軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第42話

「ねえ、澪ちゃん。澪ちゃんって、料理得意なんだよね?」

エアリス達が多忙で、合同デートの日程の目途も経たぬまま迎えた新学期。宿題の提出ラッシュが多少落ち着いたある日のこと。

いつもの時間に登校してきた澪に対し、挨拶もそこそこに凛がそんなことを言ってきた。

「……深雪姉よりは上手いけど、得意というほどじゃない」

「深雪先輩って、結構料理上手だって聞いたけど……」

「得意というなら、唐突に渡された正体不明の食材と冷蔵庫の中のあり合わせだけで、手早く一食分のおかずを用意できないとだめ」

「……それ、中学生に適用するような基準じゃないと思う……」

澪の恐ろしい基準に慄き、思わずそう突っ込みを入れる凛。

澪が出してきた基準を満たすには、技量だけでなく知識と経験もプロ級のものが必要となる。特に正体不明の食材を扱うとなると、どれだけ幅広い食材に触れてきたかの勝負になってくるだろう。

よほど特殊な事情でもない限り、中学生にはどう逆立ちしても不可能だと断言していい。

もっとも、そんなことを考えつつも、澪ならできても驚きには値しない、などと思っている凛。

ぶっちゃけた話、凛の中で澪は、人間ではなく水橋澪という生き物なので、同じ中学生というカテゴリーには入っていなかったりする。

「で、朝からいきなり、何?」

「えっとね、もうじき調理実習なんだけど、澪ちゃんに協力してもらいたいかな、って」

「心配しなくても、ボクと凛は基本同じ班になると思う」

「うん、まあ、そうなんだけど」

協力も何も、といわんばかりの澪の言葉に、ちょっと回りくどかったかと反省する凛。

恐らく凛の言いたいことなど分かっていての反応だろう、という予測はできているが、澪は時折、こういうやり取りで妙に慎重になることがある。

「林間学校の事もあるから、あたしに料理教えてほしいの」

「ん、了解」

凛のお願いに、あっさりうなずく澪。それを聞いて、思わずほっとする凛。

「よかった。うち、お母さんもあんまり料理が得意じゃないから、教えてもらおうにもちょっとね~」

「去年の調理実習はどうしてた?」

「去年は自分たちで一から作ったのは卵焼きとか野菜サラダとかの簡単なものと味噌汁ぐらいで、あとは学校が用意したハンバーグを焼いただけだったからどうとでもなったって感じなんだ」

「なるほど」

凛の説明に、納得したようにうなずく澪。

余談ながら、去年は澪は調理実習に参加していない。経過観察のための精密検査が調理実習のある日にばかり重なり、結局一度も参加できなかったのだ。

なお、今年は家庭科室が老朽化による設備更新のため、一学期の大部分が使用不可能だった。そのため、各学年の調理実習は二学期と三学期に一気に行う形でカリキュラムが調整されている。

「別に料理教えるのは問題ないけど、林間の事があるって、何?」

「林間では二日間の夕食が全部自炊なんだって。だから、料理練習しとかないとひどい目にあいそうで……」

「入院生活が長いから林間とかキャンプとか行ったことないけど、そういうので作る料理なんてカレーとかその程度だから、そこまで気合入れて練習しなくても作れるはず」

「だといいんだけど、去年の調理実習とか見た上で、自分のこれまでのあれこれとか踏まえるとものすごく不安」

「……一体、去年何が……」

凛の言葉に、無表情のままジト汗を浮かべながら慄く澪。

言っては何だが、サラダと卵焼きと味噌汁は料理の基本であり、カレーはそれらを若干発展させた程度のものだ。それで不安を覚えるなど、尋常ではない。

「……凛、とりあえず確認」

「どうぞ」

「レタスとトマトだけのサラダは、大丈夫?」

「さすがにそれは、といいたいところだけど、たまにトマトがうまく切れないんだ」

「それは包丁に問題ある可能性もあるから、ちょっと横に」

「そうなんだ」

「ん。包丁の刃が鈍ってると、トマトみたいな柔らかいものはちゃんと切れない」

「へ~」

澪の解説に、感心したようにうなずく凛。他にも去年同じクラスだった生徒が、同じように澪の説明を聞いて感心している。

「次。キャベツの千切りは大丈夫?」

「すごく苦手」

「ん。人参とかジャガイモの皮むき、はピーラーで何とかするとして、そのあたりを切るのは?」

「カッコ悪くなっても気にしないなら、なんとか」

「ん」

それだけの質問で、時々料理をすることがなくもない、というレベルだと大体のあたりをつける澪。

とりあえず聞く限りでは、少なくとも包丁関連で大惨事を起こしたわけではないらしい。

もっとも、包丁関連で大惨事を起こしたのであれば高確率でどこかにその痕跡が残るだろうから、凛の体に傷跡その他がなく病院に担ぎ込まれたという話もなかった以上、極めて低い可能性ではあるのだが。

