軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第26話 どうせわたしはツルペタ

「……疲れた」

「わたしはすごく楽しかった」

溜息を吐く僕を見ながら、リッカが意地悪な笑みを浮かべている。

こいつ本当に性格悪いな。

今日一日、ずっと双子の妹のモノマネをし続けたことで、僕の神経はすり減っていた。

ようやく授業が終わり、素の自分へと戻ることができた。

「見事な演技。これなら誰も偽物と分からないと思う」

「嬉しくない。てか、いつまでこれを続けないといけないんだよ……」

「卒業するまで?」

「冗談じゃないよ!」

「慣れたら大丈夫」

「他人事だと思ってさ……」

僕たちは女子寮の部屋へと戻ってきていた。

上級生のセレスティアさんやアリサさんが帰ってくるのはもう少し遅い時間だという。

「 レ(・) イ(・) ラ(・) 、今のうちにお風呂に行っておいた方がいいと思う」

「え?」

「この時間なら利用する人がほぼいないから」

寮には大浴場があって、男子寮の方を何度か利用したけれど、確かに使うのはもっと遅い時間だった。

かなり広々としているけれど、それでも時間帯によっては混み合う。

「いや、さすがに使うのはマズいでしょ」

「気にしなくていいと思う」

「気にするよ!」

「それとも後がお好み? 女の子たちが入った後のお湯で興奮するタイプか」

「違うから!」

結局、僕は女子寮の大浴場へやってきていた。

あの後、リッカに説得、もとい脅迫されたのだ。

考えてみたら、リッカは今回の入れ替わりをすべて把握している。

もし彼女が変な気を起こしたら最後、僕が女装して女子寮に入ったことが暴露されるかもしれないのだ。

当然それはセレスティアさんも知るところになるだろう。

……僕、完全に弱みを握られてない?

「ほ、ほんとに人いないんだね?」

「うん。今がチャンス」

中を調べていたリッカが戻ってきてサムズアップする。

まぁ、誰も入っていないのなら大丈夫だろう。

今のうちにさっと身体を洗ってさっとお湯に浸かってさっと上がろう。

僕は大浴場へと足を踏み入れた。

念のため、端っこで服を脱ぐ。

「……ねぇ、何でそこにいるの?」

「気にしないでいい」

「気にするに決まってるから!」

「本当についているのか、確かめようと思って」

「ついてるよ!」

「じゃあ見せて」

「ついてるからこそ見せられないんだってば!」

こんなことやってる暇はないんだけど。

早く入らなくちゃ、他の生徒が入ってくるかもしれない。

「って、何で君まで脱ぎ始めるんだよ!?」

「ついでにわたしも一緒に入ろうと思って」

「なに考えてんの!?」

「気にしなくていい」

「僕の方が気にするんだけど!」

結局、リッカと一緒に入ることになってしまった。

「……ちょっとは隠しなよ」

僕はタオルで大事なところを隠しているというのに、リッカは堂々と晒している。

似たような身体つきの裸を見慣れてはいるけど(もちろん妹のだ)、当然ながら赤の他人の裸体となると恥ずかしい。

「見られても減るものじゃないし」

「幾ら幼児体型だからって、もう少し恥じらいを持った方が――いたっ!? ちょ、なんで蹴ったの!?」

「どうせわたしはツルペタ」

意外にも体形のことを気にしていたらしい。

「ていうか、君、何歳なの?」

「……十四」

「は? じゅ、十四……? 僕より二つも年上だったの?」

てっきりせいぜい同じか、年下ぐらいだと思っていた。

だってレイラより背が低いし、この体つきだし……。

「……どうせわたしはツルペタ」

低い声で再び呟くリッカを後目に、僕はとっとと身体を洗うことにした。

「アンナ、また胸大きくなったんじゃない?」

「ええー、そんなことないよー」

「嘘つけっ! 少しぐらい寄越せー」

「うえー、また太っちゃったかもー」

「あーしもー。ダイエットしよっかなー」

「あんたはちょうどいいぐらいじゃん」

女の子特有のキャピキャピという甲高い声があちこちで響き、耳をつんざく。

どうしてこうなった……?

この時間、大浴場を使う人はいないって言ってたのに……。

いきなり女子生徒たちが大挙して入ってきたんだ。

今もその数は増え続け、大浴場内はもはや肌色一色と化していた。

湯船に耳の辺りまで浸かってなるべく姿を隠しながら、僕はリッカを睨みつける。

「言い忘れてた。上級生の大半は実技訓練が終わると、すぐにお風呂に入る」

悪びれもせずに言うリッカ。

こいつ、どう考えても確信犯だ。

どうやら今入ってきているのは上級生ばかりらしい。

道理で女性らしい体つきだと……って、見てない見てない!

リッカが「どうやってこの状況を切り抜ける?」という顔を僕の方に向けてくる。

今はまだ身体を洗っている段階だけど、これから湯船へと押し寄せてくるだろう。

そうなる前に、どうにかここを脱出しないといけない。

「……僕を舐めてもらったら困るね」

「自信満々?」

僕は〝隠密〟を使った。

「っ? 消えた……?」

僕を見ていたはずのリッカでさえ、僕の姿を認識できなくなった。

そう、僕が本気を出せば、完全に存在を知られずに行動することが可能なのだ。

僕は堂々と湯船から上がり、脱衣所へと歩いていく。

……み、見られてないと分かっていても恥ずかしい!

うっ……ちょうど女の子の集団が浴室に入ってきた……。

しかも真っ直ぐこっちに向かってくる。

あ、焦るんじゃない……目を瞑ればいいんだ。

気配だけで相手の位置を把握すれば、視界なんて必要がない。

僕は目を閉じたまま集団を回避。

そうしてようやく脱衣所へと続く出口に辿り着いたのである。

そのときだった。

「殿下のお身体、やはりいつ拝見してもお美しいです」

「世辞はよしてください、アリサ」

脱衣所に入ってすぐのところで、僕はセレスティアさんと鉢合わせてしまった。