術】スキルはといえば、早々に《角行剣術》と《飛車剣術》を習得し、順調にランクを上げている。現状どちらも初段だ。効果はそれぞれ「素早い強力な貫通攻撃」「非常に強力な単体攻撃」である。

《龍王剣術》もいずれは覚えるつもりだが、【剣術】主体の戦闘では角行と飛車があれば火力は十分なので、しばらくはこのままで行こうと考えている。

そして、今日。

ついに求めていた物が出現した。

「むっ、これは……!?」

いち早く気が付いたのはシルビア。

いつも通り火炎狼を金角ハメ太郎で処理し、いつも通りゆうに100枚を超えた火炎狼の毛皮を回収しようと近づいた時だった。

そこに落ちていたのは、燃え盛るような緋色をした大弓だった。

「やっと出たか!」

ああ、長かったー……いやぁ長かった。

物欲センサーとは言い得て妙で、ドロップ率2%はあるはずの『炎狼之弓』はなかなか出てくれなかったが、百何十回目でやっと落としてくれた。

ありがとう火炎狼。10ダースも殺してごめんよ。

「これがセカンド殿の求めていた炎狼之弓か! ううむ、何とも強そうだ」

シルビアは地面に落ちている炎狼之弓を見て感心したように言う。

どうやらこいつは勘違いしているようだ。

「いや何言ってんの。これシルビアのだよ」

「…………へっ? ええぇっ!?」

そう言うと、彼女は目を点にして固まった。

「魔弓術師になるんだろ? しばらくはこれ使ってりゃ間違いないから。ほら」

困惑するシルビアに炎狼之弓を持たせて、一発撃ってみろと言う。

しおらしく「う、うん」と言って、恐る恐る弓を構えるシルビア。

ボゥッ――《歩兵弓術》で射られた矢は、瞬時に炎を纏い火矢となってダンジョンの壁へと飛んでいく。

「な、なんだこれは!? どうなってるんだ!? すごいぞ!?」

急激に語彙が貧困になったシルビアが目を丸くして驚いている。

「いや、全く凄くない」

「え、いやいやいや、えっ?」

俺の言葉を受けても「すごいぞ?」とシルビアは言うが、こんなので喜んで満足してもらっちゃあ困る。実を言えば魔弓術としてはカス同然なのだから。

何故なら、だ。

「魔弓術は弓術に加えて高い練度の魔術が要求されるからな。全然なってない。少なくとも火属性の攻撃魔術・参ノ型を覚えてから喜べ」

「……そ、そうなのか。浮かれてしまってすまない」

しょぼんとするシルビア。少し言い過ぎた気もするが、まあいいや。

「ところで、こんなに良い弓を私が貰ってしまってもいいのか?」

「ああ、いいぞ。これから俺は魔術に完全シフトしていくから特に使う予定はない。シルビアが役立ててくれ」

「本当か? では、ありがたく…………ん? 待て、今何と言った?」

「魔術に完全シフト?」

「それだ。私は聞いていないぞ」

「すまん言ってなかった」

「…………」

全くこいつは、とでも言いたげな目でジトーっと見られる。ダンジョンのことも魔術のことも、俺はあえて言い忘れている。シルビアの反応が面白いからな。今回はいまいちだったが。

「弓術、剣術ときて、お次は魔術か……世界一位も夢ではないな」

いよいよ現実味を帯びてきた。それがシルビアも分かっているのか、彼女は感心するように呟いた。

「まだまだ先は長いさ。それより今後のことについて相談がある。王都に帰るまでの道で話し合おう」

「うむ、承知した」

長らく世話になったロイスダンジョンを後にする。

そして、俺とシルビアの拠点は大きく変わることとなった。

「王立魔術学校へのコネ?」

帰り道で、俺はシルビアに相談を持ち掛けた。

「そうだ。お前はヴァージニア騎士爵家の次女なんだろう? コネかなんかないか?」

【魔術】スキルを習得するには『魔導書』を読む必要がある。攻撃魔術「壱ノ型」の魔導書はコミケに置いてあるが、「弐ノ型」「参ノ型」の魔導書は基本的に魔術学校にしか置いていないのだ。

かてて加えて、俺は魔術学校内の何処にそれらの魔道書が置いてあるのかが分からない。sevenの頃は弐ノ型も参ノ型も時短のためにオークションという名の裏ワザでリアルマネー取引をして入手したからな。全部で3万円した。まあ俺にリアルなんてなかったから痛くも痒くもないが。

ともかく、俺は何としても魔術学校へと“潜入”しなければならない。

何故、潜入なのか。それは時短である。

王立魔術学校は教師と学生以外の立ち入り禁止だ。じゃあってんで正規ルートで入学しちまえば、そりゃ中に入ることは可能になる。でも転入のための試験を受けて面接を受けて手続きを済ませて金払ってさぁ入学、となるまでにどれだけ時間がかかるか分からない。もちろん入学式なんて待てない。

だからこそ、コネを使って「ちょっと魔術学校に入らせてもらえませんかね?」としたいところなのだが……。

「む、無理だ。私は剣の才能がないと父上に見放されているのだぞ? こんな不出来な娘の頼みなど聞き入れてもらえるとは思えん」

「聞く限り、お前の親父は実力主義者なんだろ? だったら今のシルビアの実力を見せてみたらどうだ?」

「いや、それでも厳しいだろう。父上はその剣の腕一つで武功を立てて騎士爵となった人だ。剣を捨てて弓に逃げたなどと言われるやもしれん。それにあの頑固者に弓が受け入れられるかどうか……」

まあそんな感じだろうとは思っていた。

うん、致し方あるまい。

こうなったらもうシルビアパパを「騙くらかす」しかない。

「よし、俺にいい考えがある」

「……何故だかものすごく嫌な予感がするんだが」

「へーきへーき。詐欺師によって得意な嘘ちがうから」

「言ってることが全然平気じゃないぞ!?」

俺はシルビアをなだめすかして、作戦概要を説明した。

名付けて「ダマクラカス作戦」――決行は明日である。