「じゃあ、次。炊飯器でご飯炊いたことは?」

「一応あるよ。心配しなくても、さすがにお米を洗剤で洗うとかはしないから」

「卵焼き、作れる?」

「十回やって一回は焦がしたり巻くの失敗したりするけど、全然できないわけじゃ」

「味噌汁作る時に、味噌入れてから沸騰させたりとかはしてない?」

「えっ? それ駄目なの?」

「ん。食べられなくなる種類のものじゃないけど、推奨はしない」

質問を聞いて驚く凛に対して、家庭科の授業でやってたはずなのに、などとある種の不安を覚える澪。

その不安を確認すべく、最後に一番重要な質問をする。

「凛、料理するとき、ちゃんとレシピ通りにやってる?」

「やってるよ~。調味料の分量とかはちょっといい加減だけど、でも計量スプーンでちゃんと測ってはいるし」

「……だったら、なんで大惨事?」

「調理実習とかだとね、調味料をよく取り違えたりするんだ……」

凛の言葉に、味覚的な意味での大惨事だと理解する澪。もっとも、そもそもの話、正体がわからない調味料を味見もせずに使えば、当然の結末だと言えなくもない。

「他にも、男子が卵焼きに使うとは思えないほどの量の油投入した挙句にふざけて中華の鉄人とかやって引火させて、パニック起こした如月さんが危うく水を投入しそうになったりとか、もうね……」

「包丁とか火を扱う場で、そんな悪ふざけをすること自体論外」

「だよね……」

澪の言葉に、気まずそうに目をそらすクラスメイト数名。男子だけでなく女子も混ざっているあたり、色々と難儀な話である。

割とそういう常識的な言葉からかけ離れた言動も多い澪から正論をぶつけられるのは、はっきり言って痛いどころの話ではない。

ちなみに、去年のクラスでクラス委員だった如月千歳は、今年は違うクラスである。他にも幾人か比較的仲の良かった人間が違うクラスに移っている。

「とりあえず、凛」

「何?」

「さすがにボク、クラスメイト全員の面倒見る気はない」

「ああ、うん。そうだよね」

クラスメイトの様子や態度を見て、先手を打って釘をさす澪。そんな澪に同意し、周囲をジト目で見る凛。

「それにしても、林間学校って普通なんとなく夏休み前のような気がするけど、どうして十月?」

「毎年使わせてもらってる施設の改修工事が、予定よりだいぶ長引いちゃったんだって。他の学校はさっさと見切りつけて別の施設を利用したらしいんだけど、うちの学校は競争に負けていい時期の予約を取れなかったみたいで」

「なるほど」

凛の説明に、納得したようにうなずく澪。実のところ、この件についてはちゃんと全校集会で連絡があったのだが、澪は月のもので体調を崩して休んでいたため、事情を知らなかったのだ。

なお、特に触れなかったが、深雪の修学旅行は五月の連休明けに終わっている。どこの観光地でも売っている類の、パッケージが違うだけで生産元と中身は同じ、というお菓子類をわざとお土産に買ってくるというネタに走ったこともあり、特に話題にもならなかったのである。

「とりあえず、いつ教える? 後、どこで教える?」

「いつ、っていうのは澪ちゃんの都合でいいよ。どこ、はあたしか澪ちゃんの家?」

「ん、了解」

凛の言葉にうなずき、どうするかを考える澪。

正直なところ、澪は宏達と違い、基本的に平日の放課後は割と暇だ。未来から撮影の仕事が来ることもあるが、それも言われた日でなければだめ、という事はまずない。

なので、今日の放課後いきなりでも全く問題はないのだが、材料などの準備や保護者の許可の問題もあるだろうから、そのあたりも踏まえて日程を決める必要がある。

「……一応、別に今日学校終わってからでもいいけど、後々の事も考えて凛の家でやりたいから、取りあえずまずは明日か明後日で」

「分かったよ。ちょっと、それでお母さんに話しておくね」

「ん。一回目のメニューは、割と初心者向けかつ応用がききやすいハンバーグで。材料は学校帰りに調達」

「OK」

澪の提案にうなずいて、端末を操作して母親に連絡を入れる凛。

余談ながら、潮見第二中学では、帰り道に商店街やスーパー安食屋で買い物をするぐらいの事は許可されている。共働きが多くて学校帰りに買い物をしたい生徒が多いため、できればこれぐらいは目をつぶってほしいという意見が多かったのだ。

商店街で店をやっている家の子供も多く、また、半数以上の生徒が帰宅方向的に多少の回り道で商店街もしくは安食屋に寄れることも、わざわざ禁止しなくてもいいだろうという判断に傾いた理由となっている。

