軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第23話 もう少し喜んだらどうだ?

不合格を突きつけられて項垂れるロイスを後目に、俺が試験を受ける番となった。

隣のレーンへと移動する。

「ブモオオオッ!」

鉄格子の向こうには、やはりミノタウロスの姿があった。

すでに鉄格子に何度もタックルを見舞っていて、かなり興奮していることが窺える。

「ふむ? 先ほどのミノタウロスと違わないか?」

「もちろんさっきとは別の個体だ」

「それは分かっているが」

一般的なミノタウロスは茶色い毛並みをしているが、あれはほとんど黒毛だ。

だが同種でも色が違うというケースはある。

その一例なのかもしれないが……あれは明らかに筋肉の質やプレッシャーが違うぞ。

「は、ははっ! そんなことを言って、失敗の予防線を張っておこうなんて情けないな! そんなことでは君も不合格に違いない! そうだ! 間違いない!」

自分が不合格になったからといって、他人の不合格を期待しないでほしい。

鉄格子が開き、ミノタウロスが飛び出してきた。

その速度は、先ほどよりも遥かに速い。

半分くらいの速度でここまで来そうだ。

「これは……?」

バッカスも違和感を覚えたらしい。

「ファイアランス×2」

俺が放ったのは炎の槍二つ。

それがミノタウロスの下半身目がけて飛んでいく。

ファイアランスであのミノタウロスを倒せるとは思っていない。

狙いは足。

足さえ封じてしまえば、得意の突進を封じることができる。

「ず、ずるいぞっ! そんな手を使うなんて……!」

「いや、ロイス。むしろあれこそが正解だ。相手は魔物。必ずしも正面から堂々と戦う必要はない。より確実に、安全に倒す方法を見極めることこそが求められる」

「っ……」

まぁ別にロイスがやろうとしたように、強力な一撃をぶつけるやり方でも良かったけどな。

「ブモオッ!」

「む?」

ミノタウロスが跳び上がり、炎の槍を回避してしまった。

「な……躱しただと……? そんなこと、並のミノタウロスにできるはずが……」

バッカスが息を呑み、

「まさか上位種!? くそ、何でそんなものが紛れ込んでいるんだっ……? アレル! 試験は中止だ! すぐに上がって――」

「問題ない」

「ブモオオオオオッ!?」

炎の槍が二本とも、ミノタウロスの両足に直撃した。

「っ!? ど、どういうことだ……? 回避されたはず……」

「自動追尾するように術式を組んでいただけだ」

避けられた後、Uターンして後を追い駆けたのである。

上位種のミノタウロスも、さすがに後ろからきた槍を避けることはできなかったようだな。

「ブモオッ……!」

俺が狙った箇所は関節部分。

分厚い筋肉が鎧のように全身を保護しているミノタウロスだが、さすがに関節まではその効果も及んでいない。

しかも重要器官なので、損傷すれば立ち上がることもできなくなる。

それでもミノタウロスは前脚を使ってこちらに近づいて来ようとしたが、

「イラプション」

その速度では、もはや動かない的と変わらない。

「ブモオオオオオオオオオオオオオオオッ!?」

炎に包まれ、断末魔の雄叫びが轟いた。

「も、申し訳ありませんっ! 誤って、セカンドグレードの訓練用に使用しているブラックミノタウロスを連れて来てしまったようで……!」

「セカンドグレードの生徒の中でも一部の成績優秀者が扱う魔物だろう! 相手が普通の生徒だったら大事故になっていたところだぞ……!」

やはり上位種だったらしい。

槍も一度は躱したし、落とし穴くらい飛び越えてしまいそうな勢いだったな。

「ひぃ……」

ロイスが頬を引き攣らせ、下半身をがくがくさせている。

もし立候補せず、俺と順番が逆だったとしたら……ということを想像しているのかもしれない。

そのブラックミノタウロスは、今は黒焦げになっていた。

ミノタウロスの肉は、ダンジョンに挑む冒険者が現地調達して食べることがあるそうだが、これでは味を確かめてみることもできなさそうだ。

「アレルの実技試験の点数は百点。合計二百点で、もちろん合格だ」

どうやら無事に合格できたらしい。

「……二百点満点での合格者など、少なくとも私が教員になってからは初めてのことだぞ。もう少し喜んだらどうだ?」

呆れたような顔で、バッカスは言う。

「ともかく、これで君は晴れてセカンドグレードだ。諸々の手続きがあるため、正式な昇級までは少し時間がかかるが、明日からは私の授業を受ける必要はない。……もっとも、元々ほとんど受けていなかったが」

「どこかの研究室に所属することになると聞いたが?」

「ああ。うちには現在、研究室が大小合わせて全部で二十一ある。しかし学生を受け入れているところといないところがあるため、その辺りの情報については事務で訊くといい。希望すれば見学することも可能だ」

なるほど。

「赤の学院の特徴として戦闘系の研究室が多いことが上げられる。八割はこのタイプで、赤魔法を利用した実践的な戦闘法・戦術を研究・習得し、卒業生の多くは騎士団に配属されたり、冒険者になったりしている。残り二割が理論中心で、研究室に籠っていることが多い。ちなみに私も研究室を持っているが、後者の方だな。主に魔法文字についての研究を行っている。……正直、あまり人気はないが」

ふむ。

せっかくだし色んな研究室を回ってみるとしよう。