軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第47話 しばらく一人で時間稼いで

「グルアァァァァァッ!」

耳をつんざく雄叫びが空から降ってきた。

慌てて空を見上げると、そこにいたのは大きく翼を広げる漆黒のドラゴンだ。

「わ、ワイバーン……?」

「いや、それにしては大き過ぎるような……?」

広場にいる人々も上空を見上げて不安げな表情を浮かべる。

それでも落ち着いているのは、ここには大勢の騎士もいるため、魔物が現れてもそれほど危険だとは思っていないからだろう。

「レイラ……あれは……」

「う、うん……ワイバーンなんかじゃないよね」

僕らが感じているあの魔物の気配は、ワイバーンとは比較にならないものだった。

下手をすればベフィたちにも匹敵するだろう。

それが地上へと近づいてくるにつれ、段々と周囲は騒然となっていく。

「お、おいおいおい……」

「ちょっ、ちょっと待て……な、何だあの大きさは……?」

「や、やばくねぇか、これっ!?」

その魔物に遮られ、広大な広場が陰る。

遠近感がおかしくなりそうなほどに、それは巨大だった。

「あ、あれはっ……ば、ば、ば、バハムートぉぉぉっ!?」

誰かが叫んだ。

神話級の魔物、バハムート。

国王演説中の広場に現れたのは、全長二百メートルにも達する漆黒の邪竜だ。

「「「うわああああああああああっ!?」」」

堰を切ったように人々が悲鳴を上げ、一斉に逃げ出した。

押し合い圧し合いの阿鼻叫喚の巷と化す。

「ぜ、全員、構え! 魔物を撃退するぞ!」

「あ、あんな化け物どうやって!?」

「俺が聞きたい! だがそれが我々の役割だ! 騎士の誇りを見せろ!」

騎士たちは決死の覚悟で隊列を組み、迫りくる巨大なドラゴンを迎え撃とうとしている。

「な、なぁ……あれ、もしかして地上に激突するんじゃ……」

「あんなデカいのがこのまま突っ込んできたとしたら……」

だけど隕石のように落ちてくる巨体を前に呆然としているばかりの彼らに、対処できるとは思えない。

「レイラ、行くよ」

「うん!」

このままでは甚大な被害が出る。

僕とレイラは互いに頷き合うと、地面を蹴って空へと飛びあがった。

凄まじい勢いで迫りくる巨体。

その迫力はやっぱりベフィたちに匹敵、いや、それ以上だ。

「受け止めるよ!」

「ほい!」

僕とレイラは力を合わせて黄魔法を使う。

「「メタルシールド!!」」

出現したのは幅百メートル、厚さ十メートルを超す超巨大な金属盾だ。

バハムートはそのまま速度を落とさず激突してきた。

ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!

「「~~~~~~ッ!!」」

爆音が轟き、僕とレイラはその尋常じゃない衝撃に吹っ飛ばされた。

地上に叩きつけられ、石畳に大きな亀裂が走る。

「レイラさん!? アークさん!」

セレスさんの悲鳴が聞こえた気がした。

でも僕たちは無事だ。

このくらいでやられるような軟な鍛え方はしていない。

「グルル……」

見上げると、バハムートも激突のダメージを負ったようで、フラフラと宙を舞っていた。

頭からぶつかって脳震盪を起こしたのかもしれない。

「〝神空斬り〟」

僕はすかさず空へと飛翔しつつ、斬撃を連続して放つ。

バハムートの巨体に次々と直撃するも、硬い鱗に大した傷はつかなかった。

「あれ?」

そこでふと気づく。

僕が今つけたよりも大きな傷が、バハムートの腹部にあったのだ。

見た感じ、切り傷といった印象を受ける。

そしてまだ真新しい。

他の魔物にでもつけられた傷だろうか?

だけどバハムートにあれだけの傷をつけるなんて、一体どんな魔物だろう。

それとも……。

「メテオストライク!」

僕がそんなことを考えている間に、レイラが魔法で作り出した隕石がバハムートの腹部に衝突していた。

「グルァァァッ!」

「あんまり効いてないよーっ!」

アトラスに致命傷を与えた威力の魔法だったけれど、バハムートにはせいぜい苦悶の叫び声を上げさせただけだった。

……あいつの鱗、もしかしたらリビィのより硬いかもしれない。

「っ!?」

そのとき、ぞっと背筋を強烈な悪寒が走った。

直感的に僕はその場から飛び離れる。

カッ――

バハムートの口から吐き出された光線がすぐ脇を擦過していった。

――ドオオオオンッ!

一瞬遅れて、背後から凄まじい爆音。

振り返ると、お城の外壁の一部が完全に消失していた。

「危な……」

あれの直撃を喰らっていたらヤバかった。

だけど危機は去っていない。

再び嫌な予感。

バハムートはすぐさま次の一撃を放とうとしている。

しかも先ほどとは僕との位置関係が変わってしまったせいで、口が地上の方へと向いていた。

「エクスプロージョン!」

「ッ!?」

カッ――

それを放つ寸前、顎下で魔法が炸裂したことでバハムートの光線は空へと消えていった。

「レイラ、助かった! できるだけ攻撃を上に誘導しないと!」

「うん!」

光線が空へ向くように、僕とレイラはバハムートの頭より上へと飛ぶ。

斬撃や魔法を放ち、光線を回避しながら、僕たちは追ってくるバハムートと螺旋を描くように空へ空へと上昇していった。

何とかこれで地上への被害は防げそうだけど……。

「こいつ、どうやって倒すの?」

やっぱり攻撃が大して効いていないようなのだ。

こちらもまだまだ余裕はあるけれど、延々と戦い続けるなんて御免だった。

「いいこと思いついた! アーク、しばらく一人で時間稼いで!」

「えっ? ちょっ、レイラ!?」

いきなりレイラが離脱してしまう。

バハムートは一瞬どっちを優先するべきか迷ったようだったけど、僕へのヘイトの方が勝っていたのか、そのまま僕を追いかけてきた。