何よりこのエリアはやたら地域の大人の目が光っており、生徒が悪さをすればすぐ学校や警察、保護者に連絡が入るのだ。生徒の方もそれが分かっているので、相当やんちゃな悪ガキでも、下校中にわざわざこのエリアで悪い事はしない。

結局のところ、その程度にはしつけが行き届いており、地域の治安や人間関係も安定している、という事である。

なお、帰宅方向が反対向きの生徒はどうしているかというと、校区割りの都合上、そういう生徒は他のスーパーやコンビニにたどり着く前に自宅へ帰りつくので、普通に着替えて自転車で買い物や遊びに出ている。

このあたりの校則や事情に関しては、潮見第一中学や第三中学も大体同じである。

「一回目って事は、また教えてくれるの?」

「ん。凛の時間と予算の都合次第だけど、野菜炒めや唐揚げ、シチュー、肉じゃが、生姜焼き、菜っ葉の煮物なんかの定番は全部仕込む」

「いいの?」

「ん」

凛の問いかけにうなずく澪。料理を教えるというのだから、そこまでやらなければ意味がない。

「それにしても、ずっと入院してたのに、澪ちゃんはいつどこで料理覚えたの?」

「基本はVRのネトゲで。そのあとリハビリの一環として、お母さんとか春姉に教えてもらいながら、実際の肉体での料理を練習した」

「なるほど」

澪の説明で疑問が解消したようで、凛が感心しながらうなずく。

VR技術全盛とも言われている昨今、その手の練習をネットゲームでやって上達したという話は珍しくもないが、凛がその実例と身近に接したのはこれが初めてだったりする。

「何だったら、凛もゲームで練習するっていう手もある」

「魅力的だけど、勉強そっちのけで遊んじゃいそうだから、親の許可が下りないかも」

「接続時間の上限は四時間だから、普通は大丈夫」

「接続時間はそうでも、ゲームできない時間に情報サイトとか見て時間潰しちゃいそうなのがね~」

「……確かに」

自虐の入った凛の言葉に、それはあるかもとうなずく澪。遊びたい盛りの中学生が、ゲームを前に我慢できないのはある程度仕方がない事であろう。

「やるやらないはどっちでもいいけど、やるにしてもリアルで実物触って練習しないと分からない事も多いから、ゲームだけでは限界がある」

「やっぱりそういうもの?」

「ん、そういうもの」

などと話しているうちに、担任の池上先生が入ってくる。それを見て、すぐに着席するクラスメイト達。

そのまま出欠確認のみで特に連絡事項のないホームルームから一時限目の授業へと進み、退屈ではないが面白いとも言い難い授業が始まる。

そんなこんなで中学生のルーチンワークに埋没し、休み時間に凛の母から今日すぐに教えてほしいと言われるまで、料理を教えることは一旦頭の片隅に追いやる澪であった。

「それで、今日話をして今日教える流れになったんだ」

「ん。相手のお母さんがやけに乗り気で、材料用意しとくから今日お願い、って」

その日の夜。フェアクロ内。

澪がいつもより遅くにログインしてきた事をきっかけに、春菜達は澪の学校でのあれこれについて駄弁っていた。

ちなみに、現在はグランドクエストの終章手前まで進んでおり、ストーリーの内容的にそろそろボスラッシュという事で、今日は宏の隠れ家で装備の調整や強化、消耗品の補充などを行っていた。

なお、フェアクロ内なので全員ゲームアバターで、会話もロールプレイしている。

「それで、ミオンちゃんのお友達って、どんな感じだった?」

「ん、普通に下手、ってぐらい。レシピの見方とかもあんまりよく分かってない感じだったから、要練習」

「なるほど」

「中学生の平均を知らないから何とも言えないけど、食べられないようなものは作らないから、あんなものだとは思う」

「私の高校の時の調理実習を思い出す限り、それなら料理できるほうかもしれないね」

「そうなの?」

「うん。卵焼きも焼けないような子も何人かいたし、手順を付きっ切りで説明してもらってもハンバーグにならなかった班もあったから」

予想以上に高校生の調理能力が低い事を知り、それで大丈夫なのかという表情を浮かべる澪。凛と仲良くなったからか、それとも深雪の指導の賜物か、最近の澪は結構表情豊かである。

それを聞いていた真琴(現在は大男ガストのアバター)が、自分に飛び火しないように明後日の方向に視線を向ける。

今でこそあまり得意ではない、程度には料理を身に着けている真琴だが、中高生だったころはろくに料理もしていなかった、どころか積極的に逃げ回っていたため、少し前まではかろうじて卵焼きと野菜サラダが作れるにとどまっていた。

現在は今後独立したときの事を考えて春菜に料理を教わっているが、あのまま引きこもりを続けていれば、まず間違いなく一生料理とは無縁で過ごしていただろう。

「まあ、最近は別に料理できんでも食うには困らへんし、自炊しとったら安全で健康的なもんばっかり食えるとも限らへんから、しゃあないで」

「そうじゃのう。うちも妊婦がおるから注意はしておるがのう、残念ながら調味料なんかはなかなか自力でどうにかはできんから、時々怪しいものが混ざり込んでくるのが難儀なところでのう」

「保存料が安全なんかとか、疑いだしたらキリあらへんからなあ」

「今時、そこまで危険な保存料とか着色料もほとんどないけど、輸入品とかはたまにものすごいのがあるから厄介なんだよね。野菜とかにしても、日本だともう半世紀以上前に使用禁止になって製造すらしてないような危ない農薬を、これでもかってぐらい使ってる事もあるし」

宏と詩織(現在オジジのロールプレイ中)の会話に、春菜が困ったものだという感じで口を挟む。

その手元ではウロボロスの逆鱗あたりの肉が、しょうゆベースの怪しげなたれに付け込まれては七輪に乗せられており、高位食材のはずなのに妙にジャンクフードな匂いが漂っている。

それに使われているたれの成分や原材料を知っている詩織たちからすれば、春菜の台詞はどの口で言うかという感想しか浮かばない。

無論、宏と澪は作った側なので、春菜の台詞にも何ら違和感や疑問は持っていない。

「そういうのは、検疫で弾いておるのではないのかね?」

「弾いてはいるけど完璧って訳にはなかなかいかないし、検疫じゃ調べづらい部分にたっぷり残留農薬が、って事例も結構あるんだ。かといって、農薬一切使わない野菜が安全か、っていうとそうとも限らないし」

「そのあたりは、堂々巡りじゃろうなあ……」

「そうなんだよね。一切農薬使わないってやり方で野菜の中のアルカロイドが強くなるぐらいならまだしも、うちの畑みたいに積極的に病害虫を駆除したり天敵をフェロモンで呼び寄せたり、みたいな野菜が蔓延するとさすがにちょっと嫌だし」

「……お主の畑は、そんなことになっておるのか?」

「うん。人目のない所では結構すごいみたい」

達也扮するオババの疑問に答えつつ春菜が投下した情報に、思わず遠い目をする一同。

フェアクロ世界で慣れている上に、お裾分けした相手も含めて食って誰も体調を崩していないどころかむしろ健康になっているのだから、今更その話を聞いたところで拒否感は抱かないものの、たまにはまともな着地点に落ち着いてほしいと思わざるを得ない。

とはいえ、春菜のような特殊事例はまずないにせよ、元の話に関しては完全無農薬の有機農法で作った野菜で体調を崩す事例もないわけではないので、限界まで使用量を絞って最も有効なタイミングのみ農薬を使うのとどちらがいいかは、何とも言い難いところではある。

結局のところ、このあたりはどこで折り合いをつけるかでしかないだろう。

そもそも、春菜の畑は完全無農薬の有機農法ではない、どころか必要最低限ではあれど普通に農薬も化学肥料も使っているという点については、ここではあえて追及しないことにする。

「まあ、そのあたりはそれこそ気にしてたらキリがねえから置いとくとしてだ。料理の話に戻すが、そろそろオレも一度、普通の家庭の普通の台所で料理の練習したほうがいいんじゃないか、って思ってるんだよなあ」

「確かに、ガスト兄さんが下宿しとる所の厨房やと設備整いすぎとって、料理覚えるんはともかく自炊の練習にはあんま向かんかもなあ」

「そうなんだよな。オレだっていつまでも下宿させてもらう訳にはいかないし、かといって独立したところでそこまで料理が好きなわけでも得意なわけでもねえから、あんな立派な厨房は絶対用意しないだろうしなあ……」

「あんないかつい厨房、個人宅でっちゅうと物凄い金かかる上に効率悪いし、ガスト兄さんの下宿先みたいにそこそこの頻度で大人数持て成さなあかん機会がある家でもないと、ほとんど意味あらへんからなあ」

「だよなあ」

宏の言葉にうなずく真琴。現在練習で使わせてもらっているのは藤堂家の厨房なので、下手をすればホテルのメインダイニングぐらいの設備が整っているのだ。

そもそも普通の個人宅に、何百点単位で食器や調理器具を洗浄できる食洗などあるはずもなければ設置する意味もなく、片付けの仕方も割とアバウトになりがちな現在の感覚では、引っ越しした際にえらい目に合うのは目に見えている。

ゆえに、現状で手際が良くなっても、あまり効果がないのではないかと不安でしょうがないのだ。

一応個人宅レベルの台所も藤堂家には存在するが、そっちは春菜の根城となっているため、メインの厨房とは別の意味でとても料理の練習には使えない。

そんなこんなで、そろそろ真剣に普通の台所で料理する練習をしたい真琴であった。

「ガスト兄の料理は横に置いとくとして、独立って言葉で思い出したことが一つ」

「何や?」

「師匠とファル姉って、今度家から独立して会社立ち上げることになってたよね? 結局あれ、どうなったの?」

「ああ、あれか。結局僕とファルナさんで二百五十万ずつ、ガスト兄さんに二百万出してもろて、残り三百万を後見の人らにお願いすることで話まとまってな。近いうちにファルナさんのお母さんから事業譲渡してもらうとか、そのあたりの手続き済ませて登記する予定や」

「師匠、二百五十万なんて大金、持ってたの?」

「賠償金とかからいざという時に僕名義で貯め込んであった金が、結構あってな。二百五十万やったらそこから十分出せるから、ファルナさんと出資比率が均等になるように調整してん」

宏の説明に、なるほどと納得する澪。賠償金の使い方としては、ある意味妥当であろう。

「結局、オジジとオババは出資しなかった?」

「さすがに何十万という金を、ポンと出すのはきついからのう」

「今後、出産育児が控えておるとなると、ちっと踏み切れなんでなあ」

澪の質問に、達也と詩織が正直な事情を答える。

いくらエリートで共働きとはいえ、普通のサラリーマンにしか過ぎない達也には、何十万単位の金を出すのは少々つらいところである。

一応五万ぐらいの小口でもいい、とは持ち掛けられたのだが、今度は逆にそんな小口で経営に口挟むのか、みたいな意識が出てしまって、結局踏み切れなかったのである。

ちなみに、今回に関しては諸般の事情で、あえて一千万の資本金を用意する昔のやり方でやっている。

宏たちのケースだと、資本金をちゃんと用意しておかないと面倒なトラブルが多かったりする。そのため、礼宮がバックアップしていることも、全面的に傘下に入っているわけではないこともはっきりさせるために、分かりやすい金額として一千万の資本金を用意する方向で進めている。

「そういえば、お主らの会社名は、結局『アズマ工房』なのかの?」

「うん。私とヒロ君の会社っていうと、それが一番すわりがいいしね」

「どうせふかし芋カッターみたいなんとかも作ることになるやろうから、っちゅうことで、工房でええやんって話になったんよ」

「まあ、お主らが会社経営なんぞして、農業と特許の管理だけで済むはずもなかろうしのう」

結局アズマ工房に決まった宏と春菜の会社に対し、みんな思っていたことを言う達也。

そもそもの話、特許の管理の時点で、工房要素がガンガン入ってくるのは目に見えている。農作物にしたところで、素直に食べるものだけに使うとは限らない、というより、蔓や根っこなどの出荷しない部分を化粧品だったり石鹸だったりに加工するようになるのも時間の問題だ。

もっと言うならば、ウルスのアズマ工房も最初の方は食べ物系が少なくない割合を占めていた。生産量的にはいまだに各種調味料がかなりの量であることを踏まえると、工房と名乗りながら農業や食べ物がしばらくメインに来ても、大した問題ではないだろう。

「何にしても、ヒロとファルナの就職関連はこれで完全に解決だな」

「そうじゃのう。ファルナがヒロの実家に就職しようと頑張り始めた時には、割とひそかに大丈夫なのか不安になったものじゃが」

「とりあえず、落ち着くところに落ち着いた感じだよな」

「うむうむ。たとえヒロの実家といえど、ごく普通の鉄工所じゃからの。普通の会社に就職するのは、二人して勤め続けられるかどうかの方で厳しかろうから、いろんな意味で一安心じゃ」

「まあ、そのあたりはオジジとオババ以外は、みんな似たようなもんだけどな」

達也の言葉に、真琴が苦笑しながら突っ込む。

良し悪しは横に置くにしても、基本的に揃いも揃って一般的なレールからは見事に外れた人間が揃っている。

協調性にこそ問題はないが、神化してる云々を無視してもなお、それぞれに普通の人間社会に溶け込んで暮らすには結構致命的な問題を抱えているのが難儀なところであろう。

「とりあえず、師匠、ファル姉。ボクが就職するぐらいまで、会社存続させてくれるとうれしい」

「特許関連の管理が主体になるから、二十年ぐらいは大丈夫だとは思うけど……」

「っちゅうか、特許に関しては出願してから取れるまで結構時間かかるから、言うほど利益出えへんのちゃうか、っちゅう感じやねんけど」

「例のメロンの種や苗の管理・供給も独占するんだから、その程度のタイムラグはそっちの方で普通に吸収できるんじゃねえか?」

「そっちは私達が育てたメロンを直接卸すものが一番高値になりそうだ、って話だから、種とか苗の収益はそんなでもないかも」

「作る農家にも利益ないとあかんねんから、種とか苗はそんなすさまじい値段では卸せんで」

春菜と宏の言葉に、それもそうかとうなずく真琴。

潮見メロンに関しては、徹底したご当地食材化と高級ブランド化路線を取る予定なのもあり、基本的に苗はそんな大量には出回らない予定だ。

また、高級ブランド化といってもやはり限界はあるので、苗一つで何千円も、という訳にもいかない。

一応二級品は地元スーパー限定で出荷する予定があるのだが、潮見市の人口を考えると、下手をすると食べたことがない人の方が多くなりかねないぐらいの生産量になりそうな雰囲気である。

「あと、通販とかでメロン買うて、その種自力で育てて地元で再現、っちゅう可能性も普通にあるから、結局そこまで高くはならんかもしれんねんな」

「あ~、それは否定できねえな。実際、日本の農家はすげえ優秀だからなあ」

「ねえ、ガスト兄。日本の農家が優秀なのは否定しないけど、師匠とファル姉が関わったメロンが、そんな素直に他所の土地で育つか疑問」

「そっちはそっちで否定できねえよなあ……」

宏と澪、両方の指摘に、思わず頭をかきながら同意する真琴。

宏たちの日本では、過去の政権交代の際に無茶をやった素人政権が変えてはいけない部分を多く変えてしまっており、特に農業の新品種絡みはその変更を元に戻すのに手間取って権利者保護がおざなりになっているのだ。

結果として、守られているのは政権交代前に登録された新品種のみ、みたいな状態が続いているが、一度変えたものを元に戻すのは十年二十年ではなかなか、という感じで、今の今まで尾を引いているのだ。

実際、宏が指摘したように潮見メロンのデビュー二年後には、直接潮見のスーパーで購入したメロンの種からの栽培にチャレンジした農家が全国各地に現れた。

が、澪が突っ込んだように、どういう訳か潮見市以外の農地で育てたメロンは、何回育てても潮見メロンの最大の特徴である薄桃色の果肉にならず、色も味も食感も普通のマスクメロンと同じものになってしまって見事に挫折した。

結局、潮見メロンを他の土地で味わうには潮見の農家から買い付けるしかなく、流通範囲が基本地元限定だったこともあって農協が流通にほとんど関与していないこともあり、メロンのブランド価値は見事に守られる事になる。

が、現時点では機密保持の関係もあって、他所の土地での栽培実験など行われていない。そのため、この事実が確定するのは澪が大学を卒業するころになるので、この時の宏達は半ば冗談半分でこの話をしている。

「どっちにしても、種とか苗とかに関しては、よっぽど大規模に流通させないと、多分そんなすごい収益にはならないんじゃないかな」

「そうよのう。高級品と言うたところで、野菜や果物では限度があるからのう。それにそもそも、高級食材なんぞもとよりさほど買う人間は多くはないしのう。少なくとも儂らの家では、お主らからもらえなければせいぜい国産にこだわる程度で、普通にスーパーで買えるものしか手を出さんしの」

「そうだよね。で、苗一つでどれぐらい収穫するかにもよるけど、肥料とかも必要になるんだから、普通の人に売る前提だとそんなに高い苗をたくさん使うとかできないよね、実際」

詩織の主婦目線での言葉に同意し、他のコスト要因も上げながら種苗事業がそこまで収益を上げられなさそうな理由を口にする春菜。

この手の事業は、販売ルートや低コストで収益を上げるノウハウ、事業環境や収益構造などの問題で、どうしても古くから続いている大手に対抗するのは難しい。

あくまでおまけ程度であろう。

「それにしても、どうでもええ話やねんけど、オジジの外見とか声で主婦くさいこと言われると、ものすごい違和感やな」

「師匠、それ今更」

真面目な話題に疲れたか、唐突に余計な事を言い出す宏に対し、思わず突っ込みを入れる澪。

この後、お互いのロールプレイやら何やらに対する益体もない話題で盛り上がってしまい、結局この日はボスラッシュにまで届かずに終わるのであった。

「そういえば、澪ちゃんの誕生日ってそろそろだったよね。いつだっけ?」

「九月八日、もう過ぎてる」

「ええ!?」

調理実習当日。エプロンに三角巾、手洗い消毒を済ませながら、凛と澪がそんな話をしていた。

「言ってくれたらよかったのに」

「雑談で話が出たとかならともかく、こういうの自分から言い出すのって、催促してる感じで嫌」

「分からなくはないんだけどさ……」

「それに、次の休みに春姉達がお祝いしてくれるから、そっちを楽しみにしてる」

「いいなあ……」

いつになく楽しそうに言う澪に、心底うらやましそうに言う凛。家族に誕生日を祝ってほしがる年頃は脱しつつある凛だが、楽しそうなパーティというのはやはり心惹かれるものがあるのだ。

なお、澪と誕生日の時期が近いライムに関しては、エアリスとアルチェムの帰還が遅れた影響が大きく、それに気を使った本人がパーティとかしなくていいと言い切ったため、料理の特訓もかねてファム達が普段作らない御馳走を作る程度で終わらせている。

ちなみに、凛の目には楽しそうに見える澪だが、他の人間は総一郎以外、普段との違いはほぼ判らないレベルである。

「何だったら、凛と総一郎も来る? どうせ人数的にうちだと手狭だから、春姉のところでやる予定だったし」

「いいの?」

「ん。凛にも総一郎にもいつも助けてもらってるし、それに人数多い分にはむしろ春姉が張り切るからプラスになるし」

「だったら、招待してもらっていい?」

「分かった。総一郎はどうする?」

「そうだなあ。俺もいろいろ気になってたし、澪がそんな楽しみにしてるってことは、すごいうまい物が出てくるんだろ?」

「ん、当然」

「なら、悪いけど俺も混ぜて」

総一郎の返事に満足そうにうなずくと、春菜に対して二人追加、というメッセージを送っておく澪。そこから気を引き締めるように表情を真剣なものに(と言っても、やはり凛と総一郎ぐらいにしかわからないのだが)変えて、調理実習の注意事項を口にする。

「今日のメニューは肉団子の甘酢あんかけと青椒肉絲に中華風サラダ、みそ汁。言うまでもないけど、包丁持ってる時と青椒肉絲炒めてる時は悪ふざけ厳禁」

表情こそほぼ変化がないものの、全身からすさまじいまでのプレッシャーを発しながら、クラスメイト全員を威圧するように言い切る澪。

「「「「「「イエス・マム!!」」」」」」

そのあまりの迫力に、クラスの反応が一つになる。

「肉団子にかける甘酢あんは基本的に市販品だから、書いてある通りにやれば誰でもできる。肉団子は成型と焼くか揚げるかの違いだけで、作業はハンバーグと同じ。そこまでの作業は、まずやって見せるからレシピ確認しながら見てて」

「中華風サラダは、基本切ってこの用意されてるドレッシングで和えるだけでいいの?」

「ん。そっちの材料は、全部切る前のところまで完成してるから、完成写真参考に切っていけば特に難しくないはず」

「てか、去年より手をかけるところは増えてるけど、やっぱり一から十まで全部はやらないんだ」

「中華風サラダの場合、蒸し鶏とか面倒な作業があるから、料理したことがほとんどない中学生がほかのメニューと一緒にやるのは荷が勝ちすぎる」

「あ~、なるほど」

「そもそも一般家庭の主婦だと、あまり自分で作らない類の料理。どこのスーパーでも出来合いの総菜として売ってるから、普通はそれ買って食べる」

そう言いながらも、見本とばかりに手際よく肉団子や青椒肉絲の材料を洗っては切っていく澪。その手際の良さ、それも主に玉ねぎのみじん切りの速度と仕上がりの綺麗さにクラス中からどよめきが起こる。

「水橋さんは、普段から料理してる?」

「割と。夕飯は二日に一回ぐらい、お弁当は毎日自作」

あまりに堂に入った説明と作業の手際の良さ、それに何より食べ物と刃物、火を扱う場でふざけるなという言葉を一発で叩き込んだ本気度合いに気おされ、思わず自分の仕事を譲っていた家庭科の先生が口を挟む。

「水橋さんって、去年までずっと入院してたのよね? 料理の練習なんていつどこでやってたの?」

「基本的な部分はVRのネットゲームで。現実での実地は、退院してから各種リハビリも兼ねて」

「最近のネットゲームは、現実で出来る作業は割とリアルな手順を要求するものも結構あるものねえ」

先生の言葉にうなずきながら、とりあえず全部の材料を切り終える澪。この程度の雑談で手元を狂わせたりはしないことぐらいは見ていて分かるので、声をかける方も割と気楽なものである。

「とりあえず、材料のカットはこんな感じ。各班、やってみる」

「「「「「「了解です!」」」」」」

澪の指示に、まるで軍隊のようなノリで作業を始めるクラスメイト達。その間に、凛と総一郎がサクッと中華サラダを完成させる。

「このクラスの調理実習は楽でいいわね。他のクラスだと、一人二人ふざけて危ないことする子がいるから、注意するのも大変で……」

「刃物とか火とか使うのに、ふざけられるっていうのが信じられない」

「怪我してからじゃ、遅いのにねえ……」

「ん。折角五体満足なのに、ふざけて自分から病院送りになったり他人を病院送りにしたりとか、人生舐めてるとしか思えない」

危険物がたっぷりの調理実習でふざけるという行動に、心底イラッと来た様子で澪が言う。その瞬間微妙に漏れ出した冷気に、クラスメイト達が一瞬ビクッとする。

「そもそも、食材だってちゃんと調理しないと食中毒起こしたり寄生虫が生き残ったりで危ないものは多い。手順一個間違えただけで食べられなくなるものだってある」

「そうなのよねえ。最近はほぼ火を通すだけみたいなものも多いから、意外とそのあたりピンと来てない子も親も多いのよねえ」

「知らなかったり初めてだったりで、一生懸命やっても食材ダメにしちゃうのはまだいい。けど、料理してるときに悪ふざけで食べ物をダメにするのは、ボクの目が黒いうちは絶対許さない」

澪の本気を感じ取り、震えあがりながら大真面目に慎重に調理作業を進めていくクラスメイト達。

そのあたりの姿勢を最初から知っていた凛と総一郎は、やれやれという態度で料理を進めていく。

ちなみに、総一郎は味付けが大雑把だったり火加減が適当だったりはするが、普通に料理ができる。両親が共働きで帰ってくるのが遅く、下に弟と妹がいて割といつも腹を空かせているため、料理を覚えないと総一郎を含めて全員飢えることになるのだ。

必要が能力を育てた例と言えよう。

「ねえ、澪ちゃん。みじん切りこんなもんでいい?」

「ん」

「チンジャオの前に、肉団子の種作った方がいいよな?」

「先に作っておかないと、青椒肉絲が冷めて美味しくなくなる」

「だよな」

澪の本気の脅しもどこ吹く風、とばかりに手順を確認しながら、肉団子の種を作りながら澪に声をかける凛と総一郎に、クラス中から尊敬の入り混じった視線が向けられる。

「あ、あの、これで大丈夫でしょうか!?」

「ん、問題ない」

「ひい! ピーマンの切り方がいびつに!」

「それぐらいなら使えるから安心する」

「玉ねぎが! 玉ねぎが目に!」

「……この包丁じゃなくて、こっちの包丁使えば少しはましになるはず」

その後も料理に不慣れな生徒たちの悪戦苦闘は続き、その都度澪がフォローや手順の説明に回る。

その結果

「やった! 今までで一番きれいな料理ができた!」

「肉団子うめえ!」

「市販の青椒肉絲のたれのはずなのに、ものすごく美味しい気がするね」

「うんうん!」

この日の調理実習は大成功をおさめ、中学生が調理実習で作るレベルを超えた料理にありつけたクラスメイト達は、指揮官の澪に今までにないぐらいの感謝をささげるのであった。

なお、週末に澪の誕生日パーティに招待された凛と総一郎だが……

「……あの、澪ちゃん」

「なあ、澪……」

「ん?」

「なんだか、すごくいろんなところからロックオンされてる感じなんだけど……」

「つうか、ものすごい場違いな人たちに顔覚えられてるような気が……」

「深雪姉に目をつけられた時点で手遅れ」

「だよね……」

「だよなあ……」

いると思っていなかった雪菜・スバル夫妻に加え、潮見の人間なら絶対顔を知っていると言われている美優をはじめとした潮見に縁が深い大物が来ており、それらの人物にばっちり顔を覚えられてしまう。

その上

「山手君と大友さんだよね。いつも水橋さんをフォローしてくれてありがとう」

「いえ、俺たちも友達として楽しく遊んでもらってますから。っつうか、基本的にフォローは全部凛に任せてて、俺は大したこと何もしてないし……」

「いやいやいや。総君が陰でいろいろやっててくれるから、澪ちゃんが変な男子とかに絡まれたりしないんだし」

「二人が色々頑張ってくれてる事は、深雪ちゃんからもいろいろ聞いてるんだ。主治医って言っても、さすがに勤務してるわけじゃない学校内の事までは手が出せないし、深雪ちゃんも学年もクラスも違う相手となると、どうしても行き届かない部分が出てくるし」

天音に直接お礼を言われ、泡を食う羽目になる。

「とりあえず、凛、総一郎。折角師匠と春姉が頑張っていろいろ作ってくれたんだから、そろそろ美味しいもの一杯食べる」

「あ、うん、そうだね」

「てか、見たことない料理も結構あるなあ……」

そんな凛と総一郎を見て、なんだかんだで評価されているのを嬉しそうにかつ誇らしげにしていた澪が、二人を救出するように声をかけつつ、多分食べたことがないであろうものを中心に色々取り分けてやる。

ついでに、想い人である宏をそれとなくそうと分かるように紹介したり、詩織のお腹の子供の話をしたり、美優に捕まって澪でもなければ中学生には難しいあれこれを聞かされたりと、今までどこか一線を引いていた感じから一気に身内サイドに引きずり込んでいく。

「なんかこう、澪ちゃんがなんとなく浮世離れしてるの、入院が長くて世間知らずなところがあるからだけじゃないっていうのを思い知ったよ……」

「つうか、今の澪はなるようにしてなった感じだよな……」

「さすがにボクだって、あの人たちが気にかけてくれるのを当たり前だともいつまでもお願いを聞いてもらえるとも思ってない」

「「いやまあ、それはそうなんだろうけど……」」

この日のパーティで、知っているようで今までピンと来ていなかった澪の事情あれこれを初めてちゃんと実感しつつ、これまで以上に澪と仲良くなる凛と総一郎であった。